僕はニワトリだ。
昔はもう少し小屋にいたけど今は僕と残りの2匹だけだ。
うん。大人な事情でね・・・。
僕たちを育てる主人になったとでも言おうか・・・。
ここで生まれた可愛い卵ちゃんたちと一緒に主人のあのお肉になったわけだよ。
または消費者の・・・・。
とにかくそんなわけでこの狭い小屋には僕と、名無しの(僕も名無しだけど)ニワトリ2匹だけだよ。
僕をぬかせば二羽。ニワトリが二羽。
・・・・
ごめん忘れて。
まあそんな訳で、明日は僕たちが密かにコツコツ計画してきた事を実行する日。
僕たちだってこんな狭い部屋で朝も昼も夜もずっと餌ついばんで食べら・・・主人たちのために太るなんてうんざりだからね。
だから計画した。
脱走計画を。
「鳥は3歩歩きゃさっきの事だって忘れる。」なんて言うけど嘘だからね。
それだったら十二支に入れないから。
十二支は鳥って言うけど十二支の鳥って言ったら真っ先にニワトリ思い出すでしょ。
会場に辿り着くまでに何しに来たか忘れるからね。三歩で忘れるなら。
とにかく脱走計画はこんな感じだ。
餌入れを一番端(一番遠いところ)に置く。
「あれ?遠い」みたいなことを思ってる隙に逃げ出す。
捕まえられそうになったら蹴るか噛む、または羽をバタつかせる。
出口付近に、というか出口から離れない。
捕まったら・・・・。その時はその時だな・・・。うん。
≪腹が減っては戦はできぬ≫
小腹が空いていたのでとりあえず腹いっぱいになるまで食べて、明日に備えまだ夕方だが眠った。
まあニワトリだから遅く寝ても寝坊しないけどね。
**朝**
僕たちはとりあえず計画成功を祈って、張り切って朝一番の声を出した。
失敗は決して許されない―
主人が餌を換えにくるのは日が昇って数分たったころ。
まだ暗いが、山脈の向こうが赤く染まる。
朝陽だった。
ついに自由になれるという期待と、作戦失敗の可能性の不安が入り混じる。
羽を動かし、走り回ったり、準備運動をした。
日はもう辺りを明るく照らし、主人がそろそろ来る頃だった。
皆が出口付近にスタンバイする。
ぐうっと羽を伸ばし、息をつく。
その時、遠くから何か歩いてくる音がした。
それこそ主人の足音。
次第に緊張がマックスへ近づき、体がぶるぶる震えだした。
ついに扉に手をかけ、かちゃかちゃと鍵を開けはじめる。
ガキンッ
鍵の開く音がし、扉が軋みながら開く。
主人は餌入れに注目し、なにか一言呟いてから僕たちに背を向けしゃがみこんだ。
・・・・今だ!!!!
出るところは物音を立てずに行ったが、出た後は羽をバタつかせ、本気で走った。
皆も走り始めている。
よし、作戦成功だ!!
主人が追っかけてきた。
怖くて怖くて、とにかく無我夢中で走る。
バタバタとニワトリの羽音、ギャーギャーと主人の叫び
いつしかその主人の声も聞こえなくなった頃、僕たちは足を止めた。
走り終わって、僕の心は幸せで一杯になっていた。
初めてこんな走った。初めて息切れをした。初めて外の世界をみた。
こんな気持ちもたくさんあふれていた。
飛ぼうと思って逃げた時のように再度羽をバタつかせ、ジャンプをする。
あ・・・僕はちょっと忘れていた。
僕はニワトリだ。飛べるわけない・・。
でもいつか飛んで見せようじゃないか。
僕たちは気高きニワトリなのだから。
空飛ぶスズメたちを遠くに見、僕はそう心の中で叫んだ。
ニワトリの宿命*END* |