NeёёеD!!縦書き表示RDF


この作品は『方言企画』参加作品です。わかりにくい方言はあとがきに訳を書いております。『方言』で検索されると、他の作者方の作品も読めます。
NeёёеD!!
作:μκι


綺麗に澄んだ青い空、形の整った白い雲。
まさに俺を祝福するかのような天候や!

俺は遠村 (とおむら せい)。名前は女みたいやけどバリバリの男やで!

そんでこの天候が俺を祝福してくれてる理由は――。

――初仕事!

……え?何の仕事かって?

……ま、それはおいとけ。

ところで、今宮崎通りっちゅう通りを歩いとるんやけど……。

なぜか通る人っちゅう人が俺を一度見て振り返んねんなぁ。俺の顔に……見とれてんか!?

さて、それはおいといて。この通りを通って……次の角を左へ曲がったら――

「あった……って……でかっ!」

そこにいきなり現れた超巨大な建造物は、まさに豪邸という言葉がぴったりやった。
圧巻の一言や。

そやけど何かおかしい……。なんやろ……。そうや! 何かおかしいと思たら、これお城やん。

あ、てっぺんに金ピカのシャチホコ乗っとる。
……何時代のつもりやねん。
つーかどうやって入るんや……あ、インターホンついとる。

ぴんぽーん。

すごい威厳があって、歴史あるお城っぽい建造物の前でインターホンを押した自分に虚しくなったわ。

「はーい」

「あ、介護の件で来たんですが」

「そうですか〜。どうぞ」

女の子の声だ。

え? 『介護の件』ってどういうことかって?

まぁ……俺の初仕事っちゅうことや。

女みてーやと? ええやろ! 人の勝手やろ!

ふと見ると、門が開いとる。

自動かよ!

一人でツッコミを入れた後、中に入っていく。

敷地に入って見ると、どうやら歴史建造物っぽいのは城だけらしいわ。敷地内には大きな庭が広がり、なんとプールまでありよる。

「でっけ……」

ぼけっとしとったら、城のドアが自動的に開いた。

やっぱり自動ドアかよ!

そうツッコミをしたんやけど、ちゃうかったらしいわ。
ドアの影には、もじもじとする女の子が。

「い、いらっしゃい……ませ」

ぎこちなくそう言うとまた体を隠して顔だけを出しとる。

き、きゃわいい!

理想のタイプや!

仕事先での偶然の出会い!

これは運命!そう運命や!

頭の中で妄想劇を繰り広げとると、不意にあの子が話した。

「あの……その……」

なんや気まずそうやな。

「なんでしょう?」

笑顔で優しく語りかける。
すると、あの子は意を決したように言うた。

「……チャック……開いてますよ」

……ん?
俺は恐る恐る下を見る。
全開やった。
心地よい風が途端に俺を攻撃する冷気に感じられたわ。

「……は、ははは」

あくまでも笑顔を振り撒きながら……

ジー……。

チャックを閉める。
そうか。道行く人が俺を一度見て振り返ったのは、これやったんかぁ。

あれ、なんだか目頭が熱く……

「あの……ど、どうぞお入り下さい」

俺は促されてやっと中に入る。

その城は、とてつもなかった。

外見は確かに城だが、床はフローリング。部屋とかはフツーのドアやし。エアコンもついてるみたいや。

「あ、あの……変な家でしょう? お爺様の趣味で……」

お爺様、か。これから俺が介護する人やな。……変な人。

物珍しそうに周りを見ながら歩いとると、前は行き止まりになった。

「ちょっと時間かかります」

そう言われて待っていると、不意にチーンという音がした。

「へ?」

「来ました」

そう言った途端に、前の壁は真ん中から2つに別れて、そこに空間が現れよった。

……とまぁ大げさに言ってみたけど、簡単に言えばエレベーターや。

エレベーター!?

まぁ、こんなに大きい城だったらエレベーターも必要やわな……。

そう自分で納得して入ると、ボタンの数に驚いた。



開 閉

……少なっ!!!

エレベーターいらんやろ!

