挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ダークマター 作者:なしか 空
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

179/250

前に続く

「何だ? 何だあれは?」
 ほかの人々も気付いて騒ぎ始めた。
「おお! すげえ!」
「綺麗!」
 順番待ちの地上の者たちは何事かと空を見まわしている。
 様々な色のセールをした無数ーーといっていいほどの数のハンググライダーだ。
 それが鳥の群れのように押し寄せて来る。
 これもイベントの一つだろうかと、観覧車の人々はのん気に見とれている。午前中のアトラクションでは、ホルストのジュピターの曲に合わせて、巨大な地球などの惑星がドームの開口部から垣間見えたのだ。
 そこからドームまでは、大きな川と高速道路とバカに大きな工場がある田園地帯を経ているけど、十キロとは離れてはいまい。すぐの距離だ。ぐんぐん近付いて来ている。
「おお!」
 と地上の人々も声を上げた。「何だあれは?」
 しかし、彼らの視線は反対側を見上げている。ドームに向かって西空から二機のヘリが爆音とともにやって来たからである。
 それもあっという間にドーム上空に達して、機首を東向きに揃えてホバーリングを始めた。紫がかった赤銅色の不気味なヘリである。日の丸マークがあるから、ひと目で自衛隊機とわかる。
 でもそれが戦闘ヘリであることには気付きもしないで、何事かとぽかんとして見上げる。
 蛇覇那記者だけが気色ばんで双眼鏡からカメラに持ち替えて、バシバシ、シャッターを切った。

 ―ーそこの者たち、この空域は飛行禁止になっている! ただちに引き返しなさい!
 ーー通告する、すぐに引き返しなさい!

 というヘリからの緊迫した耳障りな音声がした。谷から反響して二重に聞こえ、緊迫感を増幅させて。
 何か、ただならぬ事態のようなので、地上の人々は半信半疑ながら、互いに顔を見合わせた。それでもまだ私語を交わす余裕があった。
 観覧車の乗客のほうはそういうわけにはいかない。息を呑んだ。何しろ自衛隊機が、ハンググライダーの群れに向かって、威嚇しているのだ、機関砲を向けて。

 ――聞こえないのか! それ以上近付いたら発砲する!
 ーーこれは最後通告だ!

 ドーム内も静かになっている。
 単なる威嚇だと思っていると、いきなりヘリが本当に発砲した。
 聞きなれない砲撃音が人々の耳朶(じだ)を、そして谷を叩いた。
 地上の人々は顔を見合わせたり、固唾を呑んで、上空のヘリを見上げている。観覧車の人々には〈機首を上に向けているから〉威嚇射撃だとわかっていた。

 ――おお!ー! 
 ーーキャッー!

 という叫びと悲鳴が地上で起きたのは、ヘリの両脇を無数のハンググライダーが通過して行ったからである。ドームでも、どよめきが起きていた。
「威嚇射撃じゃ、心配いらん」
 地上で誰かがいっている。
 それが旋回して戻って来て、向きを変えたヘリの両脇を再びすり抜けて行った。
 その一団がまた舞い戻ってきた時、ついにヘリは本格的な射撃を始めた。
 自衛隊が国民に向けて発砲しているのだ。信じられない光景だった。
(何てこった!)
 蛇覇那記者は連続シャッター音を立てながら「オウマイガ―!」を繰り返していた。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