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神級回復呪文使いが転生したら……こうなった。~調子に乗ったランディの、神罰転生~ 作者:鹿鳴館
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【72話】卒業

遅れました。
そのかわり、いつもより少し長いです。
 来訪者の正体は、セナリース。
 5歳から約3年間、父親のロイエンと一緒になって稽古をつけてくれた、大人げないブラザーズの1人。
 もう1人はもちろん、ロイエン。
 負けたくないからって、肉体強化魔法を使ってまで僕と戦ってくれた。

 そのセナリースが、今ここにいる。
 母親クラリスの危機を告げて。

 この瞬間、今年の八武祭を諦めた。

「分かったセナリース、急いで帰」
「ならん!!」

 ものすごい剣幕で、アホ侯爵がしゃしゃり出てきた。

「八武祭はすぐそこまで迫っているのだぞ! 親に会いたければ、八武祭で優勝してからにしろ!」

「だけど、それまでにク、ランディの母親は死んじまう」

「だまれっ! わしはアテーク・メッサー侯爵なるぞっ」

「はっ」

 あの無礼なセナリースが、片膝を地に付けるほど、侯爵家とは地位が高いのだろう。

「准男爵家程度の人間が何人死のうが、関係ない!だが心配するな。 八武祭さえ終れば貴様がビックリするくらいの見舞金を贈ってやるわ」

 今すぐアホ侯爵を殺したくなったが、我慢して計算をしてみる。
 今僕が使える、レイズデットLV1の蘇生可能時間は死後100時間まで。
 普通のクレリックならば、蘇生率は50%。
 しかし、あくまでも死因は怪我で、死を諦めてない精神状態での確率だ。

 僕のレイズデットが転生前と同じなら、蘇生率は95%程度だから、病死で生をあきらめていたら、90%を切るかもしれない。

 時間と言い、確率と言い、許容出来る範囲じゃないな。
 僕はアホーク・駄目ッサー侯爵と敵対する覚悟を決めた。

「ロード・メッサー」

 アホ侯爵がこっちに視線を向ける。

「私がこの素晴らしい、ウエストコート学院にはっいた理由は、親孝行するためです」

「ならば、八武祭で優勝してこい、それが一番なのは貴様も理解できよう」

「はい、私の両親がキチッとした貴族ならばそうかも知れません。しかし私の親は朝一緒に起きて、一緒に身体を動かし、一緒に食事をしながら話をする。そして一緒に寝る事を幸せに感じる人なんです」

「……何が言いたい?」

「私ならば、助けられるかもしれません。だから、私は母親の居る場所に帰ります」

「ならん! 貴様は分かっているのか? 貴様は私の顔に泥を塗るつもりか!」

「はい、ロード・メッサーの顔をたてられず申し訳なく思います。」

「ぐぬぬぬ……貴様は出世の機会を失ったのだぞ? 私は、貴様等の家族を一生辺境送りに出来るのだぞ? ……もういい! 貴様は退学だ、この学院から……いや、このウエストコート領からされ! ついでに准男爵の地位も剥奪してやる!」

「はい、それを罰にして、この学園を去ります。
 ロード・メッサー、みんな! 今までありがとうございました 」



 頭を深く下げた後、振り返ってセナリースに声をかける。
「セナリース『裏門』って言われてる場所があるから、そこで待ち合わせをしよう。 そこら辺の誰かに聞けば教えてくれる。僕は荷造りした後に、行くから待っててくれ」

『許さん』と連呼しているアホ侯爵を後に、寮に向かった。

「まあ、楽しい学院生活だったよな……」

 独り言を呟きながら、簡単な荷造りを住ませてマキナスジジィの、ところに行った。

 だけどマキナスジジィは不在だった。
 仕方ないから、電気を産み出す金属プレートをドサッとおいてから、裏門に向かった。

 裏門まで、一本道のところまで来たら、みんながいた。

「みんな? 何故?」

 驚いていると、ハゲジィがひょこっと前に出る。

「お前に話があるから、みんな集まったんじゃ」

「ハゲジィ、引き止めても無駄だよ」

「かっかっ、解っておる」

 と、言って大きな厚紙を僕に見せる。

「これから、お前に非公認じゃが……何の効力もないが、これを……『卒業証書』を渡す」

 僕の鼻にツンとくるものを感じた。

「今裏面に、ここに居る者の名前を書いて貰うから待て」

 ここには、即席で集めたにしては多すぎる人数がいる。

『マキナスジジィ』『リッツ教官』『覗き屋ドルガンディ教官』『フラット・シャープ教官』『ロベルト教官』驚いた事に『モーブ教官』と『ザーコ教官』まで来ていて、名前を書いている。