「あの……ここ、こんなに大きいのに2階までしかないんですか?」

ホンマに標準て堅苦しいなぁ……とか思いながらそう聞くと、苦笑いして答えてくれた。

「いえ……。もっとあるのです。ですがお爺様がエレベーターを付けたがり、付けたものの、予算が足りずに2階までとなってしまって……」

エレベーターいるってことは、お爺様って足腰弱いんかいな?……こりゃ介護も大変やな。

チーン。

すぐに2階に着いた。
エレベーターから出ると、ここもやはりフローリング……。

「こちらです」

そう言われて行くと、1つの部屋の前で立ち止まる。

「この部屋でお爺様がお待ちです」

……さすがに緊張するわ。
まずノックをする。

「失礼します」

そう言って入ったら、部屋は広うて、大きな本棚やテーブルとかが置いたある。
そんでベッドを見ると……お爺様らしき人が横になっとる。
点滴を打ってて、心拍数を測る機械も設置されてる。

お爺様はぐっすりと深い、深い眠りについてる。

鮮血でベッドを赤く染めて。

「ギャアアアアア!」

まさかのミステリー突入かいな!?

「もう……お爺様」

なぜかあの子は冷静でやし。

「ダメでしょう。トマトジュースこぼしちゃ」

……あれ?この子なんやおかしなことを。

「あの……失礼ですが、それ、血でしょう?」

「あはは。違いますよ〜。これはトマトジュースです。お爺様お茶目だから」

そう言ってお爺様の頭を……

ビシッ!

「うっ」

悲鳴とともに起き上がったお爺様は、苦しそうに言うた。

「よ……よく来なさった」

呼吸は荒い。いかにもしんどそうや。

やけどあの子まだ落ち着いてるし。
「ハァ……ハァ……後は……頼んだ」

そう言ったお爺様は……ばたり。

おかしー!絶対おかしいやろ!
後は頼んだって何や!?いきなり現れた男に頼むはずないやろ!

でも……心拍停止してるわ〜。



……え!!!

さすがにこれはヤバいやろ!

そう思った俺は急いでお爺様に近づく。

その瞬間やった――。

ブッ!

口から鮮血、もといトマトジュースを勢いよく吹き出したお爺様は、俺の顔を真っ赤に染めた。

「ギャアアアアア!目が……目がぁ!痛いっちゅうねん!」

「わっはっは!若造が!」

めちゃめちゃ元気そうなお爺様は腹を抱えて笑っとる。

「だから言いましたのに……」

く、くそ……

トマトジュースを拭き取ると、またベッドの向かいに立つ。

「挨拶はこれくらいにして……自己紹介と洒落込みましょうか」

全然洒落とらんわ。

「ささ、どうぞどうぞ」

促されて紹介。

「ええと、私、今度ここに介護で来ました、遠村 星と申します。なにとぞ、よろしくおねが……」

そこまで言うたところで、またしてもトマトジュースもといトマトが飛んできよった。

バコッ。

顔面ヒット♪

「ギャアアアアア!目が!目がァ……」

目に入る度に痛いし。

「介護だと!悠奈!介護はいらないと言っただろう」

「いえ……私が学校に行っている間を任せようと」

「ふん……わし一人で十分じゃ」

「そんな事言って!前に一人だった時泣いてたくせに!」

「う、うるさい。あの時はアル〇ゲドン見てたんじゃ」

「何言ってんのよ。アルマ〇ドン見たことないって言ってたでしょ」

「あ、いや違った。ポケ〇ン見てたんじゃ」

「ポ〇モンで泣いてどうすんだぁぁぁ!」

ああ……なんかあの子のイメージが崩れてきたわ……。

「とにかく、介護はしていただきます。で、自己紹介の続きですが……」

そこまで言うたところで、今度は彼女の方にトマトが飛んできよった。じいさん孫を大切にしーや。

「危な……」

そう言った後、自分の目を疑ったわ。
彼女は……彼女は……かわしたんや。完璧に。ヤツは通常の3倍のスピードで動いとる!
トマトは音をたてて壁に張り付いた。壁が赤く染まる。

彼女は当たり前のように話を続ける。

「えー、私が前川 悠奈(まえかわ ゆうな)です。大学生です。お爺様は前川 銀蔵(まえかわ ぎんぞう)です。よろしくお願いいたします」

丁寧にそれでいて簡潔に自己(他己)紹介を済ます。
「えっと私……これから友達と約束があるので……。後はお願いしますね♪」

そういうと足早に部屋を出ていきよった。

……気まずっ!

この空気……どうにかしてぇな!

前川さんは俺を物凄い形相で睨んでるし。

シーン…………

かなりの沈黙。

俺はその重圧に耐えれんくなって、口を開いた。

「あの……いいお天気ですね」

返事の代わりに、トマトが飛んできよった。

ボコッ。

「うぎゃあああああ!目がァ!」

や…やばい。トマトはやばいわ。

そ、そうや。この人きっとトマト好きやから俺にもトマトを食べさせようとしとるんや!

