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その三 二〇〇八年(平成20年)の幕開け

 本庄やタツオたちと飲んだおかげで、除夜の鐘もろくに聞かずに眠り込んでしまって、竜平は何の感慨もなく年を越してしまった。
 期するところのある妹の光子は、友達と連れだって護国神社に初参りに行ったというのに、所を二階の自分の部屋に移して、元日は昼近くまで惰眠を貪っていた。
「何です。いつまで寝てるんです、新年早々から。もう大概に起きたらどうなんです」
「ああ、もうこんな時間かあ……」
 遼子に催促されてようやく床離れした。
「光子なんか、寝ずの初参りから帰って、ちょっと寝ただけで、お手伝いしてくれてるんですよ」
「あいつは体育会系だから……」
「午後からはお年始のお客様がーー根岸先生はきっとおいでになるから、きちっとして、当主として応対してもらわないと困りますよ」
「博多の恐い伯母ちゃんは来ないだろうね」
「もうお年だもの、……でも、わからないわね、光子が成人したしーーそうしたら、それこそ、寝惚け顔なんかしてたら大変ですよ」
「はいはい」

 遼子がいった通り、午後二時に根岸ともみが、事務員の東トシ子を伴なって年始の挨拶に来た。
 二人とも榊原家にとってはお馴染みの間柄で、格式ばった挨拶も必要ないのだけれど、やはり新年ということで、他人行儀な挨拶の後、座敷で座卓を挟んで向かい合った。
 根岸ともみは黒っぽいスーツにコート姿で、東トシ子は花柄の着物姿だった。
「竜平君がこんなだもん、ウチなんか年取るわけだわ」
 東トシ子が硬い空気を破っていった。
「トシ子さん、結婚まだだっけ?」
「そうよ、まだ」
「でも、カレシはいるんだよね」と、光子。
 トシ子は光子を睨んでもじもじした。
「へー、ぼくの知った人?」
「そんなことより、竜平君はどうなのよ? 連れて帰ってご披露する彼女はいないの? お父上は硬派で鳴らした方だけど、あんたは軟派だわね、どう見ても」
「ははは。よしてくださいよ、そんな目で見ないでください」
「いいや、相当遊んでるわね」
 場の空気はなごんだ。こういう役回りの者がいると座持ちはいい。根岸ともみは寡黙だし、遼子も光子も自分から話を広げるタイプではなく、せいぜい繋ぐタイプ。
 だが、東トシ子は来る前から相当お神酒が入っていたらしく、さんざん竜平を(いじ)ってから、矛先を光子にまで向けた。
「それよか光子ちゃんだわね、問題は。もうそろそろ彼氏の一人もできてよさそうなものだけど」
「ほっといてよ」と、光子。
「面倒臭いじゃんーーこれだもん。こちらの姫君は、子分ばかり(こしら)えて、イクサでも起こす気なの? そこのとこはどうなのよう、遼子さん」
「ほんとにねえ……。でも、初参りに着物着せたけど、見せたかった、親の欲目ではなく、とてもカワイかったわよ。ずっと着てればよかったのに、すぐに脱いじゃって」
「着物を! 光子ちゃんが! それは是非見たかったなあ。ガニマタ気味に摺り足で歩くとこなんか、さぞかしイナセなーーああ、見たかったあ、ネエネエ、見せてよう」
「ほほほ、成人式にね、もう一度着るから」
「今、見せて!」
 といった騒ぎで、根岸ともみは早々に酔っ払いを連れて引き取った。
 遼子は搗き立ての餅を持たせるのを忘れなかった。

 それから次々に訪問者があって、一息突いた時、竜平は居間の柱に掛けられている、自分の携帯に気付いた。
 座敷に寝ていて置きっ放しになっているのを、母親がこちらに持って来たものだろう。表向けると、ピカピカ光っていて、メール着信の表示があった。白木洋子からだった。
 メールを開いて見ると、午前零時ジャストの着信で“新年明けましておめでとう。今年も頑張りましょう!”とだけ書かれてあった。

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