挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

妾子王子の試練

作者:柊ゆう
「余の後を継げディードリヒ」

「は?」

 王城のとある一室。二人の男が向かい合うように立っていた。

 一人はディードリヒ・フォン・セムナーン。セムナーン王国の王族という恵まれた地位に生まれ将来を約束されたかのような地位と、王族らしい気品を身につけた彼は、とある理由で国王であるゼネウス王に王城へと呼び出されていた。

 そんなディードリヒと向かい合うように立っている者。名をゼネウス・フォン・セムナーンといい、先ほど紹介した通りセムナーン王国の現国王である。

 ゼネウス王の告げた「余の後を継げ」、つまり跡継ぎとなり次の世代の国王となれという言葉にディードリヒは困惑していた。王族である以上、ディードリヒが後の国王になる可能性は零というわけではない。ないのだが。

「(ついにボケたか、このおっさん)」

 相手は国王である為、口にして貶したりはしないものの、ディードリヒは頭の中で大変失礼なことを考えていた。というのも、ディードリヒがそう考えるのには訳があった。

 一つ目に、ディードリヒの地位は王太子ではなく第五王子、つまり五男という王位継承権からかなり離れた位置で生まれたこと。立場が同じであれば、余程の問題がない限り、跡継ぎとなるのは年功序列で長男が優先される。よって五男であるディードリヒに王位の座が回ってくることはまずありえない。

 二つ目に、ディードリヒの母が妾という低い身分であること。現国王であるゼネウス王は一人の正室と、三人の側室、多数の妾を抱えているが、世継ぎである王太子になるのは正室が産んだ子が優先され、もし正室に男児が生まれない場合は側室の子が優先される。妾の子であるディードリヒが王太子となることなどまずありえない。

 加えて母が既に病死しており、後ろ盾となる貴族も皆無であるため、ディードリヒを王太子にと後押しする勢力は存在せず、貴族による援護もない。

「(この状態で俺が跡継ぎ? ありえん)」

 現在、セムナーン王国には八人の王子が存在しており、その内三人は正室であるエリザベート様がお産みになられている。こんな言い方をすると失礼だが跡継ぎとなる予備に不足はない。

「わざわざ、王命で帰国命令を下されたので急いで――というか半ば拉致される形で帰国致しましたが」

 そう言ってディードリヒは懐の中から一枚の封筒を取り出す。封筒の中には一枚の手紙、そしてその手紙を封印する為に使用された封蝋の印璽は我がセムナーン王家の紋章が捺されている。

 印璽というのは判子のようなもので、家系のシンボルとなるマークが刻まれており、これを封蝋に刻むことで差出人を証明する証となる。貴族籍を持つものは皆がそれぞれの家のシンボルとなるマークの印璽を所有している。

 さて、ここで問題となるのが、この封筒の封蝋に捺されたセムナーン王家の印璽。セムナーン王家の印璽を捺すことができるのは現国王である父のみで、例え跡継ぎである王太子であってもこの印璽を捺すことは許されていない。もし、勝手に使用しようものなら王太子の身分を剥奪されてもおかしくないほどの重罪となる。

 よってこの封筒と中に入った手紙は現国王である父から送られたものになるわけだが。

「("一刻も早く帰国せよ"……本当にそれ以外何も書いてなかったんだよな)」

 封の中の手紙にはただ、一刻も早く帰国せよとの命令のみ。他には何も書かれておらず、一応試したが炙り出しのようなメッセージも記載されていなかった。受け取った当初は仮病でも使って「病気の為帰国するのに時間がかかります」と時間稼ぎをして何かしらの対策を考えようとしたが、手紙を届けた王国の騎士たちによって仕えてくれている侍女共々、強制的に連行されることとなった。

 ちなみにこの際、侍女がすこーし大暴れして騒ぎになったことは割愛させて頂く。

 公国から出た後は外に待機していた全身を白甲冑で固めたフル装備の騎馬兵と合流して馬車で王国まで護衛されながら帰国することになる。その数何と五百人。装備から王家の親衛隊と思われるが味噌っかすの第五王子に対する扱いではない。

「(折角公国で良いコネを作ることができたのに残念だ)」

 ディードリヒが手紙を受け取ったのはアルレシア公国。セムナーン王国の隣国であり長く親交のあったアルレシア公国にディードリヒは留学という形で放り込まれていた。正しくはディードリヒが公国へ向かうように仕向けたのだが。

「(このまま王国にいても碌な扱い受けないだろうし)」

 公国に留学したディードリヒは学院で相手の立場を問わず交流を持ち、有力な貴族や王族とも交流を持つに至る。思いのほかうまく行ったのでいっそのこと、この伝手を頼りに公国に居場所を作って骨を埋めようと考えていた時にこの帰国命令を受け取ることになる。ディードリヒからすればいい迷惑だった。

「失礼ながら陛下、正気ですか?」

 ていうか絶対正気じゃないだろ? 悪魔か帝国の手先にでも洗脳されたか?