「トマトっておいしいですよねぇ」

ヒュンヒュンヒュン。

3つのトマトが飛んできた。

ドコッ。ボコッ。ズコッ。

「うぎゃああああああああ! 目がァ! 鼻がァ! 耳がァ!あんさん何しよるんや!」

プルプルと小刻みに震える俺を見て前川さんは笑っとる。

「若造よ。わしはお前を気に入ったぞ。これまで2、3度介護を雇ったが、みんなトマトを1発喰らって逃げたわい」

なるほどな。こんなでかい城で他に人がいないのはトマトのせいなんか。

「じゃが、お前さんは耐えている。というわけでな、お前さんに1つの試験みたいなものを与える。それに合格すれば、介護人として雇ってやろう」

「あ、いや、もう……」

ハッキリ言ってここでは仕事をしとうなかった。
こんなトマトじじいの世話をするなんて絶対嫌や!

「遠慮はいらん。では試験を与える。試験は……トマト早食い競争じゃ!」

ト、トマト早食い競争やと!?

どんだけトマトにこだわのやぁぁぁ!

……あれ?ていうか競争って誰とや?
「もちろん、わしと勝負じゃ!」

ええ!?じいさん歯ぁないやろ!

「あの……食べれるんですか?」

「心配はいらん。ちなみに、数は30個じゃぞ」

トマト30個か……

「負けた方はトマトを一生食べないこと」

いらねー!何だその条件!トマトずくしやん!

「よし……いくぞ。よーい……ドン!」

結局、じいさんの強引なスタートで始まってもうた。しゃーない。ここまで来たら負けれんやろ。開始と同時に俺は2つを口に含む。
幸先いいスタートや!

んで……じいさんは……

「ふんっ! ふんっ!」

手でトマト潰しとるー!!!

そしてそれを飲む。

アリか!?アリなんか!?

うざったいが確実にじいさんの方が早い。やばい、このままじゃあ……。

しゃーない。

俺も同じ土俵で勝負に出る。

グシャ!ぐしゃ!愚者!

潰して飲む。潰して飲む。

それを見て焦ったんか、じいさんは喉に詰まらせよった。

いつもなら助ける俺やけど、今は勝負や!

潰して飲む……潰して……ん?

じいさんの様子がおかしい。

「ぐ……ぐふ」

すんごい苦しそうや……。

さすがにこれは助けんとあかんやろ!

「大丈夫かいな? 詰まっとるんけ?」

苦しそうに頷いた。もう標準語を使ってる場合ちゃうわ!

よし……。そんならテレビでやっとったええ方法を……。

俺は勝手に押入れを開けて掃除機を取り出す。

じいさんの口にセットして……

スターット!

ギュウイイイン!

勢いよく動き出した掃除機によって吸い込まれる老人。

すんごく残酷やったわ……。

やけどこのじいさんやったら笑える。

しばらくすると、コポッみたいなキュポッみたいなクプッみたいな……まぁそういう部類の音がして抜いてみると、掃除機の先端にトマトがへばりついとった。

「ハァ……ハァ……よくやった……だが掃除機はオボロロロロロ」

途中からゲロになったし。
※残酷な描写が含まれてました。すみません。

なんて冗談言っとる場合ちゃうな。

一応救急車呼んどくか。しんどそうやし。

ピポパ。

プルル……プルル……

「あ、もしもし。老人がしんどそうなんです。トマトが原因で……あ、名前がトマトじゃありません。食べ物ですよ。いや、食中毒じゃないですよ。とにかく来て下さいよ」

強引に電話を切ると、住所を言うのを忘れたことに気づいた。来れるわけないわな。電話をかけ直そうとしたら、じいさんが変なこと言っとるのに気づいた。

「そ……そう……じゃ……きゅ」

意味のわからん言葉を言っとる。
ほっといたらヤバいか思うて見とったらインターホンが鳴った。

……あれ?どうやって来たんや?
住所言うてないのに……

とにかく出る。

「ハイ」

「お届け参りましたぁ!『ピザだよ? ピッツァとかかっこつけてるヤツには食わしてやんねーよー。ピザ』です」

名前長いわ! んでイヤやわ!

