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ルシ伝 作者:キルナ

第1章 カノン王国の王女

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魔道師エンムギ

今回は説明ばかりです。
すみません・・・
 大陸中央にあるパナソニ砂漠。その砂漠の中央に巨大な一枚岩パナソニ・ロックがある。その巨大な岩の上面に広がる古代遺跡。さらにその中央に立つ名も無き塔。
 皆が宴に戻った頃、ルシは1人その塔に向かう。星明りしかない闇の中、後方では微かに宴の喧騒が聞こえる。塔までは距離的も10分と掛からないだろう。

 ルシがここに来た目的は『古の大魔道師』である。昔ルシがまだ小さかった頃、大陸西端の小さな寒村で、そのローブを被った謎の男は封印という名で全身に古代文字を刻んだ。その痛みの所為かわからないが、その時黒かった瞳は虹彩異色の金と赤に変わり、髪は白金と化した。
 別にその男に恨みがある訳ではない。必要があるからそうしただけなのだろう。だが自分の体に訳がわからない物があるのは気分が良いものではない。生きる目的も行く宛ても無いルシが旅するにあたって無理やりこじつけた目的だったのかも知れない。

 今、目の前に見える塔にエンムギが居る。『古の大魔道師』という2つ名を持つエンムギがルシの探す人物かどうかは判らないが……

 塔は円柱形と言ってもその高さは階層でいえば5階位だろうか? 当初どの程度の高さだったのか定かでないが、今は半壊や全壊に近い状態だった。上部は完全に破壊され辺り一面に落下、周囲の建造物を崩壊し瓦礫の山と化したのであろう。
 その瓦礫を避けながら塔の入り口らしき扉の前まで来た。煉瓦を積み上げて造った様なその扉は両開きでその大きさは王城の城門位はあるかもしれない。到底人間1人で開け閉め出来る代物ではない。

 幸い扉は開いていた。人一人が通れる程度だが、その隙間から微かに灯りが漏れている。ルシはその扉から中に入った。
 そこは大きな広間のようで、直径1メートル近い柱が何本も立っており、天井を支えていた。その中央に2階へと上がる階段がある。その階段は人が5人位なら楽に並んで上れそうだ。その階段の両脇には数段おきにガーゴイルの像が立っていた。
 広間の左右両壁にもガーゴイルの像が並び、数箇所にランタンが付けられている。その灯りの光量から察するに中に魔法石が仕込んであると推測できる。ここも外ほどではないが所々壊れた煉瓦が散らばり、壁や天井、柱や階段、床や階段、いたる所に小さな亀裂が目立つ。それが聖戦での古傷なのか、500年という歳月の所為なのかは判らないが……
 前面の壁には階段を挟んで左右に2箇所ずつ扉があり、その一つが開いている。ここの扉は塔正面のそれとは違い、それほど大きな物ではなく、人の手によって開け閉めされるのだろう。
 ルシはなにも警戒する様子も無く、迷わずその扉を潜る。
 そこは10メートル四方程度の部屋で中央にゴーレムと思われる巨像が一体立っている。そのゴーレムの前にローブを着た1人の男が佇んでいた。
 ルシが部屋に入ると、その男は振り返り怪訝な表情を向けた。
「だれじゃ? どうやって此処に来た?」
「ギルドの依頼で来た。ルシと言う」
「ギルドの依頼じゃと? ……おぉそう言えば頼んでおったのぉ。で、わしになんか用か?」
 その男はギルドと聞いて少し安心したのか、その表情を少し和らげた。
「エンムギと言うのはお前か?」
 エンムギの眉間に少し皺が増えたが、その表情は少し笑っているように見える。
「うむ、わじじゃが。やけに態度がでかい奴じゃのぉ」
 ルシは得心したような表情を浮かべた。エンムギが自分の探している『古の大魔道師』ではないと悟ったようだった。
「そうか。ならここに『古の大魔道師』は居るのか?」
「不本意ながら、わしもそう呼ばれておるがのぉ」
「いや、お前じゃない。500年前の魔道師のことだ」
「いや、ここにはわししかおらん」
 ルシはそれを聞いて、一瞬のことだが微かに諦めの様な表情を浮かべた。
「……そうか、邪魔したな」
 そう言ってルシは部屋を出ようと振り返る。
「まぁ まて。『古の大魔道師』を探す奴なぞ初めてみたわ。事情があるなら言うてみ」
 エンムギは得意げな笑みを浮かべ、「ほれほれ」などと言い、手招きまでしている。

