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ルシ伝 作者:キルナ

第1章 カノン王国の王女

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森の祠再び

 日付が変わりルシ達はエルフの森に向かうために宿屋をでた。王都の大通りは昼間の喧騒とはうって変わって静寂に包まれている。街頭にはランタンで多少の灯りは在るものの人通りは殆ど無い。そんな大通りを馬に跨りゆっくりと東門に向かう。
 東門に到着したが流石に深夜であるため門は固く閉ざされていた。
 案の定、詰め所から番兵が出てきた。
「こんな時間に何処にいく? 王都を出たいなら夜が明けてからにしろ!」
 番兵は訝しい表情で威圧的に言ってきた。逆らえば牢獄行きだぞ!と言わんばかりだった。
「いやぁ、魔獣狩りに行くのでこの時間を選んだのだよ、すまないが開けて貰えないかな?」  そう言ってヴァルザードがギルドカードを提示した。それを見た番兵は、とっさに敬礼し、
「これは失礼しました」などと一礼し、そそくさと門を開けてくれた。あげくに
「お気をつけて」などと言っている始末。
 門を潜るとルシが呟いた。
「ランクAってのは便利なもんだな」
「ん? なにを言っているんだい。ランクC以上ならこれ位は当たり前に出来るはずだよ? まぁ一礼までして送り出してくれるかは判らないがね、あっはっはっはっ」
「そうなのか……」
 ルシはランクCの時、国境の砦で番兵に散々詰問され、通るのに苦労した事を思い出した。
(そういえばあの時はギルドカードを見せることなど考えもしなかったな……)

 街道に出ると流石に月明かりのみで、辺り一体が闇に包まれている。
 道幅が広く真っ直ぐの一本道の為なんとか馬でも走る事ができるが、それでも『疾駆』と言うわけにはいかなかった。そんな静寂の闇のなかに馬蹄だけが響き渡った。

 半時ほど走ると鬱蒼と茂る森の木々が見てて来た。そのまま街道沿いをゆっくり進み、木こり小屋を見つけると、そこに馬を預けることにした。もっとも誰も居るはずも無く、勝手に繋いでおくだけだ。
「こんなとこに馬を置いていくの? 危険じゃない?」
「うむ、ここに放置したんじゃ、戻る頃には狼の餌になってるな」
 シェラとヴァルザードの意見はもっともである。普通ならば……
「いや、ブライも置いていくから大丈夫だろ」
 ルシは何食わぬ顔で答えているが、皆が怪訝に首を傾げる。
「ブライって君の馬だったよね? 確かにその馬は大きいがそれでも馬は馬だろう?」
「あぁ、ブライも神獣だ。 スレイプニルの血を引いている」
 皆が絶句している。


 一行はカンテラで足元を照らし森の中を進んでいく。クーは自身の武器である杖に『発光』の魔法で灯りをともしている。
 森の中は昼間でも暗いのだが、深夜となると月明かりなどほとんど届かない闇である。カンテラで照らしているものの、灯りが届くのは精々足元までで、まさに一寸先は闇状態だった。
 深夜ともなると魔獣の活動も活発になる。距離はあるものの頻繁に咆哮が聞こえてくる。シェラとキャミも怖いのか手を繋いでいるし、クーはしっかりルシの袖を掴んでいた。
 そんな状態ではあるが、先頭からリン、続いてルシとクー、キャミとシェラ、ヴァルザードの順で森をゆっくり進んでいった。
 先頭のリンには恐怖がないようだ。その上、野生の感なのか一切迷う様子も無い。

 突如リンの足が止まる。一拍して魔獣らしき咆哮が直ぐ近くで聞こえた。
「「「グルルルルゥゥ」」」
 姿は全く見えないが、複数頭がいるようだ。
「ちょっ、なに?!」
「な、なんですか……」
 震える声でシェラとキャミが聞いてくる。お互いの手は固く握り合っていた。
 クーは声には出さないが、ルシの袖を掴むその手が震えている。怖くて声が出ないのかも知れない。
 ルシはシェラとキャミの質問には答えず、クーの頭を撫でた。
「ここで待ってろ」
 優しく言って袖を掴む手をそっと離す。

