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ルシ伝 作者:キルナ

第1章 カノン王国の王女

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ルシの変化

 酒場ではキャミが戻ったことでシェラは大騒ぎである。キャミに抱きつきワンワン泣きじゃくる始末。クーも最初は泣いていたが、今は呆れ顔でシェラを見ている。しかしどこか嬉しそうな表情だ。ルシは相変わらず、人事のようにエールを飲んでいた。ヴァルザードはと言えば「今日ほど寿命が縮む思いをした日はないよ。疲れたから俺は寝かせてもらう」と言ってさっさと2階に行ってしまった。リンはキャミを初めて見るので、興味深そうにしているだけであった。

 その夜一つの事件が起きた。
「え? ルシさんと同じ部屋で寝るの?」
 ちょっと驚きながらも、ほおを薄っすら朱に染めるキャミ。
「そうよ、どうせ旅にでたら野営で一緒に寝るわけじゃん? なら宿屋でも同じ部屋で良いかなって。1室しか借りてないの♪」
「そ、そっかぁ って野営なんてして来たの?」
 今度は心底驚いたようだった。
「うんうん、星が綺麗だしさ、焚き火の炎がゆらゆらしたりして、素敵だったわよ♪」
 天井を見上げ夢見る乙女のような表情で語るシェラ。
「そ、そうなの?…… なんかシェラ、らしくない よ?」
「う、うっさいわね! まぁとにかくそういう訳だから、ね♪」
 そして恥ずかしそうに部屋に入り、もじもじしているキャミに
「キャミは、このベッドを使ってくれ」とシェラの横のベッドを示された。
「あ、はい。ありがとうございます」
「で、クーとリンは同じベッドな?」
 そのルシの言葉でクーとリンは固まった。
「あの、ルシ様…… リンは寝相が、悪いので、その……」
「ウゥゥ! ウワン! ウゥゥ! ウワン!」
 リンは、(寝相が悪いのは、お前だ!) と言ってるようである。
 クーがキッ!っとリンを睨むと、
「リン、あんた、毛皮着てる、床で寝て」
「ウゥゥ! ウワン!」
「いやだ、って、いうの?」
「ワン!」
「じゃ、尻尾に、なれば?」
「ウワン!」
 終いには取っ組み合いの喧嘩になった……
 そしてルシに無理やり引き離される。

「あぁ。わかったわかった。 じゃリンはオレと一緒に寝るか?」
「ワァンワァン♪」
 リンはルシのベッドに飛び乗って転げまわっている。

「すごく判り易い犬よね?」
「う、うん、ってか、あれ狼ね。一応、神狼なんだって」
「えぇぇぇ!」
 シェラとキャミが歓心しているようだ。

 しかし。
「ダメです! じゃ、私が、ルシ様と、寝ます」
 そう言ってクーはリンをベッドから引きずり降ろそうと足を引っ張っている。
「リン、だめ、そこわたし、おりろー!」
「こら、クー。お前がオレと寝るとか、ダメに決まってるだろ」
「なぜですか? わたしも、ルシ様と、寝たいです」
「むぅぅ、とにかくダメだ!」
「でも、ルシ様は『オレに遠慮するな』と、仰ってくださいました」
「いや、それはだな……」
 駄々をこねるクーに、困り果てるルシ。

「なんか、クーちゃん変わったね?」
「てか、ルシも変わったでしょ?」
「う、うん。だよね」

「あーもういい。ならオレが椅子で寝るから、お前達は好きにしろ」
 ルシは椅子に座り腕組みをして、寝る体勢に入ってしまった。
「あぅ それは、困ります」
「クゥゥン」
 見詰め合うクーとリン。お互い気まずい雰囲気である。
「わ、わかりました。リンと寝ます」
「ワ、ワン……」
 結局、クーとリンが同じベッドでなる事になった。

 クーとリンが寝静まった後も3人は久々の再会に時間も忘れ話に花を咲かせている。もっぱら口を開くのはシェラで、それに笑顔で答えるのがキャミ。たまに突っ込みも入れている。もっともルシは聞かれた事に答える程度だが、それでもたまに微かな笑みの様なものを浮かべる。一見誰が見ても判らない程度だが、シェラにはそれが判る様だった。もちろんルシ自身も自分が微かに笑みを浮かべてることに気付いている。気付いて驚くのだが。しかしなぜか心地よいと思っている。そしてこんな時がいつまでも続くことを願っている自分に、また驚いていた。

 ふと、クー達のベッドに目を向けると、お互い背中を向けて寝ていたクーとリンだったが、いつの間にかクーがリンに抱きついている。クーは余程良い夢なのか幸せそうな寝顔だった。対してリンは、悪い夢でも見ているかの様な、渋い表情でクーの腕から逃れようともがいている。なんとかクーの手から逃れたリンは、クーの顔の上に覆いかぶさった。幸せそうなクーの寝顔が一変して苦悶の表情に変わる。逆に安らかな寝顔に変わったリンだったが、クーに力いっぱい払い退けられ、ベッドから落とされてしまった。
 キャン!

 それを見ていた2人が思わす噴出す。
 ルシの顔にも明らかな笑みが浮かんでいた。
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