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ダークマター 作者:なしか 空
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前に続く

 正月三ヶ日は何をするでもなく、雑煮ばかり食べてごろごろ、あっという間に過ぎた。
 その間にしたことといえば、墓地公園から出身高校にかけて散歩したことと、松吉たちと護国神社に御参りしたーーというか高野のシゲの組をねぎらいに行っただけ。
 その際に、補充商品を取りに城崎の〈天門屋一家の〉事務所に寄ったので、そこで思いがけず、若い衆にお(せち)やお雑煮を振舞っている光子と顔を合わせた。
 若い衆といっても留守番の倉庫係りと、事務の女の子の二人だけである。
 竜平は、光子もやはり田川の衆なのだなあと思う。光子だけでも榊原家の娘でいて欲しい。そうでないと母が可哀想だ。
「お前、正月くらい家にじっとしていろよな。すぐにまた警察学校に戻るんだろう」
 光子は五日には警察学校に戻るという。
「あたし、家にいると粗大ゴミのように扱われるから。お兄ちゃんと違って」
 確かに自分は子供の頃から優遇されていた。今さっきも母は何だかんだいいながら、自分がごろごろしている傍で、テレビ観ながらコロコロ笑っていた。
「まあ、昔からお前は二人分の場所を取ったからな」
 竜平は自分の妹ながら一度も光子を真正面から見たことがなかった。幼稚園からすでに光子のほうが背が高く、兄貴の手前、見上げるのが嫌だったのだ。高校生になったら並ぶのも嫌だった。
 今は、我が妹ながらカッコイイなあと思う。

 そんなこんなで三日が過ぎた。
 四日目は予定外、急に高校の同窓会が開かれることになったとかで、近所の同級生の女の子に呼び出されたのである。
 在郷組や帰省組、合わせて二十五名の懐かしい顔が都町に集った。二次会やら何やらで、一日が潰れた。
 五日に光子は野津原の警察学校に、そして、六日に竜平も東京に向けて出立した。せめて光子の成人式まではいてよ、という母のいうことも聞かず。
 でも、成人式の日を想定して、写真屋を呼び、着物姿の光子と、母・遼子と寝椅子の祖父・四郎とで、正装して記念写真を撮った。
 それが祖父・四郎を交えた最後の家族写真となったのである。

 途中、田川に墓参りに立ち寄ったのであるが、そのことも母親には内緒であった。博多の伯母にも。
 父・竜二の墓前で仇討ちを誓ったのである。
 勿論、本庄英志も一緒だった。
 思いは一つ。

 新幹線の中で、竜平は白木洋子に返信メールを打った。

“君知るや 故郷の空の 青さを”

 などと得体の知れない句を添えて。
 それに対して、白木洋子からすぐに返信メールが入った。

“知らずとも 凍える野辺の 寒椿"

 とだけ。

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