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ルシ伝 作者:キルナ

第1章 カノン王国の王女

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王女奪回計画

 カノン王国を出て10日。ルシ達はディアーク王都に戻ってきた。雪が心配されたディーエス山脈だったが、多少降雪があった程度で積雪にまでは至らずにすんだ。

 とりあえず宿をとろうと『山猫亭』に向かうルシ達。
「ちょっとまって。別の宿にしましょ」
 そう言ったのは珍しく真顔のシェラだった。
 皆、怪訝な顔でシェラを見る中、ルシがシェラに聞いた。
「なぜだ?」
「私達はお尋ね者になるわよね?」
 シェラが首をすこし傾いでいる。ルシは少し考えて
「そういうことか……」
「うむ、そうだな」
 ヴァルザードも理解したようだ。
 つまりルシ達がお尋ね者になれば、親しくした者が取調べ等の被害を受ける恐れがある。だから『山猫亭』に迷惑が掛からぬ様、別の宿にしようということであった。

「では他の宿に泊まるのですか? それでは其方にも迷惑が掛かるのではないのでしょうか?」「うん多少疑いの目が行くかもだけどね、そのぶん『山猫亭』にかかる疑いが薄れるのよ」
「うむ、疑いの目は分散されるほうが良いね」

 そしてルシ達が訪れたのは『海猫亭』という酒場件宿屋。そこは名前が示すとおり、海の幸をメインにした魚料理が豊富だった。そういえば『山猫亭』は魚料理より肉や山菜料理の方に重きを置かれていた気がする。
 そんな魚料理に舌鼓を打ちながら旅の疲れを癒す。相変わらずルシはエール、ヴァルザードはミルク、シェラはワインを主食の様に煽って、魚料理をもっぱら口に運ぶのはキャミ、クー、リンであった。
 その夜の宿は、シェラ、キャミ、クー、リンで4人部屋に泊まり、ルシとヴァルザードが2人部屋に泊まる事になった。クーとリンはルシと同じ部屋に泊まりたがったのだが、ヴァルザードも一緒だと知ると「絶対嫌!」と強く主張し、仕方なくシェラ達と相部屋になった。
 ヴァルザードの目に薄っすら涙が浮かんでいた事を誰も知らない。

 ルシ達は食事を済ませると一端シェラ達の4人部屋に集まった。そこでキャノ王女奪回の作戦を練るためである。
 キャノ王女が逃げる事を拒否するかもしれないと言う当初の考えは、カノン王の親書とキャミの説得で大丈夫だろうと結論になった。
 あとはどうやって助け出すかに論点を絞った。

 キャミは『出来るだけ話し合いで済ませられませんか?』と提案したのだが、その案には誰も賛成しなかった。ビズルトラ王の愚王ぶりは有名だからである。そんな王に話し合いが通ずるとは思えなかった。クーは『城の中、特にキャノ王女様の幽閉場所を探る必要があるんじゃないでしょうか』と提案したが、ルシが『他の者を巻き込みたくない』と却下した。『では、私が城内に忍び込んで調べてみます』などと大胆なことを言ったが『駄目だ!』とルシに軽く一蹴された。シェラはさらに大胆で『謁見を求めて、その場で大暴れしてキャノ姫を拉致すればいいのよ』などと言ってのけた。挙句の果てに『どうせ戦争になるんでしょ? なら今のうちに少しでも兵を殺しておけば一石二鳥じゃない』などと皆を呆れさせた。だがそれではカノン王国がビズルトラ王国に宣戦布告をしたも同じ。対外的にも問題があると却下された。

 皆が意気消沈で思い悩んでいるところ、ヴァルザードの発言で思いもよらぬ方向に向かった。
「どこの城にも、抜け道があるものだよ。それを知る者でも居ればいいんだがね」
 それがヴァルザードの発言だった。
 ルシはヴァルザードの発言を聞いて思い出したようにクーに視線を移した。
「クー 森の祠の内部を覚えているか?」
 クーは一瞬キョトンとしたが、すぐ思い出したように
「はい、途中で引き返しましたけど、たぶん覚えていると思います」
 その言葉を聞いたルシが一枚の大きな羊皮紙を取り出した。見るとそれはエルフの森の地図である。
「ここに祠の位置と内部の道順を描けるか?」とクーに差し出した。
 羊皮紙を受け取るとクーはリンを呼んで、なにやらゴソゴソ描き始めた。
「祠の位置はこの辺だったよね?」「ワゥ」
「で、こっちが入り口」「バウ」
「真っ直ぐいって突き当たったでしょ?」「ワゥ」
「ここは十字だっけ?」「クーン」
「ここ右だよね?」「ワゥ」
「…………」「……」
 などとリンと相談しながら羊皮紙に道順を描き込んでいった。
 完全に会話しているような雰囲気に皆が驚いて眺めていた。

 数分後、描きあがった羊皮紙は迷宮地図の様相を示していた。それを見たルシは、
「間違いないな、王宮に向かっている」
「うむ、確かに。 しかしこの祠の位置だと森の結界内じゃないのかい? 無事に戻れた事が信じられないのだが?」
「リンがより強力な結界でクーを守ってたんだろう」
「バウ!」リンが『そうだよ』と言わんばかりに吼える。
「えええ、そうだったの?」
 驚いているクーの横で、リンは鼻をツンと上に向け、尻尾もピンと上に伸ばし、なにやら自慢げに気取っているようだった。
「そういえば、ルシとヴァルザードさんの決闘の時もリンが結界張ってくれてたわ」
「えぇ、あの結界がなければ、まともに戦いを見る事が出来なかったと思います」
 さらに自慢げに歩き回るリンである。
「まだ子犬程度の大きさなのに、神狼恐るべしだな」

「しかし問題が一つある」
 そう言ったのもヴァルザードだった。
「なんだ?」
「この迷宮が抜け道だったとして、王宮の何処に通じているかだ。王族専用の抜け道なら王族の私室か居間辺りだろうが、宝物庫に通じてるかも知れないし、或いは庭の井戸等も考えられないことも無い」
 ヴァルザードの意見にルシ以外が納得したように表情を曇らせた。
「いや問題ないだろう……、日中なら別だが潜入は深夜だ。それに宝物庫ならついでに魔王の剣とやらも手に入れられるし、まぁ王族の居間ならベストだしな」
 ルシが『問題ない』というと、皆がそう思うようになって来ている。(洗脳だわ)とシェラは思った。

 決行は今日の深夜12時。それまで一端寝る事にした。

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