 一応自分が跡継ぎとなる可能性を考えてみたが、どう上手く話が進んだとしてもそんな未来は見えない。それこそ他の跡継ぎが全滅でもして止む無しという状況にでも陥らない限り。

 故にディードリヒは父であるゼネウス王の言葉を理解することができなかった。ディードリヒはそれこそ奇跡のような事態でも起こらない限り、この国を継げるような立場にはなり得ない。そんなことは本人だけでなく、王である父、貴族に籍を置いている者たちも含め誰もが知っていること。

 そして何より。

「王太子である第一王子のラインハルト兄上はご健在のはず。大変失礼ですが、もしラインハルト兄上に不測の事態が起こっても正室のエリザベート様のご子息が他にもいらっしゃるではありませんか」

 正室であるエリザベート様の三人の王子。立場の低さもあってディードリヒは三人の王子と面会する機会もなく公国へ留学した為、噂だけでしか知らないが皆、出来が良く優秀だという話を聞いている。第一王子のラインハルト兄上は特に優秀で貴族だけでなく平民の支持も高い。後を継ぐのに何の支障もないはずだが。

「他国に知られると不味い故伏せておったが、ラインハルトは既にこの世にはおらん。半年程前に亡くなった」

「は?」

 ラインハルト兄上がこの世にいない? 亡くなった? 公国でもそんな話を聞いたことはあったが、ただの噂話だと思っていた……まさか本当に?

 父の告げた訃報に固まり呆然とするディードリヒ。そこにコンコンと扉を叩く音が響く。ゼネウス王の入れという許可の元、四名の男性と三名の女性が入室する。





「陛下、失礼いたします。そしてディードリヒ様、お久しぶりで御座います」

 部屋に入室した七名のうち、もっとも威厳にあふれた男性が代表してゼネウス王とディードリヒに挨拶をする。その男性はディードリヒにとって見覚えのある人物だった。

「お久しぶりですリーズベルト公爵様」

 ディードリヒは公国へ留学する際にお世話になったことを思い出した。公国へ留学する際の手続きや旅費などを工面して貰ったのがこのリーズベルト公爵で、数こそ少ないがお互いに面識がある。そんな公爵の後ろに控えているのがシルビア公爵令嬢。公爵家のご令嬢であり、王太子であるラインハルトの婚約者でもある。ラインハルトが亡くなった以上、婚約関係も破棄されていることになるが。

「(お顔が優れないところからして、だいぶ引きずっておられるだろうな)」

 貴族である以上、政略結婚といった形で結ばれた婚約となるが。二人の仲が悪かったという話は聞いていない。恐らくだが上手くやっていたのだろう。であれば亡くなったことに対する悲しみも相当なはず。

「ラインハルトの死は痛恨なものであったが、自然死であれば天命と諦めるしかない。しかし、毒殺の疑いがあった」

「毒殺……もしかしてそれで私に疑いを?」

 全く身に覚えのない疑いをかけられているのではないかと冷やりとしたが、父王は違うと手を横に振って否定する。そもそも公国にいたディードリヒに王国にいるラインハルトを殺害することは不可能に近い。暗殺者を雇えば可能、と言えなくもないが暗殺者を雇うような金もディードリヒには存在しない。

 宮中ではラインハルトが毒殺されたことにより、誰が毒を盛ったかという議題で会議が行われたこともあったが、ディードリヒの名は上がることすらなく終わったほどだ。一部の貴族には王族として認知されているかどうかさえ怪しい。

「ラインハルトを害したものは裏で調査を進めることとなったが、問題はその後の跡継ぎについてだ」

「順当にいけば第二王子のエドワード兄上か、第三王子のフィリップ兄上なのでは?」

 どちらもタイプは違うが優秀な王子で、不足している分があってもそれは臣下が支えていれば問題なく国を治めることができるだろう。年功序列を考えれば第二王子であるエドワード兄上だと思うが。

「お前は知らぬかもしれぬが、エドワードとフィリップは双子だ。エドワードが僅か数分早く生まれた故に第二王子となり、数分遅れて生まれた故にフィリップが第三王子となった」

「それは、また……」

 父王から聞かされた知らない事実にディードリヒは頭を悩ませる。第一王子であり王太子であられるラインハルト兄上が健全であられたなら、エドワード兄上もフィリップ兄上もしぶしぶ自分の立場に納得していただろうが、ラインハルト兄上がなくなり、どちらかが王太子となり跡継ぎとなれるとしたら話はだいぶ変わってくる。

 エドワード兄上は自分が僅かにでも先に生まれたことを天に感謝しただろう。そしてこれを機にフィリップ兄上のことを下に見るようになったかもしれない。王太子になるのは第二王子である自分だ、と。

