ことばあそび
デートで訪れた、洒落た喫茶店。
砂糖とミルクがたくさん入ったコーヒーを一口呑み込んだ君は、テーブルの上に広げた旅行雑誌を指差しながら、少年のように瞳を輝かせて弾んだ声をあげる。
「一緒に行きたい!!」
通い慣れた、いつものホテルのベッドの上。
荒い息を少し落ち着かせた君は、獣欲が滲んだ瞳で私を見下ろしながら、官能的な掠れた声で囁く。
「…一緒にイキたい」
通い慣れてしまった、病院の真っ白なベッドの上。
点滴で繋がれた君は、痩せ細った手で私の手を握りなから瞳に涙を滲ませると、弱々しく掠れた声を漏らす。
「…一緒に…生きたい……」
暗い一人ぼっちのアパート。
扉の向こうにいる君は、扉を叩きながら私に呼び掛ける。
「一緒に逝きたい」
君と一緒にいけない私は、位牌を抱えてうずくまりながら、声を聞かないふりをする。
聞こえる声は、無機質で冷たい。
扉の向こうの君は、どんな瞳をしているのだろうか。