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タムラ先生 夜間外来(改編)
作:浅見 希



55−ガラスの破片が腕に・・50個も


タムラ先生 夜間外来
 
55- ガラスの破片が腕に・・50個も 
 
 ぽとり、ガチャ・・・ぽとり、ガチャ・・・大は5*3mm 小は2*1mm
また1つ、白く輝く硬い破片が膿盆に落ちて音がする。
静寂を打ち消すガラス片の音、もう既に20個以上同じ音と同じ動作が続く。
「おい、もう疲れたぞ!」
「うん・・・なんか言った?」
「だから、疲れたと言ったんだ!」
 「私も・・・疲れた!」
「君は・・・我慢しろ!」
 「じゃぁ・・・先生も! ね!」
「まったく・・・・・、お前、何度目だ?」
 「何が・?・・ねえ・・・何が?」
「こうして、飛び込みでここへ来る事だ!」
 「だって、しょうがないでしょ!」
「しょうがなくはない、君が注意すればいいのだ。」
「注意してるもん!」
「じゃあ・・・酒をやめろ!」
「それは・・・無理・・ね!」

ぽとり、ガチャ・・・ぽとり、ガチャ・・・
「もう30個近くだな!」
 「いや、32個目です!」
もう同じ事の繰り返しに、麗奈自身もうんざりだ。
左肘に入り込んでしまったガラス片、ガラスが肉の間からセッシ(ピンセット)で取れる度に出血が流れ出る。
それをガーゼで拭き取る。看護師の麗奈もさすがに飽きている。
患者が、あの現役モデルの今井綾香だから余計にイラつくのかもしれない。
ちなみにこの今井綾香、もう何度も登場している。
(1- ちょっぴりお馬鹿さんなスーパーモデル)
(21- 夜間病院、夜の訪問者、現役モデルが・・?)

今回も酔って、ショーウインドーに飛び込んでしまった。そして、平日に小手術(ガラス片摘出)を1週間前に受けたばかりなのだ。
だが、酒を飲んでいて肘の辺りが盛り上がっているのに気づいた。
 その盛り上りは、まだ体内に残っていたガラス片を、
皮膚組織が包み込むようにしていたのだが・・・・、
それが異物と気づき、その残されたガラス片を体外に押し出すように、
表皮に向けて、出て来たのだ。
それが、外からはっきりとわかるようになったのだ。
その、気になる所を反対の手で触りガラス片と気づいた。
それからあわててこの馴染みの、夜間外来にやって来たのだ。
 その事に気が付いたとたん急に気になり、この今井綾香の気に入りの夜間外来に
駆けつけて来たのだ。

 いつもの様に、顔パスで警備員室を無事通過して、やって来たのだ。
そして、今タムラ先生が肘の皮膚に包み込まれたガラス片を、
取り出している最中なのだ。
取り出す前に、レントゲンを撮った。
すると皮膚の中に食い込んだガラス片が40以上見えた。
その一個一個をセッシで取り出している所だ。
ガラス片のある場所に、メスで切り開き取り出す。
その作業を何度も・・・
患者は点滴台に肘を乗せて置けばよいのだが、医者は大変だ。
目も、疲れる。セッシを持つ手も・・・・・、
 レントゲンで、あまりにも数が多いので、その患部を医療用のブラシで擦ったのだ。
その経緯は、
「おい、君これだけの数のガラス片、一個一個取っていたら朝になってしまうぞ?」
「我慢して、明日外来に来てゆっくり取ってもらえ?」
 「いやです、今取って頂戴!?」
「無理だよ・・・!」
 「でもぅ・・・、気になって・・先生・・・何とかして!!」
いつもの、ダイレクトに、男の心をつかむ術を知った今井綾香、
タムラ先生をあっという間に、従順な飼い猫に変えてしまった。
「しょうが、ねえなぁ・・・!」
 「わっ、やった!」
「だが、かなり荒療治だぞ!!」
 「いいから、早くやって!」
「おい、オペ室のブラシ持って来い!」
 「えっ、ブラシ・・・ですか?」
何故か合点がいかない麗奈、ブラシをどうするのだろう??
「はい、持って来ました!」
「おい君、少し痛いが我慢出来るな!」
 「えっ、それで、擦ってガラスを取り出すの?」
「そうだよ、それなら早く取れるだろう・・・」
 「でも、痛そう・・!!」
「平気、平気・・・君の体・・・中から消毒できているから!!」
 「またぁ・・・でもいいわ!」
 「最近痛い刺激・・・いいかも・・・!?」
「なんだ、君・・・Mになったのか?」
 「そうかもね?」
「それじゃー、はじめるぞ!」

 「やっぱ、痛いわね! でも我慢できるわ!」
「そうか、実はな、ブラシにキシロカインゼリー塗っているからな!」
 「そうなんだ、そう言われれば痛みがだんだん薄れて来たわ!」