 フィリップ兄上は絶対に納得いかないだろう。僅かほんの数分先に生まれただけで兄は王太子となり、自分は臣下に甘んじる。人間は欲しいものが絶対に手が届かない位置にあれば諦めもするが、もう少しで手が届きそうな位置であれば中々諦めない。そして今回の場合、絶対に手が届かないということもない。

「二人して異なる性質を持っていたことも仇となった。エドワードは武断派の支持を、フィリップは文治派の支持を受けておる」

 エドワードは武力一辺倒で竹を割ったような性格で、その性格から武断派の諸侯から支持を集めており、自ら進んで賊を打倒すなど勇敢な面を見せているところから庶民からの支持も良い。しかし、少々短気で言いたいことをはっきりというところがあり、文官は軟弱者の集まりと正直に口にしたことによって、文治派から強く非難を浴びることとなった。

 フィリップはその頭の良さによって若くして政治に関わり、素晴らしき政治手腕によって文治派の諸侯から支持を集めており、若干ながら武断派からの支持も集める有能さを見せている。しかし、有能でこそあるが口が悪く無能を嫌う性質で、使えないものは高位の身分についているものでも切り捨てるところがあり、嫌われるものからはとことん嫌われており、武断派の諸侯とそりが合わないものが多い。

「王太子はエドワードか、それともフィリップか。不味いことにどちらを王太子にするかで、宮中は武断派と文治派で真っ二つに分かれることとなった」

「誠に申し訳ございません」

「我らの力が足らぬ故このような大事となりました」

 国王の説明を受けて頭を下げて謝罪する辺境伯と伯爵。というのも、ヘルズベルズ辺境伯は大将軍という地位につき武断派筆頭ともいえる人物で、レイムナル伯爵は宰相という地位につき文治派筆頭といえる人物。両名とも宮中の問題に大きく関わっている。

「仕方あるまい。お前たちの立場では今回の件を強く止めることはできぬ」

「……もしかしてエドワード兄上とフィリップ兄上の婚約者は」

「察しが良いな。ヘルズベルズ辺境伯家の娘がエドワードの、レイムナル伯爵家の娘がフィリップの婚約者だ」

 ディードリヒに向かって一礼する二人の少女。ヘルズベルズ辺境伯家のご令嬢がアリシア様、レイムナル伯爵家のご令嬢がフィリア様だったか? シルビア様以外は面識がないから名前があってるか怪しいが。

 それぞれが第二王子と第三王子の婚約者、今後正室になられる方ともなれば嫌でも継承権騒動に巻き込まれることになる。おまけにそれぞれが武断派と文治派の筆頭という立場。上はそれぞれの王子から自分を王太子にせよと命令が下り、下はそれぞれの派閥から王子を王太子にするぞと突き上げ食らう。

 うん、自分がその立場に立ったら泣くわ。そんな事態になって喜ぶのはよほどの自信家で大きな野心があるものぐらいだろう。辺境伯様と伯爵様にも野心はあるだろうが、負けた場合のリスクが大きすぎるな。負けた方の家は潰されかねんし。

「ラインハルトを王にエドワードが武断派をまとめ、フィリップが文治派をまとめる。それが叶えば王家は安泰と考えていた。だが……」

「兄上が亡くなったことで事態は最悪な展開を迎えることに、ですか」

 公国で通っていた学園にも派閥があり、いろいろと面倒な思いをしたことがディードリヒにもあった。子供版で体験した派閥争いでもかなり面倒な思いをしたのに、その大人版と考えると心底関わりたくない。

「お話は分かりましたが、それでも私が後を継がねばならない事態になるとは到底思えないのですが」

 宮中が真っ二つに割れているといってもその気になれば王の鶴の一声で押さえることはできる。多少、不平不満は残るだろうが、第二王子なり第三王子なりを王太子に任命すればそれで解決する問題だ。

「年功序列を考えて第二王子のエドワードを王太子に任命するつもりだった。あの馬鹿げた事件で白紙になったがな」

「馬鹿げた事件?」

 馬鹿げた事件ってなんだ? かなり短気な性格と聞いてるから、部下でも殴り飛ばしたか、フィリップ兄上を暗殺でもしたか? いや、暗殺はないか。やるなら正面からやりそうな性格してるし。

「うむ、それはだな」

「陛下。よろしければその先はわたくしどもが」

 そう言って手を上げたのは三人の少女であり、公爵家、辺境伯家、伯爵家のご息女たちだった。手を上げたということは彼女たちが何かしらの形でその馬鹿げた事件に関わっているということか?