「じいさん……」

後ろを見るとすでにいない。

「待ってましたぁ!」

元気なじいさんは階段を駆け降りていきおった。
そのまま天国への階段を駆け上ってまえ。

しばらくすると、部屋の電話が鳴った。

「もしもし」

出ると、予想通りじいさん。

「金持ってこい。気が利かないヤツだな」

うぜー! まぁ……我慢しといたろ。
財布を持って降りると、じいさんがピザ屋と話しとった。

世間話でもしとるんやろ。

「やっと来たか。ホレ。払え」

「はいはい……」

金を払う。

「ええと、トマトピッツァ・Mが一枚。トマッティピッツァ・Sが一枚、トメィトゥピッツァ・Lが一枚。合計五十万八千五百円でございます」

「はいはい……」

……ん?

なんやおかしい気いしたけど……まぁええか。

俺は財布から一万円札を50枚取り出す。

………………

…………

……

「んな高いわけあるかぁ! ボケェ! ちゅうかアンタ、ピッツァ言うなや! ピザって言わんかい!」

イラつくわぁ。この街変なヤツ多いねん。ちゅうかこのじいさん金持ちやなぁ。こりゃ給料も期待出来るかもなぁ……。

「おおっと。これは失礼。ピッツァ三枚で五千八百五十円でした」

ピッツァ……ムカつくわぁ。こうなったら……

「どうも、ありがとうございます。ピッツァ三枚確かに受け取りました」

「ピッツァって言わないで下さい」

俺を見下ろすように言いやがる。

……

「ぶっ……殺したる!!!」

やけど飛びついた時にはすでに逃げとった……逃げ足は速いんかい。

ったく……まぁほっとけばええわ。

「おい、じいさ……」

おらん。どこにも。

ふと上を見たら、ニヤニヤしながらピッツァ……ちゃう、ピザ食うて見下ろしとるヤツがおる。

「ジジイィィィ!」

俺は城に入って、階段を五段飛ばしで駆け上る。

やっと二階。廊下を走って……
ジジイの部屋のドアを蹴り開ける。

「オラァァァ! ジジイィィィ!」

そう言って中に入った途端。

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

トメィトゥが……



――――――

「う、うう……」

なんやぼーっとしよる。横になっとるんかな。
そうや、俺……トマトが顔に当たってやなー。
んで……

うーん……

記憶がないわ。

ちゅうかここどこや?……動けん。金縛りっちゅうヤツか?

そやけど……見慣れん場所やのー。

ふと周りを見ると……

ト、ト、トメィトゥズ!

そのトマトには足が生えとって手が生えとって……

俺に近づいてきよる!

いや怖い! 怖いてホンマに!

もう大人になった男がトマトに怯えるっちゅうのは滑稽やけど……

ホンマに怖い!

そんな事言うてる間にもトマトが……

あ、来やん(こやん)といて! やめ……やめてホンマに!
そこらのホラー映画よかずっと怖い!

ああ……もう目の前に……

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

自然と言ってしもうた。
そやけど止まる気配は一向にない……

あ……体を登ってきよる。

そんで顔に近づいて……

……うお!

や、やめ! 俺の口に入んなや!

ウグ……ウググ……



―――――

「ぐぶぅぇ!」

く、苦し……

夢やったようやな……。

目ぇ覚ましたらもう夕方になっとった。

横には悠奈ちゃん(勝手にこんな呼び方しとるけど)がおって、俺の看病してくれとる。んで……なぜか俺の口にはたっぷりトマトが。

「あ、目が覚めたのね。良かった」

その安心した表情に癒される。

んで、なぜトマト?

「えっと……何でトマトを口に?」

まぁ大体予想はついとるが……

「お爺様がトマトを口に入れれば目が覚めるって。どれくらい入れたらいいのかわからなかったんで、いっぱい詰め込みました〜」

やっぱり。……あんのクソジジイィィィ!……ま、悠奈ちゃんの笑顔を見ていたら、もうどうでもようなった。孫に感謝しいや、クソジジイ♪

「えっと……また明日からも頼みますね」

悠奈ちゃんに頼まれたのに断れるはずないわ。

「もちろん。まっかせて下さい!」

強がってみたけど、正直めっちゃ心配やった……。
まぁ嫌な予感は的中するんやけど。

今回はここまでやな。

また機会があったら話したるわ。

ほんなら、さいなら。



ちなみに、あの後夕食にもちろんのようにトマトをふんだんに使った料理が出たんやけど、全然食べれんかったわ……。今にもトマトが襲ってきそうで……。


関西弁ってのはいつも使ってますがいざ文にしようとすると難しかったです……。もし読んでわからない方言があったら評価に是非是非書きこんで下さい。あと、評価もしてくだされば幸せです。同じ関西人の方、変なところがあれば、ご指摘願います。













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