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その八 天の回廊再び

 正式な出向手続きが済むまで、光子は本母警部の自宅に泊められて、日中は警部の案内で各所をまわった。
 最初に案内されたのは、新橋の高級マンションの一室だった。
「君もニュースなどで知ってると思うが、この部屋で(てい)民部(かきべ)という男が餓死していた」
 ヒグマのような風貌の大柄な警部はーー髪も眉毛も髭も随分と白いものが混じっていたーーさりげなくいった
 そのニュースは勿論光子も見ていた。その男が兄・竜平を拉致・監禁・拷問していた人物であることは、小雪から聞いて知っていた。
「フグ毒と呼ばれるアルカイド系毒物、テトロドトキシンが検出された。だが、鄭民部が事前にフグを食った形跡はない」
 警部の目は探るような鋭い目に変わった。
 光子に向けられたわけではないが。
 捜査本部はまだ兄と占い師の関係を掴んではいないはずだった。兄が鄭民部に拉致・監禁・拷問されたことも。
 少なくとも表面上はそうだった。
「何者ですか、その男は?」
 光子はとぼけて訊いた。それくらいの腹芸はできるようになっている。
「まあ、いかがわしい人物だな。経歴もはっきりしない」
「犯人の目星はついているんですか?」
「いや。だけど、これとよく似た事案(ケース)があった。城島民子がそうだったーー城島民子は君の伯母さんになるのかな?
”息苦しさだけが生きている証のようなものだった“と城島民子は供述している。
 鄭も同じように、釣り上げられた魚のように口をパクパクさせて生きていたけど、やがては餓死したのだろう」
 警部が何をいいたいのかよくわかった。わざわざここに自分を連れて来たのも。

 次に連れて行かれたのは赤坂の『橘』という料亭の前だった。
 警部はその料亭を指差していった。
「七月四日はアメリカの独立記念日だ。その日の夜に、ここからアメリカ大使館の要人が一人行方不明になった。ぶっちゃけていえば公使だ。公使が何者かに拉致された。
 これは大変な事件だが、事は公にされていない。我々が極秘裏に捜査している」
「えっ? でも、それって外事の仕事じゃあーー」」
「本来ならそうだ。そうだが、これには複雑な事情が(から)んでるんだ」
「自分にも関係があるのですか?」
 警部は料亭の前の路地を指差して、「あそこから様子を窺っていた不審人物が目撃されている」といった。「ホームレスの証言だと」といって、似顔絵を取り出して見せた。
 バイクに跨った黒尽くめの若い男が描かれていた。
 光子は胃袋が競り上がって来るような不快感に襲われた。

 
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