 バカな……僕は雑魚扱いしかしていないはずなのに。
 この2人の行動に、流石に瞳がウルっと来た。

『レオパルダ先輩』『ドラグス先輩』『ダナム』『ラディス』『カティス』『ソイフォン』『ジエホウ』『メクルカ』『イルムナ』『ベルナント』までいる。

 鼻水が出そうだ。
 グスッ……

 レジーナとアリサ母娘もやって来た。

「ランディ泣いてるの? 」

 アリサが余計な事を言う。

「うるさい!」

 こいつら、バカだ。
 だって僕はロイエンとクラリスに、食べるに困らない程度の恩を返したら、この世界を捨てる人間なんだぞ?

 そんな薄情な僕に、(たか)るように(むら)がりやがって。
 こいつら、大バカだ。

「やっぱり、泣いてる」

 みんなは、僕を見て笑っているか、驚いている。

 もういいよ、ちょっっっとだけ泣きましたよ。


 少しの間しんみりとしつつ、握手をしていった。

 最後は剣とハンマーを持った、リッツ教官が立ちはだかっていた。

「ランディ・ダーナス! これから卒業試験を始める。もちろん勝っても負けても合格だがな」

「リッツ教官、敗けに来たの?」
 照れ隠しに大口を叩いてみる。

「確かに、今の俺じゃぁ、ランディを楽しませられねぇ」

 リッツ教官、あなたと一緒にしないで下さい。

「だから、複数を同時に相手をする以外では、使わなかった肉体強化魔法を使う」

 ゴクリ……たしかリッツ教官は、肉体強化魔法のLV8まで使えると言ってたよな。

 以前は僕が未熟だったから、リッツ教官が通常のガルより速いと勘違いしたけど、今度こそノーマルガルを超える連続攻撃が来るのか?

 リッツ教官がハンマーを投げてきた。

「そう言う事なら、僕も実力以上の技を使いますよ」

「ああ、ランディにも何かがあるのは分かっていた、じゃあ始めるか。んんっ、肉体強化『5』!」

 いきなり『8』までは使わないか。
 身体を慣らしていくのかな? だが僕は全力で行くぞ。

「第2レベル呪文……オグルパワー。第2レベル呪文……鋼皮LVⅠ。第3レベル呪文……ゴージャスブレス」


「!? ふはははっ、よく分からんが、それが隠し球か……行くぞ!」

 剣先が見えないほどの一撃が、襲ってきた。
 避けるタイミングが遅れたが、なんとか避けきる事が出来た。

『ゴージャスブレス』を掛けていなかったら、斬られていただろう。

「これを避けるか、ならこれはどうだ?」

 リッツ教官の剣筋が変幻自在へと変わる。
 おそらく、肉体強化で得た力を利用して無理矢理剣の軌道を変えているんだろう。

 おかけで、リッツ教官の攻撃がどこを狙うか全く判らない。
 3つ、4つと僕の体に傷が付く。

「なんだぁ? 鎖鎧でも着てるような感触は?」

「それが、鋼皮です!」

 僕の攻撃が始まる。

 回転を主軸とした無駄の少ない攻撃を繰り出す。

 だが、僕の動きをジックリ見ているリッツ教官の急所には、届かない。

「力だけが上がったか? それと吸い込まれるように急所にくるな。だが、まだまだ」

 それが『オグルパワー』と『ゴージャスブレス』だよ。

 しばらく劣勢の戦闘が続いたが、だんだんとあのスピードに慣れて来た。

 剣速と移動速度はガルより速いが、ガルに比べると何故かリッツ教官は驚異じゃない……何でだ?

 そうだ! ガルはここぞと言う時に、剣速を爆発的に上げて、常時はリッツ教官ほど速くない。

 解った、肉体強化を使ったリッツ教官は、緩急織り混ぜた攻撃が下手になるんだ。

 だが、これに気づくまで、僕は4分の1ほどHP
 を失った。

 よし、認めよう。
 リッツ教官は人間じゃない。
 一番近い敵は…………そうだ、甲冑の闇属性モンスター『ダーク・サムライマスター』に似てる。

 よし、死ねぇっ! サムライマスター。

 僕の対魔物戦は、約5秒に1回攻撃するスタイル。
 ただ振り回すだけなら10回はいけるんだけど、フェイントや足運びを重視して、1回の攻撃に集中する。

 それでも、今のリッツ教官には、2回に1度しか命中しない。

「まさか、お前の耐久力はマウンテンベア並だとはな……だが、僅かだが俺が上だ!」

 流石のリッツ教官も、僕のHPまでは予想出来ないか……でもマウンテンベアって何だろう?

