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ルシ伝 作者:キルナ

第2章 

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ルシの過去

「本題に入る前に、確認しておきたい事がある」
 真剣な面持ちで口を開くヴァルザード。
 一同は黙ってヴァルザードの言葉を待つ。
「俺達が以前、ビズルトラの地下迷宮で君の過去を尋ねたんだが、覚えているかね?」
 ヴァルザードの問いに、ルシは一瞬考えるように怪訝な表情を見せるが、すぐに思い出したようだ。
「あぁ、覚えている」
「うむ、では話して貰えるだろうか?」
「そういう約束だったな…… わかった」
 ルシは思い出すように目を瞑るとおもむろに語り出した。

 モリリス王国の北にあるカイロと言う村で生まれた事から始まり、悪魔と罵られた事や、母親に殺されかけた事、『古の大魔道士』との出会いの事、洞窟に幽閉されていた事、いつのまにか魔法が使えるようになった事、13歳の頃村を出て『古の大魔道士』を探す旅を始めた事、そしてリンとの出会い、キャノ王女との出会いまでを事細かく数時間程かけて話した。
 一同は一言も発することなく、黙って聞き入っていた。
 しかし彼女らは皆一様に、悲壮、驚愕、苦悩、困惑など、様々に表情を変化させていた。

「なるほど、それでパナソニ砂漠の遠征隊に入ったわけか。で『古の大魔道士』とは逢えたのかい? たしかビズルトラの宮廷魔術師だったエンムギは『古の大魔道士』という2つ名を持っていたはずだね?」
「あぁ、あのエンムギには逢えたが、俺の探している大魔道士とは別人だった」
「では、まだその封印の文字と言うのが何なのか分かっていないということか」
「いや、もう殆ど分かっている」
「そ、そうなのかい? どうして分かったんだい?」
 ルシは一瞬考える素振りを見せると、その視線をアオローラに向けた。『お前の事を話して良いか?』と言う意味を込めて。
 アオローラはその意を受け止めると、小さく頷いた。そしてルシは話を続ける。
「俺はあの戦い…… カノンの攻防戦のことだが、なんとかビズルトラ王を討つ事が出来た。しかしそこまでだった。そのままブライの背で倒れてしまった。ブライも致命傷と言える傷を幾つも受けていたはずだ。そしてブライと共に海に落ちたんだが、そこでアオローラに助けられた。皆には言ってなかったがアオローラは海人族、つまり人魚だ……」
 皆の視線が一斉にアオローラに向けられる。その表情は困惑とも怪訝ともとれるものだった。 この世界でも海人族は珍しく伝説とまでは言わないが、希少な種族だった。しかしアオローラは軽く微笑むと肩にかかった瑠璃色の髪を掻きあげる。わざとその香をそよがす様に。
 ハイビスカスの香りが微かに拡がると皆が得心したような表情に変わった。
 そしてアオローラが後を引き継ぐ様に口を開いた。
「私が彼を見つけたときは、すでに絶望的だったわ。もちろん海の中だから息もしていないんだけどね。でも私は一応、酸素結界を作りその中に彼と彼の馬、ブライを入れたの。そして私の住む海底神殿に連れて行ったわ」
 アオローラはここで一端言葉を切ると、なにか質問はあるかしら? という意を込めて一同を順に見渡す。
 そして質問がないと判断すると軽く頷いて話を続けた。
「でも、本来ならそんなことはしないわ。人間が死のうが死ぬまいが私達には関係ないことですからね。私が助けた理由は彼の馬ブライが神獣だったからよ。で、彼等を海底神殿のあるじ、海竜王様の元に連れて行ったの。私ではどう判断したら良いか分からなかったから……」
 そしてまた一同を見渡す。
 しかし今度はヴァルザードに質問があったようだ。
「あー海竜王様と言うのはどういう存在なのかね?」
 アオローラは頷いてそれに答えた。
「海竜王様は海を統べる存在ね。別の言い方をすれば竜族のそれも古龍に位置する存在よ」
「そ、そうなのか…… うむ、ありがとう。では続きを頼むよ」
 笑顔で頷くとアオローラは続きを語り出した。
「海竜王様が仰るには、彼は人間でありながら、その身に魔王の魂を宿しているという事だったわ。500年前の、人間が言う『聖戦』で死んだとされる魔王の魂……」
 一同が皆一斉に驚愕の表情へと変わる。そしてその視線がルシに注がれる。ルシが普通の人間じゃない事は皆が薄々は感じていたのだが、まさか魔王などとは思いもよらなかったようだ。