 ルシは一瞬悩んだが、たしかにエンムギは『古の大魔道師』に一番近い存在なのだろう。話してみる価値はあるかも知れないと思い話してみることにした。
そしておもむろに語りだした。幼き日の村で古代文字を彫られたこと。洞窟に幽閉されたこと。村長から聞いた話。それらを全て語り、体に彫られた古代文字も直に見せた。
 エンムギは興味深そうに聞きていたが、体中にある古代文字を見たときは驚きの色を隠せなかったようだ。
 そしてエンムギが言うには、この古代文字は、今は失われた文字で読むことは勿論、書くことなど誰にも不可能だと。もし書ける者がいるとしたら、500年前であっても、かの『古の大魔道師』と言われた男だけだろうと。
「つまりじゃ、お主の言うことが事実なら、『古の大魔道師』は、まだこの世に生きていると言う事かの……」
「オレは嘘などつかん」
「わかっておる。その体の文字が事実だと語っておるわ」
 エンムギは表情を強張らせながらも、どこか嬉しそうだった。
「しかし、それが封印だとして、なにを封印しているのか、わしにもわからんわ」
「……」

 そしてエンムギは「すまんのぅ」と言って自身が今なにを調べているのかを語りだした。
 まず、このパナソニ砂漠が500年前は砂漠ではなく、広大な平原だったこと。それが聖戦後急速に砂漠化したこと。通常砂漠化の原因として土壌流出、塩性化、飛砂、森林伐採。他にも、過度な農業活動で土壌が渇くなど色々あるのだが、このパナソニ砂漠に関しては、それらのどれにも当てはまらず、原因が全く不明だという。
 だが、エンムギ自身は魔法によって砂漠化したのだと考えているらしい。理由はあまりにも急速に砂漠化してしまったこと。それと、つい最近までこの辺り一帯年中砂嵐で、人の介入を一切許さなかったこと。つまり魔法により人為的に砂漠化させて人を寄せ付けないようにしたのでは無いかと言うことだった。あくまでこの塔を調べることで、その考えに至ったらしいのだが。
 今エンムギの目の前にあるゴーレムもそうだが、いたる所にあるガーゴイルの像も魔法生命体で、上位以上の魔法で作動するという。それ以外にもこの塔には様々な魔法の仕掛けがあるらしい。そしてつい最近までここには人が居た痕跡もあり、その人物が消えた為、辺り一体の砂嵐も消えたのでは無いかと考えているらしい。つまりこの塔の魔法設備を使いこなせることが出来るなら魔法による砂漠化も可能だったのだという。

 しかし、では誰が此処に居たのか? 誰が此処の設備を使いこなせるのか? そんな人間は居るはずがなかった。居るとすればそれは『古の大魔道師』しか考えられなかった。が、その生存をどうしても信じることが出来なかった。人間は500年も生きられない。そんな魔法の存在は聞いたことも無い。では人間以外の種族か? 史実にはそんな記述は一切無い。では誰だ? そんな存在が他に居るのか? わしの思い過ごしか? わしの妄想か? 

「そういう思考の迷宮に入り込んでしまっていた。おまえの体の古代文字を見るまではな……」
なんと日間ランキング30位です。
お読みくださった方。それから
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ほんとうにありがとうございます。

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