第十話 「妹がペットをもらった。名前はガルガンだって」
えっ!? 五百名って何? なんでそんなにたくさんの犬がいるの?
俺は疑問に思い、変態に尋ねた。変態が言うには「カミーラ様を信奉する歴戦の勇士達」とのこと。
――なるほど、つまりだ!
ティムはここ数日、変態と一緒に魔王イベントに参加して遊んでいた。そこでティムにファン、親衛隊ができたという話なんだね。
納得である。ティムははっきりいってスペシャルに可愛い。前世のアイドルなんて目じゃない。その整った顔立ちときれいな銀髪、誰もが目を見張るはずだ。
むしろ五百名って少なくないか?
ともかくティムに親衛隊がいることはわかった。そいつらがティムを慕っていることも想像がつく。だが、さすがにうちで全員を雇うわけにはいかない。というか彼らはティムのファンであっても普段は仕事をしていて変態のような無職ではないだろう。
……多分、というか無職の人がいてももう無理!
ただでさえ変態を雇ってうちは限界なのだ。これ以上中二病患者が増えても対処ができないよ。
だから「アイドルのおっかけなんてやらずに仕事に戻りなさい!」と、変態に彼らへの伝言を頼んだ。
すると変態は「ははっ」と言ってスタスタと外へと出かけていった。返事からして気合は十分だった。ティムの親衛隊をばっちり説得してきて欲しい。
本当に頼むよ。店は変態だけでせーいっぱいなんだから。
「それにしてもティムには親衛隊がいるのね。知らなかった」
「ふふ、お姉様、近衛だけではありません。我には眷属の魔獣もいるのです。名をガルガンといいます」
魔獣? 犬か猫みたいなものかな?
でもどうして魔獣なんかを……。
そうか! ファンにプレゼントされたんだな。
さすがはティムだ。もうファンを虜にしているよ。
あ〜でも家は飲食店だから動物はだめだよな。可哀そうだけどティムにはペットを飼うのを諦めてもらおう。
「ティム、家ではガルガン飼えないよ」
「お姉様、大丈夫です。ガルガンは放し飼いにしていますので」
「放し飼いで大丈夫? エサとかどうするの?」
「えぇ、周りにたくさん人間がいるところに放していますので大丈夫です」
確かにこの辺は緑豊かだ。木の実とか果物とかもけっこう実っているし、気候は温暖である。放し飼いでも十分に生きていけるだろう。
「そっか、それなら安心ね。ガルガンか〜今度お姉ちゃんにも見せてくれる?」
「もちろんです。お姉様もお気に入りになりますよ」
ふふ、ティムよっぽどガルガンが気に入ったんだな。もう名前を付けちゃって。
それにしてもどんな魔獣なのかな?
きっと猫みたいな癒しオーラが出ているのだろう。最近、ストレスが溜まっているから癒されたい。