 今井綾香、先ほどの体制が、つかれて診察台に仰向けに寝て肘をタムラ先生に
預けるような格好になっている。
すると、タムラ先生の目の前に、適当に大きなスタイルのいいバストが・・、
彼女が動くたびに谷間が露になる。
そして、そこ等辺から何ともいえないフレグランスが・・・香る。
 散々嫌気を感じていたタムラ先生俄然やる気がでて来た様だ。
何と、そのフレグランスは・・・媚薬に近い働きをする。
 たちまち、綾香の色香に参ってしまったタムラ先生、彼女を擁護する言葉がつい出る。
「あと少しだ・・・、君頑張ろう!」
 「先生、どうしたんですか? 急に頑張り出して・・・・」
麗奈、タムラ先生の異変の原因が何だか十二分に分っている。
 先生も最近女性と・・・無いだろうな・・・こんな仕事条件なら・・・・
まあ普通なら世の男性共こんな状態になったら・・・
どんな事もイエスとなってしまうのだろう。

 が、しかし麗奈なぜか今日は綾香の事が許せる。何故だか分らないが・・
以前、自分も同じような事をしたような記憶があるからだろうか・・・
 それにしても綾香さん、どうしてこんなに自分の体をいじめるのか・・・
あんなに恵まれたボデーラインを、まるで欠点の無い均整の取れた顔立ちを、
日本人離れしたすらりと伸びた脚を・・・・不注意とは言え傷つける行為
 もしかすると、不器用な女性なのだろうか・・・
タムラ先生に・・逢いたくて・・・
 そういう自分も不器用なのかも・・・素直になれないで・・・・

「もう無いかな・・・?」
何とそのブラシのあと、横からライトを当てる。そして、反射を見る!
 「先生・・もう良いわ! 疲れちゃった・・!」
「そうか・・な??」
完全に綾香のペースに、はまってしまった。牙を抜かれた猛獣のように・・
女の麗奈でさえも、この雰囲気に呑まれてしまいそうだ。
「それじゃ・・もう一度レントゲン」
叫んだのは何と麗奈、牙を抜かれた狼に変わって麗奈が決断を・・・
「うん、そうだ! もう一度レントゲンだ!」
つられるようにそう叫んだ、タムラ先生
「えっ、もう大丈夫でしょう。 大丈夫!」綾香はもうどうでもいい感じだ。
「いえ、レントゲン・・もう一度!!」
「そうですよね! タムラ先生!」
「そうだな・・、うん、もう一度撮ろう」

そして、結局レントゲンを再度撮ることになった。
結果として、さすがに金属様の鋭角な陰影は見られなかった。

 先ほど、ブラシ等で外傷の創傷面をきれいにすることをデブリートマンと言う。
感染が心配なので抗生剤を入れた点滴を行うことにした。
当然だが内服も抗生剤と、鎮痛消炎剤、消炎酵素、それに胃粘膜保護剤を処方する。

点滴 生食500ml セフォビット1g
処方 
フロモックス100mg 3T
ロキソニン錠     3T
トランサミン250mg 3T
セルベックスCp   3C      
  
 デブリートマンを行った患部を、ゲンタシン軟膏をかなり多めに塗布して
包帯を巻く麗奈。
その動作をほとんど酔いのさめた綾香は、見惚れながら麗奈に話しかける。

「ねえ、麗奈さん、貴方この仕事・・・好き?」
「どう言う・・意味かしら?」

今夜も、上から下まで一分の空きも無いぐらいにパーフェクトに決めた服装で、
白衣の麗奈を少し尊敬の眼差しで見つめながら話しかけた。
 今夜の綾香は、20代後半の若々しさと、その年齢以上の色香を発揮する様な、
大き目の襟で、バストラインを最もきれいにする大胆なVライン。
 前かがみになると、少しバストが大きめに美しく見せる技が隠されている。
そして、ブラは当然見せる事を意識したブラだ。
スカートは正面が長めでフリルを大きく、ボリュームを出す。
 サイドはかなり切れ上がり、大げさな表現をすればチャイナドレス風にスリットが入った感じで、太ももの美しい肌をぎりぎりまで露出した、大胆なスカートだ。
 カラーはブラウスが薄めなホットピンク。ブラとスカートの色はダークスレイトグレイ(濃いエメラルドカラー)少しイロく、少し可愛く、少し大人な女を抜群のプロポーションで表現

 やはりいい女かっこいい女に違いない。
一方、麗奈も負けていない。
白衣だが有名なデザイナーがデザインした一点ものだ。
麗奈のために、採寸した。昔のモデル時代に麗奈をかっていたデザイナーが自ら麗奈のために無償で提供している。
麗奈が着ているから本当に白が美しく、シルエットは最高だ。西日を浴びながら全体を映し出す様はシンプルさが美に変わる。
綾香はそんな想像をしながら、自分の華やかなステージは人々にどんな印象を与えているのか。
いつまでその華やかなステージに立っていられるのか・・・・
平凡な、生活 例えば結婚して・・・例えば子供が生まれて・・
例えば夫の下着を洗う  例えば・・・・・

先ほどの問いに麗奈は答える。
「どうかしら・・ね・・!」
「好きと言うより・・・」
「満足している・・・かな!」


「そう、いいわね!?」

今の綾香の“そう、いいわね!”ってどういう意味かしら・・・・
   
タムラ先生の夜間外来 55

DrDr――――Fin――――DrDr 












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