「よいのか? 無理をする必要はないのだぞ、これは我が王家が起こした失態だ」

「いいえ、我らの至らなさが招いた結果です……」

「我らがもっと早くお父様や陛下に報告していればこのような結果にはならずに済みましたのに……!」

 三名の令嬢たちは自分たちから説明すると言って父王は後ろに下がり、令嬢たちはディードリヒの前に立つ。中でも辺境伯家ご令嬢のアリシア様は涙ぐみながら立っている。その馬鹿げた事件とやらで余程酷い思いをすることになったのだろうか。

「(それにしても……)」

 父王と対面していたこともあって三名を拝見する余裕はあまりなかったが、こうして改めて拝見すると三名とも本当に美人なご令嬢で容姿に関して文句のつけようがないほどの容貌をお持ちだ。肉付きが良いと言えば変態染みた台詞に聞こえるかもしれないが、手が届くというのであれば誰でも手を伸ばしたくなるような身体をされている。賊や人さらいがいたら真っ先に狙われそうだ。

 まぁ、あんまりじろじろ見ると失礼だからこの辺にしておこう。ただし、アリシア様とフィリア様を娶ることになるエドワード兄上とフィリップ兄上は心の中で呪わせてもらう。くっそ羨ましい。こっちは婚約者の"こ"の字すらねえよ! 亡くなったラインハルト兄上は恨んでも仕方がないから除く。

 あ、すみません。大事なお話し中でしたね。





「まず、ディードリヒ様はセムナーン王立学園はご存知でしょうか?」

「えーと、確か王族貴族平民問わず優秀と認められた者のみが通うことが許される学園でしたっけ? 例えどれだけ金銭を積もうとも試験に合格しなければ入学することすら許されない学園と聞いておりますが」

 あってますか?と確認を取るディードリヒ。その言葉ににこりと笑って「はい」と返答するアリシア。

「はじまりはわたくしどもと、エドワード様、フィリップ様が通っているセムナーン王立学園に転校生が来たこととなります」

 転校生の名はマリー・ハミルトン。ハミルトン男爵家のご令嬢……なのだが、どうも好色で有名なハミルトン男爵が侍女に手を付けて産ませてしまった娘で長らく認知されていなかった私生子らしい。男爵家の跡取りだった長男が病気で亡くなり男爵家の後を継ぐ婿を取る為、正式に娘として迎えられることになったとのこと。この時点でだいぶ胡散臭いものがある。

 マリー男爵令嬢はその貴族らしくない振る舞いと愛くるしい笑顔で、王族貴族平民関係なく声をかけては魅了し、学園に通う多くのものが彼女に誘惑されたらしい。そして――。

「その誘惑にエドワード兄上も乗ってしまったと」

「……はい」

 アリシア様は涙ぐみながらも説明してくれる。最初は物珍しさにマリー男爵令嬢へ会いに行き、次の日には彼女を探し始め、そのに次の日には彼女へ贈り物をし、さらに次の日には彼女に愛を語り始めたという。

 馬鹿なの? マリー男爵令嬢がどれだけ美人かは知らないけど、アリシア様程の美人な婚約者手に入れておいて浮気ですか。

「美人だなんてそんな……」

「すいません、つい口に出してしまいました忘れてください。(やっべ)」

 ディードリヒの口から漏れてしまった言葉を受けてアリシアが顔を赤くして顔を伏せる。兄に浮気をするなと言っておいてこれでは、自分も人のことを言えた義理ではない。自身に婚約者はいないので浮気にはならないが、彼女からすれば不逞な輩と思われてもおかしくない。

「わたくしも婚約者として一言申さねばならず、お怒りを覚悟に苦言を致しましたが」

「聞く耳を持たなかったと」

 それだけでなく怒り狂ってアリシア様に手を上げたそうだ。赤く腫れた彼女の頬を見て流石にその場では不味いと思って謝罪をしたそうだが、それ以降彼女との関係は冷ややかなものとなった。アリシア様もエドワード兄上を恐れて長らく近づくことができなかったとのこと。

「(この時点で彼女が父である辺境伯様に訴え出ていれば、エドワード兄上に非がある状態で婚約破棄も成立したと思うが)」

 とはいえ、彼女が婚約破棄までを望んだかといえば恐らくノーだ。手を挙げられたとはいえ相手は第二王子で自分は将来その正室となるもの。第一王子であるラインハルト兄上を除いてこれ以上の良縁は自国では望めない。

「もっとわたくしがお声をかけていればエドワード様も分かってくださってかもしれませんのに……!」

「アリシア様、お気を確かに!」

「あなただけの責任じゃないのよ! 私だって何もすることができなかったのだから!」

 泣き崩れてしまったアリシアをフィリアとシルビアが慰める。随分と仲が良いように見えるがこの三人は交流があったのか……いや、それぞれが王子たちの正室になるのだから学園で交流があってもおかしくはないか。

「フィリア、アリシアをお願い。ディードリヒ様、ここからは私が説明させて頂きます」

 アリシアが説明できる状態でなくなった為、アリシアをフィリアが慰め、以後の説明をシルビアが引き継ぐことになる。

 以前一度だけお会いする機会があったが随分とお綺麗になられたものだ。あぁ、ラインハルト兄上、なんでこの人を置いていかれたのですか。

「真面目な話ですのでそういったお言葉は控えて頂けますでしょうか?」

「本当にすみません。(またやってしまった)」

 またしても口から思っていたことが漏れてしまいシルビアに窘められるディードリヒ。窘めてこそいるが彼女の顔がほんのり赤いのは気のせいだろうか。

「マリー男爵令嬢によって引き起こされる問題はその後も続きましたがまだ抑えられる範疇でした。ラインハルト様がお亡くなりになり、エドワード様とフィリップ様の仲がより険悪なものとなりましたが目立った問題は起こりませんでした」

