タムラ先生 夜間外来(改編)(89/183)縦書き表示RDF


タムラ先生 夜間外来(改編)
作:浅見 希



89−産婦人科 子宮頸がん-3


89−T総合(タムラ先生)産婦人科-11 子宮頸がん・・・・

89 産婦人科-11 子宮頸がん-3

いよいよ紗枝のオペ日がやって来た。
紗枝は落ち着かない、入院の準備もすべて自分で済ませた。

今看護師に付き添われて、病室に案内されて、
洗面用具や身の回りの物を整理している。
最近まで付き合っていた彼は、あえて知らせなかった。 

どちらかと言うと、セフレに近い関係だ。未練など無い。
まして、もうSEXの出来ないような私に用は無いだろう。
自分の招いた種だ、甘んじて受け入れよう。

看護師が、術前夜の催眠導入剤を持って、部屋に入って来た。
「これを飲みなさい、安心するわ!!」
 「はい、有難う!」
「心配?」
 「いえ、大丈夫です!」
「そう、・・・貴方強いのね!」

でも、なぜかその言葉とは裏腹だと、顔が物語っている。
そう・・・、紗枝・・・寂しさが心の中に充満している。
両親も早く無くし、今まさしく天涯てんがい孤独と言っていい。
男と気楽に付き合うのも、寂しさを補うための手段でしか過ぎない。
その夜が過ぎれば・・・夜が明ければそれでいいのだ。
もう、今の社会にうんざり、もう・・どうでもいい、どうにでもなれ・・・、
そんな気持ち、雰囲気が、紗枝の眼からサインを送り続けている。

翌朝8時丁度、ストレッチャーを押して、ありさがオペ室に誘導する。
不安そうな眼差しの紗枝を見て、
「大丈夫よ! 田村先生・・・腕は優れているから!」
 「はい!」声が小さい、そして瞼を閉じる。
その声に、ありさは、
彼女の頬に自分の頬をくっつけて、小さな声で囁く
「貴方みたいな“自己満”は、あの世でお断りよ!」
「そうね!」そう言って、せぇ一杯の笑顔で、ありさを見つめ返した。


オペは、無事終了した。やはり、全摘せざるを得なかった。
子宮頸部だけでなく、子宮体にも腫瘍が浸潤していた。
すなわち、もう少しほって置いたら、生命の危険も心配された。
当然子供は、ほぼ無理に近くなった。
完全に無理と言うわけではないが・・・・

麻酔が覚醒した頃、田村先生がやって来た。
「オペは無事終了したわ!」
 「はい、有難うございました!」
いつの間にか紗枝の目から涙がこぼれる。
恵子先生もつられて、もらい泣きしているようだ。

そこへ、ナースコールが
「紗枝さん、*** **さんが、面会を申し出ています。」

うん? 何であいつが・・・、暫し途方にくれる。
暫く考えた挙句、
「はい、面会しますので、よろしくお願いします!」

「やあ、元気か?」
「まあ・・・ね、何とか・・・!」
 「生きている様・・だな!」
「生きている・・わ!」
 「・・・それは、良かった!」
「そうね・・・!」
「でも、貴方、如何して此処が?」
 「まあ、偶然かな!!」

実の所、彼は、あちこち必死で探したのが、本当の事だ。
それを、意識的に言わない。
そんな二人の関係、なぜか二人にしか分らない独特の関係なのだろう。
「ありがと・・・! ね!」
 眼にまた別の涙が・・・こぼれる・・
この涙はきっと暖かいのだろう・・・・、
冷える事の無い・・涙か・・・・ 
「あぁ・・・」
「ご飯・・食べてる?」
 「あぁ・・・」
「じゃー・・・おれ、また来る!」

彼、相当の決心で、ここへ来たのだろう・・・
紗枝も、言葉に出来ない位にうれしかった事だろう。
もしかすると・・・こんな所に あったのか・・・幸せが!

二人の関係は、彼女の子宮を失った代償に、
大きな二人の固い絆を、愛を・・・、手に入れたのかもしれない。

 T−総合(タムラ先生)病院 3089
恵子先生産婦人科−6 
DrDr――――――総合Keiko Fin―――――DrDr












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