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派遣社員だが会社のしょぼい権力闘争に巻き込まれた話

作者:野人
 私の昔働いていた派遣先の会社は社員300名、年商300億ぐらいの地元では有名な大型機械を作っている工場だ。
 労働組合の力が強いらしくこまめな休憩があり残業がある時はただでおにぎりかパンが配られる。
 仕事はキツイが働く環境は悪くない。

 私は無知なので、この会社に来るまで労働組合がデモ行進なんて事をこの平成の時代にやっているなど全く知らなかった。
 どのぐらい無知かというと「春闘ベア」というポスターを工場内のそこらじゅうで見かけた時、春に冬眠から覚めたベアに命がけで挑むワイルドな祭りかと思ったほどだ。
 春の新年度に向けてベースアップ、つまり基本給を上げるための戦いという意味だったらしい。
 デモ行進の人数が欲しいからと派遣社員にも参加してくれないかと打診が来たことがある。
 私以外の派遣社員は立場が弱いからなのか媚を売って正社員を狙っているのか分からないが参加すると言っていた。
 私はおっさんだし資格もないので首になるなら私からだろうと思い媚を売る必要もないので断ろうと思った。
 普通に断ると角が立つと思いモノマネで少しふざけながら断ろうと思った。
 得意のミナミの帝王の萬田はんのモノマネをしながら「ワシには関係ないこっちゃい」と言って竹○力の変顔をマネた。
 友人達には馬鹿受けなので笑ってくれると思ったのだが引きつった顔のまま何処かに行ってしまった、私はやらかしたらしい。
 話がそれたが私の働いていた派遣先の会社は労働組合の活動が活発で力が強いと言う事を伝えたかったのだ。

 私の派遣先は流れ作業で大型機械を製作しており製作ラインが3本ある、私は3本目の3班に所属している。
 春に現場を学ぶ為に社長の息子が3班に配属された。
 3班の班長と社長の息子の権力闘争の始まりだ。
 この会社で出世するには2つのコースがある。
 労働組合のデモや有名政治家の選挙時に票の取りまとめやボランティアを積極的に参加して出世するコース。
 経営者一族に気に入られて出世するコース。
 班長は3人いる班長の中では1番若く労働組合の活動などを熱心にやって出世したケースだ。
 班長派閥は年齢層の高いベテラン工員達の多い派閥。
 社長の息子派閥は若い工員たちの多い派閥。
 若い人たちは組合活動なんてめんどくさいから社長の息子に媚売って気楽に出世とか思っているのだろう。
 私はしがない派遣社員なので関係なく平和に過ごしていた。
 ところが、この平和がおびやかされたのだ。
 社長の息子と班長がやたらと私に絡んできて、お互い違う指示を出してくる。
 私は混乱して作業が遅れてしまい怒られてしまう、いい迷惑である。
 何でやたらと絡んでくるんだろう、新手のいじめかな? ストレスが溜まり会社を辞めようか迷った。

 突然だが私は前の会社ではボッチだった。
 休憩時間になると私以外全員が喫煙スペースに行く。
 決まりで禁煙スペースを設けているが私以外ほぼ全員が喫煙者なのだ。
 喫煙しない人も、人が集まる喫煙スペースに行くので禁煙スペースは私以外誰もいなくなるのだ。
 昼休みも派遣社員は派遣社員で固めて席が用意されるのだが仕事がキツイため人の入れ替えが激しくすぐ知らない人になるので仲良くならない。
 私は平日は数年間、朝と昼は同じメニューで過ごしている、毎回同じ物を食べているので不気味がられているのかもしれない。
 ちなみに昼のメニューはサラダ、鳥胸肉、魚肉ソーセージ、おにぎり半分、プロテイン、豆乳である。
 私以外は愛妻弁当か仕出し屋の400円弁当を食べている。
 10分で食事を終え、なろう作品などを読んで時間を潰している。
 飲みに誘われたり会社の飲み会も全部断っている。
 私はお酒の味が苦手なのだ、超お子様味覚なのである。
 ビールなんて苦くて飲めない、メロンソーダこそ至高である。
 また話がそれた、僕の悪い癖(相棒の右○さん風)
 社員の人も仕事の指示以外は私としゃべらず必要最低限の会話しかしていない。
 静かで非常に過ごし易い、良い職場だった。
 しかし、班長と馬鹿息子いや、社長の息子が絡んできて私の平穏が脅かされたのだ。
 理由が分からず悩んでいると休憩時間中に唯一私に話しかけてくるおっちゃんから真相を聞かされた。

