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天本博士の怪奇な生活
作:坂田火魯志



第二十七話


                第二十七話  農薬開発
 博士の趣味はとにかく発明である。それに対する情熱は留まるところを知らない。
 今日も今日とて発明に没頭している。何やら薬を開発していた。
「よし、出来たぞ!」
 えげつない黄色の液体を見て満面の笑みを浮かべている。
「今度は何を発明したんですか?」
「農薬じゃ」
「本当に農薬ですか?」
「いきなり無礼なことを言うな」
「まあ気にしないで下さい」
 小田切君はしれっとした様子で返す。
「これで人類は救われる」
「また滅亡へのカウントダウンが近くなるのですか」
「違うわ。これでな」
「ええ」
「あらゆる害虫が退治されるのじゃ」
「害虫がですか」
「うむ、これで虫の害はなくなる」
 博士は胸をふんぞり返らせて言う。
「確実にな」
「確実に、ですか」
「何故かわかるか?」
「サリンの何百倍の毒素なんですか、その農薬」
「甘いな、最早毒素なぞはない」
「じゃあ一体」
「腐○を使っておる」
「腐○ってまさか」
「左様、水も何もかも奇麗にしてくれる。この世の中すら浄化してくれるのじゃ。まさしく神の発明、わしは今遂に神になったのじゃ!」
「・・・・・・あの、博士」
 小田切君は青い顔でそれに突っ込みを入れる。
「腐○になるんですよね、その黄色い液体」
「左様」
「左様って」
「それがどうかしたのか?」
「○海って放射能ありますよ」
「知っておる」
「じゃあ駄目じゃないですか」
「ついでに無駄な人間も減らすのじゃ」
 どうしても話がそういったクレージーな方向に行ってしまうのは何故だろうか。もう小田切君も訳がわからなくなってきていた。段々疲れが見える。しかし言う。
「・・・・・・あの、そんなのしたらメンゲレみたいに言われますよ」
「あんな小者と一緒にするな」
 ナチス=ドイツにおいて死の天使や悪魔博士と言われた狂気の科学者である。彼の人体実験により多くのユダヤ人達が犠牲になったと言われている。博士にとってはその彼でさえ小者であった。
「何、ちょっと十億程始末すればだな」
「駄目です」
「何、これもまた人類の為じゃぞ」
「すぐに焼却して下さい!大量殺戮者として歴史に名を残したいのですか!」
「無駄な人口は減らさねばならん!」
「貴方はギ○ン=ザ○ですか!」
「ジーク○○ン!」
 こうしてまずは腐○は小田切君によって無理矢理処分させられた。だが博士の狂気はさらなる恐ろしい農薬か何かわからないものを開発していくのであった。
「そもそも腐○って農薬なんですか?」
「わしの天才が農薬にした」
「そうなんですか」
 あまり原理がわからない博士のコメントであった。


第二十七話   完


                2006・10・18







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