 ラインハルトが亡くなったと言った辺りで悲しそうに顔を伏せるシルビア。亡くなったのは半年前とそう時間を経っていないことを考えると、完全に立ち直るには今しばらく時間がかかってもおかしくはない。

「事件が起こったのは一年の締めくくりである学園でのパーティでのことです」

 父王曰く馬鹿げた事件とのことだったが、いったい何をやらかしたのだろうか。

「パーティの最中に突然、エドワード様がアリシアとの婚約破棄、マリー男爵令嬢との婚約を発表されたのです」

 その言葉にディードリヒはぶわっと全身に冷汗をかく。

「こ、個室とかに呼び出して伝えたとかではなく?」

「学園に在籍するものから教職につくものは勿論のこと、保護者である親や貴族の方も列席されており、陛下の正室であられるエリザベート様もいらしておりました」

「この上なく最悪な現場だああああああああああああああ!!!」

 シルビアの告げた最悪な現場での婚約破棄発表にディードリヒは頭を抱える。個室での当事者のみに伝えるのならともかく(この時点でだいぶアウトなのだが)よりにもよって公衆の面前で、しかも貴族や正室のエリザベート様の面前でそんな馬鹿げたことをやらかしたのかあの馬鹿上は!?

 もうこれだけで毒杯飲んで自害しろと命じられても文句言えんぞ。武断派の貴族も全員が手のひら返すだろこれ。すんごく頭痛い。

「婚約破棄の理由は?」

「マリー男爵令嬢に対する嫌がらせの数々と、王太子の正室として相応しくない振る舞いをした、とのことでしたね」

「……陛下、この時点でエドワード兄上の立場は」

「第二王子であって王太子ではない」

「……身分詐称ですよね?」

「うむ」

 ラインハルト兄上が亡くなり、長兄を除いて一番年上で正室の子とはいえ、王が正式に王太子に任命していない以上はエドワードの身分は第二王子のままだ。勝手に王太子を名乗ることは許されることではない。

 誰かこの時点で止めろよ! 側近たちは何をやってたんだ!? あと馬鹿上はもうちょっと見識を深めてください! もうここまでやったら手遅れかもしれませんけど!

「濡れ衣だとは思いますが、アリシア様が起こしたという嫌がらせの数々というのは?」

「教本を破った、羽ペンを盗んだ、足を引っかけられて転ばされた、といったものですね」

 子供か! 女が本気で嫌がらせに走ったらそんな生易しいもので終わるわけがないだろ! 硫酸ぶっかけて顔潰したり、全裸に剥いて放置とかそれぐらいのことするぞ本気の女は! 少なくとも公国は――……ごめん、なんでもない。

「……王太子の正室に相応しくない振る舞いというのは?」

「誰彼構わず男に声をかけて誘惑したと」

 それお前の隣にいたであろうマリー男爵令嬢に言えよ。誰彼構わず声をかけて魅了する不埒者ならあなたの横にいたと思いますよ。後、婚約者がいるのに浮気した馬鹿上が言ってもブーメランにしかなってないです。

「えーと、一応聞いておきますが嫌がらせに関して、アリシア様がやったという証拠は」

「マリー男爵令嬢の涙が証拠とのことです」

 意味が分からん。物証なしで訴えが通ると本当に思っていたのだろうか? 自分はもう王太子になったのだからすべてが自分の思うがままに通るとでも? 実権を持ってる父王だってそんなことはできはしないというのに。

「物証もなくアリシアを断罪しようとしただけでなく、ご自身の配下を使ってアリシアを取り押さえてマリー男爵令嬢に謝罪させようとする始末で」

「はぁ!?」

 シルビアの言葉が信じられずディードリヒはアリシアの方を見てみる。アリシアはディードリヒの視線にびくっと身体を震わせてフィリアの陰に隠れる。ディードリヒは続いてアリシアの父であるヘルズベルズ辺境伯の顔を見ると……そこには般若がいた。

 怒りの対象は恐らく、というか間違いなくエドワード兄上だ。アリシア様や辺境伯様の態度を見る限りどうやら本当に馬鹿上が馬鹿をやらかしたらしい。毒杯じゃなく縛り首モノじゃないだろうかこれ。仮に命が助かってもその後に辺境伯様にぶっ殺されると思う。

「幸いパーティの警備に来ていた騎士たちの助けもあってアリシアの肌に不埒者の手が触れることはありませんでした。そのままエドワード様と配下のもの及びマリー男爵令嬢を拘束して別室に移動させる予定でしたが」

 え、ここからまた何かあるの?