 話がそれるがおっちゃんについて説明しよう。
 誰も興味ないと思うが読んでいただけると嬉しい。
 おっちゃんは世間一般で言う所の負け組み、もしくは負け犬である。
 定年間近で平社員、結婚もしておらず給料日に行く風俗と競馬とパチンコだけを楽しみに生きている。
 会社でも浮いた存在だ。
 経営者一族に媚も売らず、組合活動もせず、ただひたすら機械だけを作ってきた。
 その作業は早く正確でまさに熟練工といった風格を感じさせる。
 負け犬と陰口を叩かれているが私やどこぞの政治家よりよっぽど立派である。
 そのおっちゃんがなぜ私が権力闘争に巻き込まれたのか教えてくれた。

 どうやら私は若い工員を中心に恐れられているらしい。
 全く身に覚えがないどういう事なのだろう。
 混乱しているとおっちゃんが教えてくれた。

 ヒゲに長髪でガラ悪い「私以外にも長髪はいるしヒゲはたくさんいるよ」
 目つきが悪い「生まれつきだよ、私だって二重のパッチリおめめに生まれたかったよ」
 ガタイが良い「筋肉はあるけど身長普通だし私よりゴリゴリなのいっぱいこの会社にいるよ」
 拳ダコがある「長年空手をやっている物で」
 かたくなにお酒を飲まない、酒関係で何か事件を起こしたに違いない「言いがかりレベルの妄想だよ」
 寡黙で毎回、同じ食事、修行僧の様な行動は被害者への懺悔なのか「これ噂にしたやつ小説書けるレベルの妄想力だよ」
 おっさんなのに妙に整理整頓がうまく作業服がいつも綺麗、刑務所での規則正しい行動が身に付いてるに違いない「空手師範の指導のおかげだよ」
 以上の事を統合してヤバイやつ、もしくは前科者だと思われたらしい。
 突っ込みで疲れるレベルの妄想が噂としてまことしやかに語られているのだ。
 禁煙スペースで一人なのって避けられてたのね、初めて知った驚愕の事実、まぁ静かだからこのままのほうがいいけど。
 それがなぜ権力闘争に係わってくるのかさっぱり理解できない。
 おっちゃんが言うには私は仕事はまじめだから首にするほどではないが社員が持て余している。
 その存在を完璧に支配下に置ければ私にビビッているらしい若い工員達へのアピールになると考えたらしい。
 なにその猛獣ポジション、変な噂真に受けてどっちが猛獣ティムするか競ってるのね。
 お互い違う指示を出したのはどっちの言うことを優先するかを回りにアピールしてたらしい。
 屋上へ行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…と言いながら金○郎みたいに二人をボコボコにしたかったのだが私はしがない派遣社員である。
 困った私は逆にこの噂を利用して平穏を取り戻す事に決めた。
 ターゲットは社長の息子あらため馬鹿息子に決めた、一応直属の上司は班長だからね。

 更衣室で急に壁を殴ったりしてヤバイやつという噂を加速させていった。
 私が最近、馬鹿息子にイラついてて馬鹿息子をる気だ、という噂をおっちゃんに流してもらった。
 そして馬鹿息子が班長の指示と違うことを私に言ってくるたび無言でジーっと馬鹿息子を睨む事にしたのだ。
 しばらくすると馬鹿息子は私に目も合わせなくなった。
 おっさんになってこんなDQNみたいなマネをするハメになって死ぬほど憂鬱である。
 もう少しスマートに解決できればよかったのだが低学歴の脳筋にはこれが精一杯である。
 もしかしたらストレスが溜まりすぎておかしくなっていたのかもしれない。
 首になってもいいやと思ってやったのだが何も言われなかった。
 やっと私の愛する静寂が戻ってきたのである。

 その一年後ぐらいに一時的に工場の仕事が減り契約を解除された。
 派遣会社の私の担当の人が「野人さんは評判よかったので向こうの人も残念だって言ってました」と言っていた。
 脳筋の私でもわかる絶対に嘘だ。
 今の職場では休憩になるたびパートのオバっと、お姉さん達がお菓子で私を餌付けしてくる。
 最近体重がやばい、あの職場の静寂が私は恋しい。
 誰もいない休憩所で機械油の匂いを嗅ぎながら小説を読む。
 キツイ仕事だったがあの静寂はとても好きだった。

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