「ち、ちょっと待ってくれたまえ。なぜ死んだ魔王の魂が今の世に、それもルシ君に宿ると言うのだね?」
「いい質問ね」
 そう言ってアオローラは微笑を湛える。
「私はさっき何と言ったかしら?」
 軽く首を傾げヴァルザードに笑顔を向ける。
 ヴァルザードはアオローラの言葉を思い出すように視線を落としブツブツ呟いている。
 王女をはじめ集まった他の者達も、ルシが魔王だという事に驚いて一瞬思考が止まっていたようだが、ヴァルザードの質問で目が覚めたようだ。そしてヴァルザードと同じ様にその疑問が脳裏を巡る。
 その間数十秒、はたとヴァルザードが視線を上げた。
「ふふ、気が付いたようね」
 アオローラは何か嬉しそうに微笑んでいる。
「そうよ、「死んだとされる」って言ったの。つまりそれは人間が勝手に思っていただけで魔王は死んではいないの」
 一同が意味が分からないという表情をしている。
「簡単に説明するわね。魔人族の中でも、魔王と魔王に近い力を持つ者は他の魔人とは違う存在って言えばいいのかな。つまり上位の神族と同等な存在なの。だからその身が滅んでも魂までは死なない、時がたてばその身と共に復活するわ」
「君は何故そんな事を知っているのかね?」
「ん~そうねぇ。時が知識を付けたと言えばいいのかしら?」
「意味が分からないよ。もう少し詳しく頼む」
「貴方って野暮なのね…… まぁいいわ。私はこれでも1300年の時を生きてるわ……」
「なっ!」
「まぁ年齢の事は忘れて頂戴、話を戻すわよ」
「あ、あぁ、了解した……」
「えっと、どこまで話ししたかしら…… そう、魔王が復活するってことだったわね。でね、その復活に必要な時間が500年なの。つまりそろそろ復活するはずだったわけね。だけどそれを阻止したのが『古の大魔道士』と言われる存在なの。『古の大魔道士』は復活寸前の魔王の魂を、まだ赤子だった彼の身体に宿したの。でもそのまま成長すればその身体が完全に魔王に支配され、魔王として復活するわ。だからある程度成長した彼に封印を施した。魔王の力をできる限り抑える様にね。そうすることで魔王の力は弱まり完全に人間と同化するはずだった…… ここまでは良いかしら?」
 一同は半信半疑というように弱々しく小さく頷いた。
「でも、私が助けた時にはすでに彼は死にかけてたわ。もしあのまま彼が死ねば魔王の魂はその身から開放されて普通に復活出来たでしょうね……」
 そこまで言ったアオローラの目は憂いを帯び、何故か悲しそうな表情を見せた。
「ん? なにか残念そうな物言いだね?」
「ん~、そう言うつもりは無いのだけれど…… 本当はね、彼はあの時死んでいたの。でも封印された状態、つまり殆ど力を使えない状態で彼の身体を死から守っていたのよ。そのまま死なせれば自分は魔王として復活出来たのにね…… そして自ら同化を選んだ。人間になる事を選んだのよ」
「な、なぜだね……」
「さぁ…… 魔王の魂はもう存在しないから、真相を聞くことも出来ないわね」
 そう言ってアオローラはクーをはじめリン、両王女、シェラと順に視線を移した。
「たぶん貴女達ね……」
 アオローラは一人納得したように頷いている。
 クー達は「?」っと首を傾げる。
「うん、ここからは私の想像だけど魔王の魂は貴女達を感じていたはずよ。彼が死んだら貴女達が悲しむでしょ?」
「まさか、魔人の王にそんな感情があるというのかね?」
「貴方達人間は勘違いしている様だけど、魔人達は人間が思ってるような存在じゃないわよ? 私に言わせれば人間ほど姑息で卑劣で冷酷な種族は居ないと思うわよ。まぁ人間全てがそうだと思ってはいないけどね。貴方達の様な人間もいるんだしね」
「しかし……」
「まぁ信じられないかもしれないけど、一つだけ教えてあげる。貴方達の『聖戦伝説』?あれはほとんど出鱈目よ。魔族がこの大陸に攻め込んだんじゃないわ。人間達が魔界を侵略しようとしたの。エルフやドワーフが裏切ったなんてことも嘘よ。人間が彼らの王を人質にして従わせていたの、それを魔族が助け出した。だからそのお礼に魔族に手を貸した。まぁそれ以外にも色々あるのだけれど、切が無いから止めておくわ」
「まさか、そんな……」
長くなりそうなので、ここで一端きります。

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