脳卒中患者の車の運転に関して
最近、てんかん患者の事故などにより、道路交通法が変わった。
また、脳卒中患者などの車の運転について、私が実際にしたことについて覚えで書いておきたいと思います。
これはあくまで一例です。
事の起こりは、私がくも膜下出血で入院中、初めての外泊が許された時だった。深夜勤務明けの夫が迎えに来てくれて
「帰りの運転任せていい?」
私に車のカギを渡そうとしたところで、看護師さんや医師から待ったがかかった。
「まだ、車の運転はいけないよ。高橋さんなら前と同様できそうな気はするけれど、万が一のことが起きたら言い逃れができない。だから今は車の運転はいけないよ」
と。
このときは、私は車の免許を返納しなければいけないのか? と落ち込んだが後日、リハビリの先生が私が再び車の運転をするために必要な手順を教えてくれた。
①まず、公安に行って指示を仰ぐこと。
②車の保険について、保険会社に指示を仰ぐこと。
③必要な場合は、車の運転技術のテストや講習を受けること。
以上だ。
早速、①から外泊をした時に近くの警察に行って相談をした。
「現在くも膜下出血で入院治療を受けていますが、退院後は車の運転を希望しています。どうすればいいですか?」
そう伝えると、診断書をもらえた。
これをだいたい2週間をめどに医師に書いてもらってくださいと言われたので、再び病院に提出し記入をお願いした。
今度、医師からその診断書をもらうと、免許センターへ行ってもいいし、私は再び近所の公安に行った。
免許センターのほうが手続きが早いので、行ける人はそちらをお勧めする。
免許センターに行くと別のやり取りがあるかもしれないが、私は「係の人から連絡があると思います」その一言を言われて帰宅した。
……ただ、こちらも2週間待っても連絡がなかったので、再び公安に行き問い合わせをしたら、すぐリターンがあって「診断書に2年間大丈夫とあるので、また2年後、そのころに診断書を送りますので、また医師に書いてもらってください。車の運転をしてもらって結構ですよ」と、許可が下りた。
……裏書も何もない。
ただし、免許更新と同時に診断書の更新が必要になった。
ここで許可が下りたので、私は③についての手続きはなかった。
その人の病気の程度によっては、車の運転技術の審査を受ける場合もあるので、それについては公安の指示を受けていただきたい。
次に保険会社。
私は入院前に車の保険の更新手続きを終えたところだった。
どうしようかなー、と思っていたら、担当の保険屋さんが義父のもとに尋ねていたので、相談に行った。
事情を話しをすると、保険屋さんは笑顔で
「なら、こちらで変更する点はありません。大丈夫ですよ。そのまま車の運転を楽しんでください」
そういってくれた。
よって、私は車の運転の許可が公安からおりた日から、車の運転を再開している。
私の場合、手続き変更が少なかったので、かかった費用は病院に支払った診断書の書類代だけだった。
もし、公安で講習などを受けた場合は別途費用が必要になるし、もしも車両を身障者用などに改造する場合はそれの費用も必要になる。
幸いそれらの意味で、私の場合かかった費用は最安値だったかもしれない。
割と年配の人は「大丈夫大丈夫、今まで乗ってたんだから」そういって、安易に車の運転を再開してしまうが、万が一のことが起きた場合、医師が私に言ったように言い逃れができないことを覚えておいてほしい。
免許の返納はためらう人も多いだろう。
土地や地域の公共交通網によっては、できるだけ長く運転したいという人もいるだろう。
だが、どうか助かった命を大事にしてほしい。
余談だが、ここに別の脳梗塞のおじいちゃんの例をあげておく。
このおじいちゃんは脳梗塞になった。退院後、いつも乗っていたからと車を運転し、自損事故を起こした。
この時は小さな自損で済んだ。
だが、間をおかずに再び自損事故をした。
こちらも幸い大事には至らなかったが、その息子はおじいちゃんに
「もう、車に乗らないでほしい」
そういっておじいちゃんの車のカギを取り上げた。
が、そのおじいちゃん、今度はおばあちゃんの車に勝手に乗ってしまった。
再び自損事故……。
医師からも「いやいや、あなたはもう車に乗ってはいけないよ」と告げられたが、田舎の交通網の不便さから再び勝手に車に乗ってしまう。
困り果てた家族は、公安に相談した。そのお巡りさんからおじいちゃんは直接注意を受け、自ら免許証を返納した、という実話があるので、お知らせします。
そうでなくても高齢者の免許返納問題は昨今言われている。
脳卒中患者の家族だけでなく、きっともっと身近な問題として覚えていただけたらと思う。
免許証は家族が無理やりに取り上げるのではなく、本人の意思で返納できるようサポートをしてあげてくださいね。
追記。
夏に私が主治医の診察を受けていた時のこと。
「高橋さん。そろそろ診断書切れるでしょ? また書くからもらってきてね」
主治医に言われて首を傾げた。
「何の話ですか?」
って。
素できょとんとした私に看護師さんがクスリと笑う。
「うん? 免許証の診断書、僕あれに3か月って書いたんだよ。もう3か月だから切れるでしょ」
主治医が私の顔を見た。
「え?」
私は首を傾げた。4月のとき免許センターの担当の男の人の名前は覚えていないけれど、たしかあの時
「2年大丈夫だから、2年後また送付します、って言われましたよ?」
うん、確かに2年後だった。
すると瞬きを数度して、西田先生はあー、とパソコンの画面に向かった。
「ああ、じゃあ嵯峨先生が書き直してくれたんだね」
わぁ!
3か月と2年って全然違いますね!
診断書のお値段て何気に馬鹿になりませんものね!
てゆか、それ、私にとっては嵯峨先生のファインプレーですよね!
「じゃあ2年後にまた書くよ」
西田先生は笑ってパソコンに会話記録を打ち込んだ。
お願いします、そういって診察室を出たんだけど。
……これはまた嵯峨先生に白い悪魔、もとい砂糖の塊の差し入れをせねばならないか!?
ちなみに、入院中に散々「白いものは敵! 砂糖は敵!」と私に吹き込み続けた嵯峨先生は、その実その細身から思いもよらないけれど、甘いものも結構食べる人だったりする。
車の運転再開の手順は地域、その人の状態によって異なると思います。
まず公安でお問い合わせください。
あと。
脳卒中患者の方は勝手に乗っちゃうと もしもの時が大変ですよ?
迷惑がかかるのはあなただけじゃなく、家族、そしてあなたの命を救ってくれた医師たちにまで及ぶかもしれませんよ?
少しでもこのお話が脳卒中患者の交通安全啓発につながれば幸いです。