罰ゲーム(1/6)縦書き表示RDF


最初の部分に少し12禁要素が含まれています。直接的ではありませんが、少しでも嫌だ、という人は閲覧をお控え下さった方いいかもしれません。カップリングは新一×哀です。
罰ゲーム
作:相楽まゆみ



1・彼の命令は…?


 「灰原、力抜け」
  
 「…いやよ」
 
 「ほら、楽になるぜ?」 

 「あ…だめっ!」

 薄暗がりの中、私たちは彼のベッドの上で《ばばぬき》をしていた。



   *罰ゲーム*

 「灰原ー、暇だろ?トランプやろうぜ」 
 突然、私の部屋に現れた工藤君にそう誘われたのはついさっきのこと。
 
  
 今から4年前。少年探偵団やまわりの理解者との協力で黒の組織を解散させ、私はアポトキシンの対抗薬として成長促成薬を完成させた。
 それを工藤君に服用させ、見事に彼は蘭さんたちと同じ、20歳に戻ることができたのだ。

 しかし私はもう《宮野》には戻りたくなかった。それはお姉ちゃんや、家族との再結を拒む行為なのかもしれない。罪を犯した自分への戒めと説いた、現実からの逃避かもしれない。

 それでも、工藤君はいいと言ってくれた。発明が大当たりして、急遽アメリカへ留学しなければならなくなった博士のかわりに、保護者を務めると言って、ずっと私のそばにいてくれた。

 そんな彼に抱いていた恋心に、気づいたのはいつだろう。

 しかし彼は大学院に通いながら探偵業を始めて、今とても忙しい。なのに時間が合えば、こうして一緒にいようとしていてくれる。それだけで充分じゃないか。これ以上、彼を煩わせてはいけない。

 しかも、自分が薬を開発するのが遅くなったせいで、工藤君への諦めがついた蘭さんは新出先生と関係を作ってしまい、先日とうとう式をあげた。

 それを笑顔で祝福していた彼が、部屋で涙をこぼしていたことを、哀は知っている。

 だから私のこの思いは、心の奥深くに押し込めて、重圧をかけて、二度と上がってこないようにと私は鎖を巻いた。

 灰原哀として、工藤新一のいとことして、同じ屋根の下で暮らすだけの、保護者と被保護者の関係を守り抜こうと決めた。


 「悪いけど忙しいの。日本の中学生って結構大変なんだから。」
 
 特にこれといった用はないけれど、哀は今の《微生物における様々な水中環境での生存率》の研究を早くまとめて、次の《人類遺伝子研究》を始めたいと思っている。

 アポトキシンの対抗薬を作ったからといって哀の科学者魂は衰えることもなく、新一が探偵事務所とおいている阿笠邸の地下室で、週1、2のペースで研究に籠もっていた。

 しかし今度の理由はそれだけでなく、新一の身体を気遣ってのものもある。せっかく早く帰ってこれたのだから、たまにはゆっくり休んで欲しい。

 「いいじゃねぇか。今大学でトランプ使った確率の研究しててさ。みんなとトランプで遊んでたらハマっちまってw」

 子供みたいな、明るい笑顔。探偵をしている時の真剣な表情。このギャップも、哀は好きだと思った。
 
 「……」
 
 「ばばぬきやろーぜ。罰ゲームつけて」
 
 「罰ゲーム?」

 そうvと彼は笑う。

 「負けた方は、勝った方の言うこと聞くんだ。」

 「…‥面白そうね。後で泣いたって知らないわよ?」

 ついさっき、煩わせないと自制したばかりなのは分かっているが、あまりに美味しすぎるそのエサに、少しくらいなら…とその心を無理矢理納得させる。

 「よし、じゃあ決まりだ。ジュース持ってくるから、俺の部屋にあるトランプ切りながら待ってて」

 「分かったわ」

 罰ゲームは何にしよう…とあれこれ考えながら、彼のベッドに腰掛けてトランプを切っていた。
 
 「クッキーもあったから持ってきた」

 しばらくして、それを一つ口にくわえながら足でドアを開けて彼が入ってくる。

 「さて、じゃあやっか」
 
 お盆をサイドテーブルに置いて、彼もベッドに座る。トランプを配り、揃ったカードを抜くと、かなり少ない数になってしまった。

 「……二人でばばぬきってゆうのは失敗だと思うのだけれど」

 「だって、ばばぬき面白いじゃん」

 「ハァ…」
 
 「ほら、じゃんけん…チョキ!っうあ、負けた!」
 
 じゃあ私からね、と一人ショックを受けている彼をよそに、哀はカードを引く。
 
 「3」
 揃ったわよ、とカードを真ん中に捨て、クッキーの方に片手をのばした。

 「くっそう……おっしゃ!7だ!」

 彼もクッキーをまた頬張る。

   これと同じようなことが何度か繰り返された後、とうとう工藤君が1枚、私がジョーカーを持って2枚になった。

 私が持つカードのどちらかはババ。彼の目は真剣だ。

 ふつうのババ抜きなら私もここまで入り込みはしない。負けそうになったらさっさとそれを認めて負け、早く終わらせようとする。

 しかし、今度のは罰ゲーム付きなのだ。自分が勝てば好きなようにできる反面、負ければ彼の好きにされてしまう。今は彼を思う気持ちについては関係なく、長年を一緒に(だいたいは有利な立場で)過ごしてきた彼に負けるのが癪という所だった。
 
 「……」

 「さぁどっち?探偵さん。」
 
 しばらくのどを唸らせて考えていた彼が選んだのは、ばばではない方、ハートの12。
 
 これを取られたら負ける…!

 ふと脳裏をよぎっただけの考えはいつのまにか指先に伝わり、そのトランプを彼が引けないほどに強くつかんでいた。

 「…おい」 
 
 「……」

 「灰原、力抜け」

 「…いやよ」

 「ほら、楽になるぜ?」

 そう言って彼はトランプを強く引っ張る。

 「あ…だめっ!」

 私もそれに対して強く引き戻す。

 「往生際の悪いやつめ。ほらッ」

 「えッ…わ、ちょっとなに…」

 トランプが散らばったベッドの上を、腕に引き寄せられて彼の身体に倒れ込む。

 「ちょっと、いったい何のつもり…」
  
 目がとじられた彼の顔が目の前に迫ってきて、急なことに驚愕して体が動かなかった私に唇を寄せた。

 「ちょっと……工藤君?何したの…?」

 「俺の勝ち」

 「……は?」

 「ほれ」
  
  彼の手が持っているのはハートの12。気づけば私の手にはジョーカーしかなくって。

 「ちゃんと俺の言うこときけよ?」

  彼は卑怯だ。私のこの思いもしらないで。私が心を揺らしたキスも、彼にとっては勝つための手段でしかないのだ。

 もちろん、そんな思いはみじんも表には出さないけれど。
 
 「で…?何をすればいいわけ?」
 
 お、わかってるじゃねーか。と言って意味ありげににやっと笑う。彼に負けるのが癪だとか、悔しいとか、そういうのはもうなにも思わなくなっていた。どうでもいい。早く終わって欲しかった。

 「俺が好きだって言え」
  


 

 

 


作者が多忙なため、更新が週1程度でしかできません(汗 また、初めての投稿なので少しでもご批評下さると嬉しいです(〃∀〃)











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