「フィリップ様がエドワード様の罪を暴くとおっしゃられて、そのままエドワード様の断罪を開始されました」

「……その場で?」

「……その場で、です」

 別室でやれよ! 何のために別室に移動させようとしたと思ってるんだ!? 馬鹿上の馬鹿でパーティが中断となったから再開させる為に移動させてたんだよ! 後これ以上、王家の恥を晒さないために! それなのに何で進んで第三王子のお前が公衆の面前で王家の恥を晒してるんだよ! 兄を断罪することによって王族から除籍させて自分が王太子になろうと企んでいたんだろうが最悪の失策だよ!

「エリザベート様は?」

「大層お嘆きになりあの事件以降一歩もお部屋から出られぬ状態に」

 王太子であるラインハルト兄上が亡くなって心労が溜まっている時にエドワード兄上の凶行によって大恥をかき、加えてフィリップ兄上の兄断罪によって、さらに大恥をかくことに……おいたわしや。

 エリザベート様はどんな気分で断罪劇を見ることになったのだろう。自分がお腹を痛めて産んだ子供たちが、公衆の面前で恥を晒し合っている。その恥は産んだ自分は勿論のこと、愛している現国王にまで及ぶことになる。部屋から出てこれなくなるのも無理はない。

「フィリップ様によって、アリシアの無実の証明とエドワード様及び、マリー男爵令嬢の罪は暴かれました」

「あ、マリー男爵令嬢も何かやらかしてたんだ」

「アリシアの嫌がらせは狂言だったと自白しましたからね。その後、私はヒロインよ、悪役令嬢のあんたじゃなくて何で私が悪く言われなきゃならないのよ!……と、訳の分からないことも言っていましたね」

「すげーどこかで聞き覚えがある」

 具体的に言うと公国でも似たようなことを言っている奴がいました。幸い事件沙汰になる前に終わらせることはできたけど、あの娘も自分はヒロインだとか何とか訳が分からないことを言ってた気がする。

「アリシアの無実が証明されたところまでは良かったのですが、その後にまた事件が起こりまして」

「もうお腹いっぱいなんですけど」

 ここまでやっておいてまだ何か起こせるような事件はあるだろうか? エドワード兄上一行の犯した罪が暴かれて、パーティは散々なものとなったが、そのまま一行を捕縛してパーティを再開させればまだ何とか取り繕えなくもないような気もする……いや、王家の恥はだいぶ晒されたけど。

「……エドワード様がフィリップ様に斬りかかりまして」

「……えー……?」

 もう驚くこともできない。はしたないとは思ってもその場に座り込んで寝てしまいたい思いになる。馬鹿上の起こした事件の全容を理解したくなくなってきた。もしかして、エリザベート様が部屋から出られなくなったのってこれが最大の原因なんじゃ?

 フィリップ兄上の婚約者であるフィリア様を見ると……俯いている。どうやらマジっぽい。

「当然のことながらパーティは中止となり、エドワード様は騎士によって拘束されて牢獄へ。フィリップ様はすぐに王立病院へ担ぎ込まれ、一命はとりとめました」

「はぁ」

 あまりの馬鹿げた事件に生返事を返すことしかできない。

「エドワード様は陛下の最後の情けにより毒杯で自害を。マリー男爵令嬢は縛り首で、ハミルトン家は取り潰し。配下でありながらエドワード様の凶行を止めずアリシアを拘束しようとした配下たちは、北のアーデンブリッズに兵として送り込まれることとなりました」

「配下たちの刑がある意味、死刑より重い……」

 アーデンブリッズは極寒の厳しい土地で、蛮族による襲撃が多々あり、環境もあわせて常に死と隣り合わせにある場所だ。そんな厳しい土地をうまく収めているのがローガン子爵。この方が蛮族の襲撃を幾度と跳ね返した名将として有名なのだが、もっと有名なのが男色であるということ、つまりホモなのである。いや、バイだっけか? 忘れたけど、そんな彼のもとに兵として送ら……贈られるということは、つまり、そういうことだ。

「めでたしめでたしとはいかないけど、フィリップ兄上がご存命なら王太子はフィリップ兄上で決まりなのでは?」

 公衆の面前で兄を晒しものにして王家の恥をさらに晒したことは不味い失策だが、王家の恥を晒してでも罪を犯した兄を断罪した……というカバーストーリーを用意できなくもない。というより、文治派の支持を集めているフィリップ兄上ならそれぐらいのことは簡単にやってのけるはず。

「それが……」

 ディードリヒの言葉にシルビアは言い辛そうに口を閉ざしてしまう。シルビアの視線の先にはフィリアがいた。フィリアは気まずそうな顔で視線を逸らす。

「フィリップは牢獄におる」

「……は?」

 言い辛そうに口を閉ざしてしまったシルビアを国王は公爵の元へ下がらせる。シルビアは一礼して公爵の元へと戻っていく。

 フィリップ兄上が牢獄に……ということは何かの罪で投獄されたということだろうか?

