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ルシ伝 作者:キルナ

第1章 カノン王国の王女

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砂漠遠征

 ルシは今、冒険者ギルドのメンバー26名とラクダ15頭で、パナソニ・ロックに向かい、延々と続く熱砂の海を歩いている。季節はもうすぐ冬だと言うのに、灼熱の太陽が砂を焼き、気温はそろそろ40度を超えようとしていた。時折吹く風は砂塵を撒き散らし行く手を阻んでいるようだった。
 そんな不毛の大地を黙々と歩き続ける一行は、みな一枚物の布を頭からすっぽり被ってる。それぞれの背に水袋や食料を担ぎ、15数頭のラクダには、エンムギに届ける大量の食料などを積んでいた。1列に連なるラクダを囲むように右前方に1班、左前方を2班が6名ずつ、右後方を3班が、左後方を4班が6名ずつ、先頭をリーダーのヴァルザード、後方をサブリーダー2人。声を発する者も無くただひたすら進んでいく。

「よし……じゃぁ休むぞ」
 グループのリーダー、ヴァルザードの言葉だ。天幕を張り日陰を作り、みなその陰で休んでいた。砂漠の昼は猛暑だ。昼間は最高気温50度を超える。暑い昼間は出来るだけ休憩し、夕方気温が下がってきてから動くのが普通である。そうすることで少しでも水を温存できる。もし砂漠の真ん中で水が無くなれば、それは全滅に等しい。

 無駄な会話も無くただ日が傾くまでの休憩。天幕の下、日陰でも汗が止まらない。

「よし、そろそろ出発しよう」
 日もだいぶ傾いた頃だった。天幕を片付け、それぞれ荷物を背負い、また歩き出す。夕方なのに、それでも暑い。誰一人会話をする者はいない。少しでも体力を温存する為に、無駄な会話はしないのだろう。時折吹く強風が砂塵を一瞬だけ砂嵐に変える。

 完全に日が沈めば、あたりは星明りのみ、気温は氷点下、昼間とうって変わって極寒である。それでも弱音を吐く物はいない。みな一流の冒険者なのだ。

 シェラとキャミがカノン王国に戻った為、2人減ることになったが、それでも27名がこの依頼に参加している。ランクAがリーダーのヴァルザード1人、ランクBがルシ他11名、ランクCが15名だった。

 砂漠の徒行2日目のことだった。全方の砂丘がキラりと光る。それに気付いたのはルシとヴァルザードだけだった。
「来るぞ!」
 そういったのはリーダーであるヴァルザードだった。ルシは剣の柄に手を当てていただけ。そして突如砂煙をあげて、それが突進してきた。ヴァルザードの声に全ての者は反応している。重要なのはラクダを守ることだ。前方から来たそれに対し、1班と2班から3名ずつが向かった。他の者は自分の守備位置を動かず、辺りを警戒している。体長3メートルほどのそれは、大サソリだった。大サソリは、その巨大な爪で冒険者を襲い、8本の脚で素早く回転し強靭な尾を振り回す。冒険者の動きはそれより早く、大サソリは瞬く間に冒険者6人に切り刻まれていく。誰一人怪我することも無く、砂漠に大サソリの死体が転がった。

 そして一行は、また延々と続く熱砂の海を歩いていく。
 その後何事もなく砂漠の徒行は進み6日目を迎えた朝のこと。ルシがおもむろに右遠方も見つめ呟いた。
「砂嵐が来る、それもかなりでかい」
「「な!」」
「「本当か!」」
「砂嵐は南からだな? よし、北側の砂丘の向こうまで走るぞ!」
 一行は急いで砂丘を越え、その斜面に防衛策を施していく。
「ラクダを全てロープで繋げ!」
「急いで天幕を張れ! 南側をしっかりと砂中に埋めるんだ!」
「張った天幕にラクダを入れろ!」
「1班2班は天幕を抑えるように伏せるんだ!」
「残りはしっかりラクダを抑えろ!」

