挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ダークマター 作者:なしか 空
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

219/250

 未来記

その子に、
“ヒカル”と名付けるがよい。
闇を()べる者、照らす者となろう。


  その一 光子の失踪

    ㈠

 榊原光子公安巡査の姿が、最後に確認されたのは神谷町のホテルの防犯カメラと、その周辺の街路を直立して歩く姿が通行人によって目撃されていた。
 最後に会っていた人物は直属の上司の北芝巡査部長ーー二人とも独身なので、公務以外なら、そういう場所に一緒にいても咎められる筋合いのものではないが、事が事だけに北芝巡査部長は監察室の厳しい取り調べを受けた。
 彼の陳弁はホテル従業員や、タクシー運転手の供述などで、一応、裏付けられたものの、酔い潰れた部下をそんな所に連れ込んだのは、不適切な誹り(そしり)を免れなかった。
 北芝は観察室の取り調べがすむと、本母警部に道場に連れて行かれ、柔道着を着せられて、乱取りという名の責めを受けた。
 組み合って押しつ押されつしながらーー。
「どうして官舎まで、部屋まで、送り届けなかったんだ!」
「途中で吐いたからですよ、タクシーの運ちゃんに聞いてみてくださいよ。公園で酔いを醒まそうとしたし、そこでも吐いて服を汚したからーー」
 技の掛け合い、北芝も一応黒帯なのだ。
「どうして逆さクラゲなんかに連れ込んだんだ!」
「濡れた服をなんとかしなければ風邪引くし、横になりたがったからですよ」
「調子のいいこというな!」
 警部の足技が連続して飛ぶ。
「じっとしていたい、動かされたら猛烈に腹が立つ――ほど酔ったことないですか」
「だからといってあんなとこに!」
「あんな時間に、空いてるのはそんなとこしかないでしよ」
 ついに大外刈りで投げ飛ばされる、北芝。
「何もしなかっただろうな!」
「誓って何もしてませんて、介抱しただけですよ」
 襟首を掴まれ、引き起こされる。
「どうして先にホテルを出た、後ろめたいことがあるからだろ!」
「一緒に出るとこ知り合いに見られたら勘違いされるっしょ」
「ウソをつけ!」
 今度は背負い投げでビタンと投げ飛ばされた。
「歩き方が変だったって通行人はいってるぞ!」
 仰向けになった北芝はーー。
「変って、何が変なんですか」
「初めての娘はそういう歩き方をするものだ!」
「いいかげんにしてくださいよ、もうーー」
 北芝はだだをこねるように手足をバタバタさせた。
 どうあがいたところで北芝に勝ち目はない。警部は警視庁に敵なしの六段の猛者なのだ。
 北芝は散々しごかれた挙句、野島警視監のところへ連れて行かれて、警視監の通告を受けた。
「北芝君、君は監察室の取り調べの結果、警務部の処分では、また古巣の交通機動隊勤務ということになった――が、警部殿のごり押しで――何しろ警部殿は総監の頭越しに、察庁長官とさしで話ができるお方だからなーー公安に留まることになった。
 そこでわたしは君に重大な任務を与える、部下三人を率いて榊原光子巡査捜索の先鋒となれ! きっと救出するんだぞ!」
「――はい!」
 北芝巡査部長は反り返って敬礼をした。
 警部のことだから、どうせまた警務部の弱みにつけ込んでのことだろうけど。こういう時のために、監察室や警務部のお偉方の弱みを握ることはお手のもの。監察室は問題児の警部をよく尾行するが、彼らもまた尾行されていることを知らない。
 ほかの者たちは日頃から接待マージャンやゴルフでよしみを通じておくのだ。新任の検事が赴任して来ると、自治体の幹部がこぞって表敬訪問するようにーー。
 非公開の捜索は、そこを起点に警視庁管内はいうに及ばず、近県の都市の防犯カメラがーー駅や港湾や空港や繁華街のーー徹底的にチェックされ、そしてそれらの場所には、手配写真を手にした捜査員が展開した。
 北芝とその部下三名はそういうのとは別に、国宗八州と雨宮廷臣の走狗(そうく)に張り付いて、その動きを見張っていた。
 にもかかわらず、手掛かりは全く得られないまま、失踪から三ヶ月が経ち、苦渋の公開捜査となった。
 そうしたら早速色んな情報が舞い込んで来たのである。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