9−えっ、メタミドホス
タムラ先生 夜間外来
9−えっ! メタミドホス・・?
ナースセンターで、看護師たちの間で、最近テレビ、新聞を賑わす、話題。
それは、中国産餃子に毒が入っている事に、対してだ。
普段は主婦、その看護師兼主婦達は大騒ぎ。
手軽に、手作り餃子が簡単に家庭に、また弁当のおかずとして、重宝していた。
「参ったわね、中国産の餃子」
「私も危なく、食べる所だったわ!」
「なんだか、これから中国産怖いわねぇ!」
「でも、暫く冷凍食品品薄になりそうね!」
「そうよね、最近野菜も中国産やたら多いからね!」
「中国産野菜が、安い、安いで・・・」
「日本国内の生産が、割が合わなくなったからね。」
「これから、国内で生産開始しても、もう間に合わないし・・」
そんな話をしている矢先、救急外来の電話のベルが・・・
「はい、救急外来!」
「えっ!!!」
「で、食中毒みたいだ?」
「めまい、吐き気、下痢 身体が震える!」
「ギョウサを食べた?」
「何時ごろです?」
「1時間半前!」
タムラ先生は、受話器を麗奈から奪い、「至急搬送しろ!」
「大至急だ!」
「胃洗浄の用意、早く!」
「解毒剤あるか!」
「はい、たしか・・・」
「えーと、あのサリン事件以来この病院にも在庫があるはずです!」
「探して来い」「毒物の、エキスパートに、連絡とれ!」
「検査室に大至急連絡だ!」
「いない!」「至急呼び出せ、山村がいい!」
「はい」
「おいPAM あったか?」
「すいません、まだ見つかりません」
「薬剤師を呼べ!」
もうこの現場は、蜂の巣をつついた状態だ、みんな殺気だっている。
そうこうするうちに、サイレンの音が近づいてくる。
サイレンの音が止む!
「おい、麗奈 玄関に急げ、2.3人連れて行け!」
「おれは、ここであらゆる状況に対処する。」
「検査技師、到着しました!」
「薬剤師も到着しました!」
「“PAM”あったそうです!」
「硫アトも100Aあります。」
次々に情報が、タムラ先生の下に集まる。
「で、患者は何人だ?」
「6名です」
「川村!六人分あるか? 薬品」
薬剤師の川村ははっきりと、自身をもって、答える。
「大丈夫です」、と。そして
“PAM”の使用量と硫酸アトロピンの注射、胃洗浄のやり方を川村は、
タムラ先生と確認する。
応援の医師たちが、やって来る。
タムラ先生の、息のかかった医者が次々と到着。
対処法と、その処置の順番を。他の医師、看護師に手際よく確認、指導する。
患者の中で、症状の酷い人間から、まず3人運ばれてきた。
ついで3分ほど遅れて3人到着した。
スタッフがそろった状態で、胃洗浄、生食で血管確保がされた。
患者に PAM、硫アトの中和剤が施され、
搬送された時と比べると、ほぼ全員が症状の改善に向っている。
おそらく、物理的な後遺症は回避されるであろう。
この様な場合、速やかな胃洗浄、中和剤が、これからの予後に大きく影響する。
この処置により、神経毒、体内貯留への回避が格段に上がる。
とにかく、時間との勝負だ。
もうひとつ重要な事は、いかに多くの臨床を経験している医師に、
めぐり合えるかが、その人たちの運命を大きく左右させる。
しかし、サリン等の揮発性の毒物は、おそらく成すすべがない。
瞬時に空気中に拡散されたサリン等は、手の打ちようが無い。
初めから、サリンとわかっていれば救出時に、防毒マスク防護服が、
救出人に犠牲者を出さないで済む。
今回のメタミドホスは、内服以外では殆ど害にならない。
しかし、これは無差別殺人テロだ、絶対に許しがたい。
タムラ先生は、怒りのやり場に、何故か麗奈にきつい言葉が出てしまう。
メタミドホス(C2H8No2PS)(分子式)の流出には、
いまだにいろいろな原因が考えられる、
しかし、これは明らかに無差別テロだ!
“大量殺人だ!” “悲惨な!”
幸いにも、ここに運ばれて来た患者は、おそらく、
後遺症も少なく、命に別状はないようだ。
「麗奈、現在の状況は!」
「はい、先生の手際が良かったようです。」
「点滴を、大量に行い、素早い胃洗浄 そして中和剤で・・・」
「すべてが、うまく作用して、ほとんどの患者さんが、安全な病状に。」
「おそらく、2〜3日で退院可能でしょう。」
患者さんたち、皆元気で、感謝していました!」
「そうか、それは良かった!」
「それで、応援のスタッフは?」
「明日があるからと、用の無くなった方から、帰宅されました。」
「2人ほど、まだ・・・」
「“まだ後から他に来たら・・・その時に心配だから、タムラ先生の傍にいたい!”」
「と、言う事で、ナースセンターでお茶を飲んでおりますわ!」
「そうか、では、ナースセンターに顔を出してみるか!」
そう言って、ナースセンターに向うタムラ先生に
「先生って、人気有るのですね?」
「男性からも、女性からも・・」
麗奈はなんか、先生が遠くに行ってしまいそうな不安を感じて、
いきなり、タムラ先生の後姿に走りより、
他の目を気にしながら両手でほんの一瞬だけ、後ろからタムラ先生の背中に、
抱きついた。
タムラ先生は黙って、されるままになっていた。
タムラ先生は、その一瞬が1時間に感じたことだろ。
麗奈も少し顔がほてっていた。
麗奈は、タムラ先生を追い越してナースセンターに急いだ。
「やー、休みのところ、大変ご苦労様でした!」といって、二人の若い医師を労った。
「いえ、いえ、先生こそ、大変でしたね!」
「先生の、対応の素早さに感服です!」
「いや、先生たちこそ・・・」
「われわれも、大変勉強になりました。」
「こちらこそ、大変貴重な体験で、皆さんに感謝です。」
「そろそろ、お引取り願って結構ですが?」
「いえ、いえ、もう少しこちらにいます。」
「もう何も無いと思いますが?」
「何かあったとき、先生が大変です!」
「そうですか・・・!」
「いえ、いえ・・」
「本当にありがとう、いつか皆さんに埋め合わせ、させて頂きます。」
「いえ、そんなお気遣いは・・・」
タムラ先生、かなり疲れたようで、今夜のこれからを考え、
「麗奈くん?」
「はい!」
「僕は、まだ仕事は、終わりでない!」
「当直室で仮眠させてもらうよ!」
「はい」麗奈は、タムラ先生にアイコンタクト!
当直室に戻った、タムラ先生は、中国のいいかんげんさ・・・、
日本の食糧自給率に、怒りを感じていたが、いつの間にか、
タバコも吸わずに、眠りの中に落ちていった。
----- タムラ先生の夜間外来 9 --------
DrDr――――Fin−−――DrDr
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