「ヴァルザード、リン、皆を頼むぞ!」
 言った瞬間には、ルシはその場から消えていた。

 ザシュ!
 ビシュー!
 ズブッ!
 何かを斬り裂く音、何か液体が飛散る音、何かを突き刺すような音、それらが闇の中から聞こえてくる。それらの音がする方向で縦横無尽に薄桃色の閃光が糸となって微かに見えている。
 しかしそんな時間は一瞬だった。すぐ音が止んで薄桃色の閃光もスゥーっと消えた。
「もういいぞ」
 その声が聞こえて直ぐに、ルシの姿が目の前に現れた。今魔獣を相手に戦ってきたとは思えない、いつも通りの無表情である。
 すぐさまクーがルシにしがみ付いて、「大丈夫ですか? 怪我はないですか?」と身体をべたべた触っている。(もし怪我してたら、そんなに触ると痛いぞ?)とルシは思うのだが口には出さなかった。
「あぁ大丈夫だ。かすり傷一つない」
 そう言ってクーの頭を撫でるルシの顔は苦笑していた。
「な、なにが居たの?」
 まだ少し声を震わせてシェラが聞いてきた。今やキャミと抱き合ってる。
「あぁケルベロスだ」
 絶句する3人。
「ケルベロス3頭を瞬殺するとは、さすがだねぇ」
 感心したのはヴァルザードだった。
「3頭って、見えていたのですか?」
「もちろん!」
 良い所を見せられなかったヴァルザードは、ここぞと胸を張った。

 そして一行はまた森を歩き出す。相変わらずシェラとキャミは手を繋いで震えているし、クーはルシの袖を掴んでいる。

 一時間ほど進んだで辺りで、リンが小さく吼えた。前方を見ると微かに視界が歪んで見える。 リンが結界があると知らせてくれたのである。
「結界か。リン、頼めるか?」
 ルシがそう言うと『まかせて♪』と言うように、可愛く吼えた。
 ルシ以外には感知できないだろうが、6人を包むように結界が張られる。
 結界という言葉を聞いて皆が辺りを見回して首を傾げている。さすがにヴァルザードにも見えないようだ。
 森の結界内を小一時間進むと石の祠が突如目の前に現れた。もっとも視界1メートルでは、なんでも突如現れた様に見えるのだが。

「これがお前たちが入った祠か」
「はい」「バウ」
 クーとリンが同時に返事をする。
「鍵がかかってるな。それも魔法で掛けてある」
「あ、私が帰るとき鍵をかけました」
「そうか」といって、ルシはおもむろに『解除』の魔法で鍵を開けた。
 それを見ていた3人、シェラ、キャミ、ヴァルザードは絶句した。
「君は魔法も使えるのかね?」
 ヴァルザードは驚愕の表情で聞いてきた。
「ん? あぁ言ってなかったか?」
「君はほんとうにとんでもない男だね! それだけ剣を使えてさらに魔法までも……」
 驚愕を通り越して呆れ返った様子のヴァルザード。
「そ、そうよ、私達も知らなかったわよ! だいたい魔法使えるならヒュドラの時なんで使わなかったのよ!」
 シェラは今まで隠されていた事に腹を立ててる様子だが、ルシには何故怒ってるのか解からなかった。
「付与魔法か? それは出来ない」
「え、そうなの? なんで?」
「さぁ……」
 実はルシにもなぜ出来ないのか解かっていなかったのだ。
「えっと、それは只単に得手不得手の問題だと思います」
 そこでキャミが割って入るように説明をはじめる。
「どういうことよ?」
「たとえば、火属性魔法が得意な場合、水属性魔法が苦手になるよね? ほかにも暗黒魔法が得意な人は神聖魔法が苦手だよね? それと同じなの。とくに付与魔法は特殊だから苦手な人が多いみたいよ。それと種族も関係するみたい」
「種族?」
「うん、エルフは精霊魔法が一番得意なの。魔族は暗黒魔法でしょ、神族は神聖魔法、人間族は属性魔法よね? 龍人族は古代魔法かな?、ドワーフは付与魔法とかね。まぁ絶対って訳じゃないから、私も少しは付与魔法が使えるんだけどね」
「そう言えば、ギルドの長がエンチャンターは今の時代希少だって言ってたわね」
 少し納得した様なシェラだが、まだ首を傾いでいる。
「うん、まぁ今の時代じゃなくてもエンチャンターは希少だったと思うよ。もともとドワーフ族が得意な魔法なんだけど、魔法を使えるドワーフ自体が少ないからね」
「しかし、キャミ君はやけに魔法に詳しいんだな」
 ヴァルザードは関心するように何度も頷いている。
「エルフって長寿だから知識は豊富なんです。私はまだ16ですけど、私を生んだ母は800歳位だったらしいですし、それで色々教えてもらいましたから……」
 少し照れたように頬を赤らめてキャミは俯いてしまった。自分が柄にもなく饒舌だったことに恥じているのだった。
「てか、ルシよ! どこで魔法覚えたの? 誰に教わったのよ?」
 シェラはまだお怒りモードのようだ。
「ここは、のんびり話しする場所じゃない。先を急ごう」
 また自分に話しが回って聞いたので、無理やり話しを終わらせたルシである。
「「はい」」
「うむ、そうだな」
「リン、案内たのむ」
「ワン!」
 そしてリンを先頭にルシ達は祠に入ることにした。
お読み下さった方ありがとうございます。
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