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前に続く

「この男は、閉店間際の料亭に現れて、公使と連れの女性のことを尋ねている。ずっと見張っていたけど出て来ないものだからーー」
 競り上がっていた胃袋がストンと落ちた。
「つまり、この若い男の目の前で公使は何者かに拉致されたということになるな」
「……」
 呆然と料亭を見詰めている光子の肩を叩いて警部はいった。
「腹が減ったな。といってもこんな料亭でメシを食うほど給料もらってないんでな」
 警部は指を鳴らして近くに待機させていたタクシーを呼んだ。

 場所を国会議事堂がすぐ傍に見えるビル三階のレストランカフェに移した。
「どうだ。ここからだと伏魔殿がまともに見えるだろう。議事堂を見るのは初めてか?」
「案外ちっちゃいんですね」
「周りに高いのが建ったからな。何にする?」
 光子はメニューから適当に選んだ。「テンプラ定食」とウエイトレスにいった。今は何を食べても同じだ。
「おれは刺身定食。それに、さしあたり生ビールを持って来てくれ、咽が渇いてかなわん」
 ウエイトレスは光子のほうを見た。
 光子は手を振った。
「お子ちゃまは備えつきのコーヒーでよかろう。しかし随分と態度のデカイお子ちゃまだがな」
 光子はサマースーツから長いスラックスの脚を、投げ出すように開いて、背付きの椅子に腰掛けている。
「これでも二十歳(はたち)過ぎたばかりの乙女――かどうかはわからんが、おれの前で脚を投げ出すやつあ、男でもいやしねえってのによう」
 ウエイトレスの女はクスクス笑いながら去った。

「ここで、例の不審人物ーー若いほうじやないほうの男と西塔万里がーーちょうどこの席でだ、こうして向かい合っていたんだ」警部はジョッキのビールを流し込んでからいった。「大分県警のねえちゃんがいうように、男の恰好をした女かも知れんがな」
 警部の持ってまわったいい方に光子はうんざりしていた。
「一連の事件の容疑者を根岸弁護士だと思ってるんでしょうーーそして兄の竜平も係わっていると」
「ははは。ハッキリものをいうところも親父そっくりだな。そういえば、名古屋の警察署で城島と面会したことがあるけど、尊大に長い脚を投げ出してやがった」
「自分を呼んだのはその捜査を手伝わせるためですか」
「まあ、そう先を急ぐな。メシ食ったらボスに合わせてやる」


 

 

 
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