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ダークマター 作者:なしか 空
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153/250

前に続く

 外の騒ぎに気付いた光子は菅沼を押しのけて身を起した。
「何? どうした?」
 パンツ一丁で転がった菅沼は、素早くブラジャーを身に付けて立つ光子を見上げた。
 浴衣を羽織り帯びを締めて、拳銃を忍ばせてあるスーツのほうへ向かおうとした時、白いスーツの男が拳銃片手に飛び込んで来た。
 背の高い白人だった。
 白人は光子には目もくれず、ポカンとしている菅沼に向けて、消音機付きオートマチックを突き出した。
 咄嗟に光子は肩からぶつかって行った。
 ために発射された弾は()れた。
 菅沼が悲鳴を上げた。
 白人は体勢を立て直し、光子に向けて拳銃を握った腕を伸ばした。
 光子はその腕を取って一本背負いで投げ飛ばした。
 いや、いつもの癖で〈怪我をさせないように〉腕は放さなかった。
 ために今度は光子が両足で首を挟まれて(ひね)り転がされた。
 そして男は両脚で光子の首を絞めにかかった。
 絞めながら拳銃で撃とうとした。
 が、光子もマングースに頭を噛まれたヘビのように体を左右に(よじ)って狙いを外した。
 そして身を反転、片腕しか支えのない男をうつ伏せにした。
 うつ伏せになっても男の強烈な絞めワザはいささかも(ゆる)まず、立ち上がろうとする光子はまた転がされた。
 男は光子より十センチは背が高く、体重も二、三〇キロは上回っており、大柄な光子が小さく見えた。
 両者は反転また反転、のたうって転がった。
 菅沼はおろおろしてこれを見守るばかり。
「逃げて!」という光子の叫びも聞かず、暴発する銃弾に竦んでしまって、腰が抜けた状態だった。
 頭の中では、ある政治家を(かば)って暴漢の拳銃の前に立ちはだかった芸者のことを思い、女のその心意気を見る思いで、感動してもいた。
 だが、マングースに頭を噛まれたヘビは力尽き、真っ赤に充血した目で菅沼を見て、声にならない声で「に・げ・て」といった。

 と、そこへドタドタ足音がして、大勢が乱入して来た。
 白人は跳ね起き、まず先頭の者に銃弾を()びせかけた。
 妙な仮面を頭に被った男が倒れ、後続は(ひる)んだ。
 その(すき)に、縁側の障子を開け、ベランダに出て、手すりから身を(ひるがえ)した。
 その後を刑事たちが拳銃片手に追う。
 小屋根から隣の屋根に飛び移っている白い影が見えた。
 それに向けて撃とうとする若い刑事を安藤警部が制止した。
 すぐに白い影は見えなくなった。
 救急車とPCのサイレンの音が近付いて来ていた。
 やがて旅館の近辺は回転する赤色灯で埋め尽くされた。

 北芝は浴衣の乱れを整えている光子に近付き、パンツ一丁でしょげかえっている菅沼を見てから、眉根に皺を寄せていった。
「間一髪間に合ったようだな。全く、何てやつだ。刺客に感謝しなきゃな」

   ♤

 熱海の海岸道路を疾駆するバイクをヘリが追いかけていた。

 ーーオーケー、後で拾う、その前にこっちを片付けてからだ。

 ヘリは高度を下げて、バイクに近付いて行った。
 バイクには黒ずくめの男が乗っていた。


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