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放課後
作:みゅこと





ぽつ ぽつ、
窓の外を見ると雨が降り出してきた。
朝からどんよりと曇り空だった。教室の中は少し薄暗いのだろう電気が点いている。
ぼんやりと窓の外の雨音に耳を傾けていると、心の中のもやもやした物が流されるようだ。
「なあ、寝てんの?」
いつの間にか目を閉じていたのだろう、ふっと瞼をあげると切れ長の瞳を人懐っこそうに細めた幼馴染の顔があった。
「いや・・・。」
思わず目を逸らしてしまう。
「あいつ、知らね?」
「さあ。」
「相変わらずそっけないなー。」
彼は目の前の席に腰をかけると長い脚をぶらつかせている。

教室はまだ授業が始まるには間があるからだろうか、ざわざわ、とあちこちで話し声がしていた。
「・・・・なんかあいつ変じゃね?」
突然真剣な表情になり、こちらを見据える。
「そう・・・・かな。」
私は無表情でその視線を受け止める。
「なんか言ってなかった?怒ってるような感じじゃないんだけどさ。・・・俺なんかしたかなあ。」
ぶつぶつと言いながら悩んでいる様子の幼馴染を見て少々胸が痛んだ。


あの----放課後での一件以来、自分も頭を悩ませていた。
彼女がどういうつもりで自分にキスをしたのか、ただの気まぐれだったのか。
あれ以来特に変わった態度も見られず、向こうも何事もなかったように接してくるので、あの時のあれは夢だったんじゃないかと忘れそうになる。
いや、忘れるように努めようとしているのだが、なかなか頭から離れずにもやもやとしていたのだ。

「俺、あいつにはっきり言おうと思う。」
彼は思いつめた表情をして机の一点を見ていた。
「・・・・・そう。」
呟いて、心臓がきゅっ、と掴まれたような感覚を覚える。
「泣かしたら殴るぞ。」
自分はうまく笑顔がつくれてるだろうか。
「まだ、付き合うって決まったわけじゃねーよ。」
言いながら、彼の顔には余裕が見て取れた。

周りの生徒の殆どが彼女とこいつは付き合っていると思っているようだ。
実際彼女は噂された時も否定するでもなく、笑顔で受け流していたものだ。
二人並んだ姿はまさしく美男美女。 幼馴染は少々やんちゃだが、人懐っこさと愛嬌のよさで男子生徒にも女生徒にも人気がある。
彼女はしっかり者でクラス委員などにも選ばれる程皆の信頼を得ている。

「じゃあ、今日はそういうことでよろしくな。」
いつも時間が合うときは3人で帰っているのだ。
「分かった。」
答えて、彼が軽い足取りで教室を出ていく後ろ姿をじっと、眺めていた。

雨の音が更に強まったように聞こえてきた。




「雨強くなってきたね。」

朝から降りだした雨は、午後の授業が終わった時には周りの景色が見えなくなるほど強くなっていた。
「うん。」
頷いて桃子はパンをかじった。
いつも自分でお弁当をつめるのだが、昨日は帰ってそのまま眠ってしまったので購買でメロンパンとクリームパンを買ってきたのだ。
真奈美は机に小ぶりのお弁当を広げて卵焼きを口に運んでいる。
「災難だったね。」
ちらり、と桃子の様子を窺うように言う。
「まあ、私もうかつだった。」
桃子は口をもぐもぐと動かし眉間に皺を寄せた。

あの後、---------小沢と相々傘で登校した桃子は、その場に居合わせた生徒の注目を浴びてしまったのだ。
小沢は結構モテル男子であったのだ。
学校に着いた後、さっそく3年の女子の先輩に呼び出しをくらった。
-----こんな少女マンガみたいなことが桃子の身に起こった事に驚き、少しだけ興味が湧いて足を運んだのだが。

和くんとはどういう関係か、とか 抜けがけするなだとか。
くだらない事を言われた気がする。(それよりも、濃い化粧と改造制服に気を取られていたので上の空だったのだ。)
桃子はめんどくさくなって「あなたたちには関係ない。」的な事を言って早々と退散した。

もしこれが真奈美だったら、と思うとぞっとした。
あんなコギャル風女子が周りを固めてわいわい言おうものなら、真奈美は小さくなって大層怖い思いをするだろう。
(やっぱり和樹には真奈美はもったいない。)
桃子はいちご牛乳をごくごく飲みながら真奈美を見た。

「でも、無茶しないでね。」
と心配そうに桃子を見つめている。
「うん。気をつける。」
桃子がクリームパンの袋に手を伸ばした時、「今朝はどうも。」
と、当の小沢がひょっこりとやってきた。

今日は、その能天気そうな顔を見ると無償に腹立たしくなる。
同じクラスなので、桃子が呼び出されたという事は本人の耳にも入ってるはずだ。
-------まあ、その時には彼は丁度いなかったのだが。--------

「何?」
思わず剣のある声になってしまった。
「あの、いやあ。大丈夫かなと思って。」
小沢はちょっとたじろいだ。
桃子はじとっと小沢を眺めていたが、一つ大きなため息をついた。
「・・・。まあ、あんたも大変ね。」
(あんなお姉さま方から動物園のパンダみたいに扱われて。)
「ああ・・・・。まさかそんな事になるなんて。」
小沢は多少罪悪感を感じてるようだった。
少し考えている様子だったが、ちらりと真奈美の方を見る。

「何見てんのよ。」
桃子はすかさず指摘する。
「あ?いや別に。」
小沢はあらぬ方向を見ながら額をかいている。
恐らく、真奈美に告白などしたらどうなるのだろうと心配したのであろう。
彼は私の机の横にぶら下がっている折りたたみ傘に気がつくと、「まだ返してなかったんだ。」と、話題を変えた。
「うん。忙しかったからね。」
桃子は横目でちらりと彼を見て、最後の一切れを口に放り込んだ。

「じゃ、私は先生にこれ返してくるね。」と立ち上がる。
真奈美はあの意味深な笑顔を浮かべて「いってらっしゃい。」と言い。
小沢は邪魔者がいなくなるので、あからさまに ぱっ と顔を輝かせて「気をつけてな。」等とよく分らないエールを送られた。

窓の外の雨は先程より柔らかくなったようだった・・・・・・。














スローペースで、文章もつたないですがよろしくどうぞ。











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