「ラインハルトを毒殺したのはフィリップだったのだ」

「うえぇえぇぇぇえええ……」

 シルビア様が言い辛そうに口を閉ざしたのはそれが原因か。フィリア様の気まずそうに視線を逸らしたのは……ちょっと分からないな。自分の婚約者が王太子を害したのだからどちらかというと申し訳なさそうな顔をしそうなものだが。

「王立病院に担ぎ込まれたフィリップの譫言を医師たちがしっかりと聞いておった。自分ではどうあがいても勝てないラインハルトは毒殺し、同格のエドワードは自分の力を見せつけて打ち負かして、自分が王太子になるとな」

 平常時なら絶対に口を滑らさなかったんだろうけど、斬られて病院に担ぎ込まれた状態ならなぁ。牢獄にいるフィリップ兄上も自分の口から言ったつもりは全くないだろう。

「ラインハルトを殺害したのはシルビア公爵令嬢を手に入れることも目的としていたようだ。本当にどこまでも愚かなやつよ」

 フィリア様が視線を逸らしたのはそれが原因かぁあああ! ラインハルト兄上を手にかけた理由の一つがシルビア様なら気まずい顔にもなるよ。婚約者としての立場だけでなく女としても面子丸つぶれだもん。

「加えてアリシア辺境伯令嬢、あわよくばマリー男爵令嬢も手に入れるつもりだったそうだ」

「ドスケベじゃないですか」

 フィリップの欲望の大きさにドン引きするディードリヒ。女欲しさに婚約を破棄する第二王子に、令嬢たちをすべて独り占めして王太子の座を狙った第三王子。王国が誕生して何百年と経つが、ここまでドロドロとした世代があっただろうか。

「ラインハルトは先に伝えた通り既に亡く、エドワードとフィリップは大罪人として廃嫡済み。正室のエリザベートが産んだ者を王位につかせることはできん。例え今後わしとの間に子ができようともだ」

 まぁ、ここまでの騒ぎを起こしたとなれば正室とはいえエリザベート様の子を王太子にするのは難しい。例え次のお子をお産みになられてもまた何か問題を抱えているのでは……と勘繰られかねない。

 とはいえ、だ。それでも自分を跡継ぎに据える理由が分からない。

「陛下もご存知の通り、私は王位継承権は一番下です。他の王子を王太子に任じられてはいかがでしょう?」

 第一から第三王子までは王位を継ぐことは不可能となったが、他にも王子は自分を除いて後四人もいるのだ。まだまだ不足はないはず。第四王子以降は正室ではなく側室以下の子となるが、妾の子である自分よりは立場は上である。

「第四王子のシャーロックはライオネック公爵家に降家婿養子入りしておる。婿入りして既に五年、今更戻すとなればライオネック公爵家と大いに揉めることとなる」

 そういえばそうだった。確かシャーロック兄上の母の家が、ライオネック公爵家の出で、その公爵家に男児が生まれなかったから婿養子として迎えられたとかなんとかそんな話だった気がする。

「第六王子のカーマーンは?」

「塔に幽閉しておる」

「……なぜ?」

「素行が悪すぎた。平民の侍女だけでなく貴族の娘にまで手を付けおった」

 カーマーンの奴、俺が公国へ行く前から女の尻を追っかけていたけどさらに悪くなってたのか!? よりにもよって貴族のご令嬢にまで手を付けるとは……。

「……第七王子のアベルドは?」

「病弱じゃ。ベッドの上から起き上がることすら敵わん」

 アベルドは俺が公国に留学する前から病弱だったけどあの頃はまだ歩けていたはずなのにそこまで悪化していたのか……。あと残っているのは第八王子だが。

「……聞きたくはありませんが、第八王子のロッキーは?」

「俺は冒険者になる、と言って王国を飛び出して一向に戻ってこん」

 公国にいるときにそんな噂話を聞いてたけど、本当に飛び出してたのか!? なんでうちの王族って何かしら問題を抱えてるの!? 何の問題もないのがラインハルト兄上とシャーロック兄上しかいない。アベルドはお大事にね……。

「消去法で最後に残ったのは?」

「お前だ」

公国おうちに帰りたい」

 本気で公国おうちに帰りたい。消去法で選ばれたのが嫌とかそういう理由じゃなく、こんな問題を抱えまくった王国の跡継ぎになりたくないから!