 だけど、このままチマチマ削り合うのも癪だからな。
「エクス」
「隙アリ! ……なっ!? グハッ」

 リッツ教官は僕の回復する隙を狙っていたけど、それは僕の誘いだ。

 これで、戦況は変わった。
 これ以上流れは変えさせないよ。

 リッツ教官を詰め将棋のように追い詰める。
 だけど、まだリッツ教官は詰んでいなかった。

「はあっ!!」

 リッツ教官が一瞬消えたように見えた。

『ゾクリ』としたのでその場を離れると、剣が通り抜けた。

 そして、リッツ教官を視認すると、消えるようにいなくなる。

 移動に緩急をつけて動くから、見失いやすい。
 だけど、僕の目を眩ますのは異常だろ。

 使ったな、肉体強化魔法LV8を……

 再び防戦一方になったが、致命的な攻撃は貰わない。

 何となくだけど、動きが見えなくなった代わりに、単調になった気がするんだ。

「この状態の、俺の前で立っているなんて、今まで何人いたか……俺はこの技を『縮地瞬斬』と名づけた。 行くぞ!」

 ごめん、リッツ教官。
 今ので、見切ってしまった。

 リッツ教官は、自分の動きを制御しきれていないんだ。
 予め、移動場所と攻撃場所を決めてから動いてるんだ。

 だから……
「ここだぁ!!」

「ごはぁぁぁ!」

 振り回したハンマーに吹き飛ぶリッツ教官。

「僕の番です。神速!」

「この勝負、俺の勝ちだ」
(ランディ……お前の神速は、効果が切れた3秒に隙が出来るんだ)

 防御に全力を注いでるリッツ教官の目が何かを訴えてる。

 よし。
 僕は、技と神速が切れたように速度を落として誘い込む。

「貰ったぁ! ……なっ? ガハッ」

 リッツ教官もいっぱいいっぱいだったのだろう。
 僕の攻撃を、まともに受けて倒れた。

「ランディ、お前の勝ちだ……胸を張っていいぞ、この状態の俺に……いや、何でもない」
(この俺とタイマンで戦って立ってられるのは、国内じゃ1人か2人くらいだ……それは知らない方がいいな、このまま成長すれば、1年後には間違いなく国内最強になるだろう)



「リッツ教官、ありがとうございました!」
 リッツ教官に、最後の挨拶を済ませた。

 なんか、ハゲジィからたくさんのお金を貰った。
 なんでも、僕の正当な報酬だって話しだったから、感謝して貰うことにした。

 今回、お金はあった方がいい気がするんだ。

 僕が『私』って言葉を使ったとき別人かと思ったとか、指折りヒーリングや、昨年の八武祭の
 話をしていたら、また泣きそうになってきた。

 この新しい身体は、涙もろいなって文句をいいながら、みんなと別れた。

 さようなら、ウエストコート高等学院。
 本当に楽しかった。

 本当に楽しかったよ。

 アーサー、ガル、カーズ、そして香織ちゃん……もう数年待っててくれ。
 その代わり、すごい土産話を持っていくから。

 そう、ここにも楽しい素敵な仲間達がいたんだ……まじで、笑えるんだから……

 またしても僕は、涙を流していた。


モーブ「なんか、人が集まってないか? なんの集まりだ?」
ザーコ「わからんがモーブよ、そう言うときはならんで置くものだ、私はそれで嫁さんが喜ぶ、限定アクセサリーをゲットしたことがあるのだ」
モーブ「なるほど」

ザーコ「なにか、紙に名前を書いてる……」
モーブ「わかった! 八武祭土産をプレゼントして貰うために名前を書いてるんだ」
ザーコ「それだ! モーブよついでに私たちも書こうぜ」
モーブ「ああ、ただでお土産ゲットだぜ!」


ランディ「俺の涙を返せっ!!」



もう、1話くらい学園へんが続きます。
舞台は学園じゃないけど。
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