「来るぞぉーー!」

 ヒュゥゥ!
 ビュゥゥゥ!
 風の唸る音が幾重にも遠巻きに聞こえてきた。
 ビュゥゥゥゥゥゥ!
 空気を切り裂くような風の音がすぐ其処まで迫っているのがわかる。
 ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
 ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!ビュゥゥゥ!
 荒れ狂う風の音が今頭上から聞こえ、全てを巻き込もうとしている。
 ビュゥゥゥゥゥ!ビュゥゥゥゥゥゥゥ!
 天幕をまくり上げ、人やラクダを連れ去ろうとする。あがなうものは引き千切ろうとする。
 ビュゥゥゥ!ビュゥゥゥ!
 延々と風と砂が荒れ狂い、風を切りる音が耳にこだまする。
 何時間こうしているのか意識があやしい。
 ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
 荒れ狂う風の音が少し離れたのか、意識が遠のくようにも感じる。
 ビュゥゥゥゥゥゥ!
 風の音が遠くに聞こえる。意識が薄れたのかもしれない。
 ビュゥゥゥ!
 ずーと遠くで風の音が聞こえる。その音が小さくなり消えていった。

 数時間後、砂嵐は去ったが、冒険者達は消えていた。冒険者が張った天幕も15頭のラクダも今や1頭も見えない。辺り一面、砂、砂、砂、砂、無人の砂漠と化していた。その地形は砂嵐の通過前と比べてかなり変わっていた。

 そこに一陣の風が吹いた。その風で砂が動き、そこに布切れの様なものがチラホラ見える。

 バサッ!
 その布切れがめくれ上がり、その下から冒険者達が現れた。その布は天幕の一部だったのだ。そしてラクダの群れも姿を現す。

「ふぅー、みんな無事かぁ!」
「点呼とれー!」
「1班は無事だ!」
「2班もOKだ!」
「3班も無事だ!」
「4班も無事です!」
「ラクダは?」
「大丈夫ですー」
「よし……全員無事のようだな」
「死んだと思ったぜ……」
「しかし、ルシ。よくわかったな?」
「ん? まぁ砂漠は何度か旅してるからな」
「そうなのか。まぁお前のおかげで助かった」

 そうして一行はまた、昼間の猛暑と夜中の酷寒に耐えながら徒行を進める。徒行開始10日目の朝、夜明けとともに、前方にパナソニ・ロックがその雄大な姿を現した。一番懸念していた、サンド・ワームとは遭遇しないで済んだようだ。

「あれが一つの岩なのか……」
「うむ、ちょっと信じがたいな」

 パナソニ・ロック、それは大陸中央に位置するパナソニ砂漠の、その中央にある巨大な一枚岩のことをいう。周囲10キロ以上あると言われるそれは、遥か昔から神々が住む聖地として崇められている。

 パナソニ・ロックに到着した一行に残されたのは、この一枚岩の登頂である。といっても、別に難しいものではない、ある程度の道は造られていて、その道に沿って杭が打たれロープが張ってある。それに沿って登ればいいだけだった。まぁ5時間ほど掛かりはしたが……

 登頂した一行を待ち受けていたのは、パナソニ・ロックの上全面を、ほぼ覆いつくすような古代遺跡だった。そう500年前の聖戦で、古の大魔道師の秘術、隕石招来魔法を受け多くの魔人を道ずれに廃墟とかした街だった。そしてその中央に直径100メートルはあろうかと言う壊れた塔があった。

 一行がエンムギ達のテントに着いたのが10日目の夕刻のことだった。その夜は廃墟の中にあるオアシスで小さな宴が催された。

 その頃、クーと小狼のリンは、エルフの森にいた。しかしそれをルシは知る由もなかった。
感想。評価を頂けると嬉しいです
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ルシ外伝も短編としてUPしています。
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