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ルシ伝 作者:キルナ

第2章 

41/54

密談

お待たせしました。
第二章ということで連載を再開いたします
よろしくお願いいたします
 深い森の中に幾つもの尖塔を持つ漆黒の城がそびえ立っている。
 その中でも一番高い尖塔の最上階の一室。
 全てが黒曜石で造られているかの様な黒一色の室内。
 家具などは見当たらず長方形の重厚なテーブルと椅子があるのみ。
 上座に豪奢な椅子が1脚、残りの4脚は対面するように並んでいる。
 その部屋に3人の男女が集まっていた。

 上座から見て右側の椅子に座る男、名をイムペラートと言う。
 歳は25歳くらいだろうか? 肩まで伸ばした金髪、整った顔立ち、一見美男子にも見えるが、その銀色の瞳が開かれると凍てつく表情へと変わる。それほど力強い瞳を持つ男だった。

 その隣の男はドゥカゥス。
 歳は30前くらい、短く上方に尖った髪は深紅。彫りのある顔は凛々しく、その顔に相まって体躯はイムペラートより一回りは大きく筋肉質で一見格闘士を思わせるほどだった。

 最後の一人、イムペラートの対面に座る少女、名をレギーナと言う。
 艶やかな銀髪を肩辺りで揃え、すこし尖った赤眼は少々きつい印象を与える。しかし綺麗な目鼻たち、白磁のような肌はどこかの姫君かと思わせるほどだ。その顔だけを見れば15、6にしか見えない美少女なのだが、メリハリのある身体つきは、実に色っぽい。

 そして上座の一際豪奢な椅子。たぶんこの城の主が座る椅子なのだろう。が今はその主の姿はこの部屋に無い。

 静まり返る黒曜石の室内は重い空気が満ち足りている。
 口を開くものは誰も居ず、一様に押し黙る面々。
 イムペラートは瞑目しているようだが、ドゥカゥスは真剣な面持ちでレギーナを睨んでいる。 いっぽうのレギーナは素知らぬ顔で窓の外を眺めていた。

 沈黙の中、痺れを切らしたように口を開いたのはドゥカゥスという男だった。
「で、あのお方は?」
 追求するような口調で、その視線はレギーナに向けられている。
 レギーナは視線を一瞬ドゥカゥスに向けるが、すぐ窓の外に戻した。
「ほぼ間違いあるまい」
 どこか寂しそうに答えるレギーナ。その美しい顔からは想像も付かないほど低く重々しい声色だった。
「ほぼ? ほぼとはどういうことだ?」
 曖昧な物言いが気に食わなかったのか、鋭い視線でレギーナを睨むドゥカゥス。その声にも怒気が含まれている。
 しかしレギーナはビクつく様子も無く、投げやりな視線で平然と言い放つ。
「私も確認した訳では無いからな……」
 一瞬室内に緊張が走った。
 文句があるなら、自分で確認しろと言わんばかりのレギーナの視線にドゥカゥスが殺気を放ったのだ。レギーナもそれに対し凄まじい殺気を返す。
 もし室温計というのがあったら一瞬で2,3度は下がったかもしれない。

 今にも殺し合いが始まるかと言う雰囲気を鎮めたのはイムペラートだった。
「2人とも抑えろ…… レギーナが言うのだ、間違いあるまい」
「うむ……」
「ふん……」
 イムペラートの一言で2人は渋々だが殺気を抑えている。気の短そうな2人を一言で抑えてしまったこのイムペラートという男は一目置かれる存在なのかもしれない。そしてレギーナという美少女もかなり信用されているようだ。

「しかしそうなると我らの中から……」
 言いかけたドゥカゥスを制したのはイムペラートだった。
「オレは降ろさせてもらう。もともとあのお方に頼まれたからここにいるだけ。あのお方が帰らぬならここに居る理由はない」
「じゃぁ、私も降ろさせてもらうよ。あのお方が居ないなら、私だってこんな城に居る意味ないからね」
 2人が同時に降りると宣言し困惑気味にたずねるドゥカゥス。
「なに、ではお前達はどうするというのだ?」
「オレは、そうだな…… どこかの山奥で隠居生活でも送るかな」
 イムペラートの言に呆れるドゥカゥス。しかし同時にドゥカゥスは思った。
(この浮世離れした男ならそれも当然か……)と。
 しかしレギーナはイムペラートの言には無関心で、自分の今後を思案しているようだった。
「私は…… あの方を探しにいく……」
 戸惑いながらレギーナが答えた。
「なっ! お前が今消えたと言ったんだぞ?」
「消えたなんて言ってないっ! 感じなくなっただけだ」
「同じことだろう? お前が感じないものを誰が感じられる?」
 困惑しながらもレギーナの言い様に納得出来ないドゥカゥス。
 今度はイムペラートもドゥカゥスに同意しているようだ。
「うむ、ドゥカゥスの言い様に一理ある。レギーナよ、どういうことだ?」
「私の探知能力だって完璧じゃないよ……」
 レギーナは半分泣き声になっている。
「しかし、お前が感じない程なら、たとえ存在していてももはや……」
「それでもいい。私はあの方と一緒にいたいのだっ! たとえどの様な存在になろうとも、私があの方をお守りする」

 黒曜石の一室に残ったのはドゥカゥスただ一人だった。慈しむ様に豪奢な椅子に手を添え、そしてゆっくりと腰を掛け1人ほくそえんでいる。
「新たな参謀を招集せねばな。そしてあの女……ふっふっふっ」
 不気味な笑い声が室内に響き渡る。

 ひとしきり椅子のすわり心地を堪能し終えると、ドゥカゥスは窓の傍から外に目を向けた。

 窓から見える景色は渦巻く黒煙の空と、その黒煙を吹き上げている火山。
 眼下に広がるのは広大な森林と深緑の湖面のみ。

 此処は魔界の王城レクステンブルムの一室。
 そして今、新たな『魔王』が誕生したのだった。

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