「それで王太子となり王国の跡継ぎになられると?」

「ちょっと頬引っ張ってくれない? 夢なら覚めたいから」

 王城での話を終えてディードリヒは案内された客室で侍女のレンと共に休んでいた。彼女はディードリヒのたった一人の部下であり、かれこれ十年という長い時間を共に過ごした姉弟ともいえる間柄だ。歳はディードリヒの一つ上の十六歳となる。

 彼女は「では遠慮くなく」と王子であるディードリヒの頬をぎゅーっと引っ張る。引っ張られた頬は痛く、夢から覚めることはない。

「かつてディードリヒ様は自分が跡継ぎになるのは奇跡でも起こらない限りありえないとおっしゃっておりましたが……起こっちゃいましたね奇跡」

「昔、そんなミラクル絶対に起こらねーよと言ってたけどさ……奇跡なんて口にするんじゃなかったわ」

 公国で自分の居場所を作っていたら自国である王国に居場所を作られていた。気分はコツコツお金を貯めてマイホームを建てようとしたところに、豪邸を用意してやるから実家に帰ってこいと言われたような感じだ。棚から牡丹餅、と言えなくもないが公国に留学して作り上げた五年間の成果が無駄になったと考えると、どうしようもなく無気力な気分に陥ってしまう。王命だから受けざるを得ないんだけど。

「俺の五年間はなんだったんだろうね?」

「すべてが無駄ということにはならないでしょう。公国でお作りになられたコネクションは王太子となった後でもお役に立たれるかと」

 父王は消去法と言っていたが俺が公国で作ったコネクションも加味したうえで王太子に据えようと考えたのかな? 敵対国である帝国との関係を考えると公国との仲はより親密なものにしたいとお考えになられて……。うーん、政治的な話は難しい。教育らしい教育受けてないからな俺、殆ど自己学習だし。

「ディードリヒ様の立場の弱さを強固にする為に、公爵様、辺境伯様、伯爵様のご令嬢方とご婚約でしたか」

 王太子となる以上、婚約者不在というわけにもいかないので誰かを婚約者として迎えることになるのだが、その白羽の矢が当たったのが、公爵令嬢のシルビア、辺境伯令嬢のアリシア、伯爵令嬢のフィリアの三名。正室にシルビア、側室にアリシア、フィリアを迎えることになる。

「すっごい気が重い……」

 三名とも婚約者を亡くすか、罪人となり廃嫡されたかで辛い立場にいらっしゃる方々だ。そんな三人と婚約を結ぶ……物凄く気が重い。

「ですが三名とも、ここでディードリヒ様と結ばれませんと次の良縁があるとは限りません。シルビア様はともかく、アリシア様とフィリア様は、エドワード様とフィリップ様が起こした醜聞に巻き込まれて縁自体ができるかどうか……」

「あーその可能性もあるのか」

 ゴシップ好きが多く存在する世の中だ。こういった醜聞は尾ひれがついて噂が広まる可能性がある。兄上たちではなく令嬢たちに問題があった……そんな噂が流れると縁に恵まれず、一生未婚のままとなる可能性もある。

「ご令嬢方も複雑な思いはされているかもしれませんが、絶対に嫌ということはないでしょう。今後良き仲となるか悪き仲となるかはディードリヒ様の手腕次第かと」

「簡単に言ってくれるなあ」

「失礼。味方一人いない公国でうまく立ち回って平民貴族は勿論のこと王族とまで交流を持つに至ったディードリヒ様にとっては簡単なことでしたね」

「相手が男ならな。女の相手は大変だったんだよ本当」

 大変だったんだよ本当……。二度言いたくなるぐらいに大変でした。女という生き物は複雑怪奇なのです。とりあえず時間を作ってお三方と交流を重ねていくしかないか。

「むー……」

「おいおい、今日は随分と甘えたがりだな」

 客室のベッドの上に座ったディードリヒの膝にごろんと頭を乗せるレン。立場を考えれば逆であるもののディードリヒはそれを咎めようとはしない。流石に人の目があるところでは絶対に許可しないが。

「侍女とはいえこちらにも女としての意地がありますので」

「はー……だから女の相手は大変なんだよ」

 ディードリヒは膝の上で、構え構えと訴える猫のように甘えるレンの頭を撫でると、彼女は気持ちよさそうに笑みを浮かべながら膝の上で丸くなる。構おうとすればすっと避け、放置すれば構えと訴えてくるレンの態度は犬か猫かと言われれば恐らく猫だろう。

「さて、明日から大変だな」

 まずは三人のご令嬢と交流を持つこと、加えてご令嬢たちの実家である公爵家、辺境伯家、伯爵家への挨拶、さらに他の有力貴族や諸侯とも交流を持ちつつ、王太子として必要な教養も身に着ける……とにかくやるべきことはいくらでもある。

「ま、なんとかなるだろ」

 猫の頭を撫でながらディードリヒは笑う。いつもの口癖を乗せて、今までと同じようになんとかなるだろうと希望をもって。




「あ、ディードリヒ様。帰国することを公国の公女様にお伝えできませんでしたが、大丈夫でしょうか?」

「……やっべえ」

 しばらくして公女様が王国へ訪れて一騒動起きることとなる。当然のことながらディードリヒはそれに巻き込まれてしまうのであった。
執筆練習中。ご意見ご感想よろしくお願い致します。
2017/9/8 冒頭を大幅に修正。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