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天本博士の怪奇な生活
作:坂田火魯志



第三十八話


                 第三十八話  鏡の中へ
「さてと」
 もう鏡の世界に着いてしまった。二人は陸王から降りる。
「ここなんですね」
「うむ、ここじゃ」
 博士は答える。
「見ればわかるじゃろう」
「ええ、確かに」
 そこは左右が逆になっていた。それでどの世界なのかわかったのである。
「鏡の中ですね」
「で、ここにモンスター達がおる」
「左様ですか・・・・・・って」
 言われてようやく気付いた。
「じゃあ危ないじゃないですか」
「スリルがあるぞ」
「いや、そういう問題じゃなくて」
 小田切君は慌てながら言う。
「まずいじゃないですか」
「そうじゃな。もう一体来ておるしな」
「・・・・・・あれですか」
 空から蝙蝠が飛んでくる。オオコウモリのニメートルという甘いものではなく優に十メートルはある。
「どうするんですか、あんなの」
「じゃから心配は無用じゃと」
「あんな戦闘機みたいなの前にしてよくそんなの言えますね」
「これがあるからな」
 取り出したのはそのカードであった。
「これを使えば楽じゃ」
「それで契約するんですか」
「うむ、それでわしは無敵の生物兵器を手に入れるのじゃ」
「・・・・・・無敵の生物兵器ですか」 
 話を聞くだけで嫌になる。この博士がそんなものを開発すればどんなことになるか。考えたくもない。
「何はともあれあの蝙蝠と契約する」
「はあ」
 しかも博士に迷いはない。最悪である。
 だが最悪なのはいつものことだ。といっても慣れるものではないので小田切君も困っているのだ。
「そら」
 カードを掲げる。
「来い、蝙蝠よ」
 こちらにやって来た蝙蝠に対して言う。
「今こそ契約を!契約すれば!」
 さらに言う。
「好きなだけ破壊させてやろうぞ!さあ!」
「ちょっと博士」
 さらりと聞き捨てのならない言葉を言う博士に慌てて声をかける。
「何てこと言うんですか!」
「悪いのか?」
「悪いに決まってるじゃないですか」
 小田切君は必死に抗議をする。
「好きなだけ破壊って」
「無駄な人口は減らせばよい」
「・・・・・・無駄な人口ですか」
「また竹島に鬱陶しいのがいてな」
「で、どうするんですか?」
「この前ミサイル撃ってくれたからな。報復にモンスターを使うまでよ」
「・・・・・・あのですね」
 小田切君は真っ青な顔で博士に言う。
「この前危うく日韓戦争起こしかけましたね」
「うむ」
 しれっとして反省した様子なぞ微塵もない。これが凄い。
「それでまたですか」
「安心せい、戦争にはならんよ」
「そう言える根拠は?」
「その前に韓国が潰れるからじゃ。日本が国交断絶するだけでな」
「そりゃまあそうですが」
「じゃから心配無用、では行くぞ」
 何の憂いもなくモンスターと契約に入った。こうして幸先よく一体のモンスターとの契約に成功したのであった。


第三十八話   完


                 2006・11・28







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