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タムラ先生 夜間外来(改編)
作:浅見 希



16−んっ・・・骨折 ?


タムラ先生 夜間外来
 
16 んっ・・・骨折 ?
  
「ねえ、いいだろう?」
 「いやよ!」
「ほら、あの45階の・・・」
 「いやだって! しつこいわよ!」
「おごるから、さぁ!」
 「本当にしつこわねぇ!」
右腕を掴みに来た手を、押しのけるように払うと、その若い男よろけて倒れる。
「うっ・・・」「痛えぇー!」
「痛いよー」

少しその声に驚き振り返る、女性
 「大袈裟ねー・・」
しかし、倒れた若い男の右肘の少し下の所が、異常に変形しているのを、
目ざとく見つけてしまった。
「あら、まぁー・・」
「・・・折れたかな?」
少し心配の麗奈、
何と西川麗奈、出勤途中のところ、水商売の軽い女と勘違いか・・・
あまりにも、しつこい男を軽くいなした感じだったが・・・
ちょいと、かわしただけだが、麗奈柔術の心得がある。

 倒れたまま、右腕を左腕で庇うようにする、軟弱な軽い男を見下ろし、
「情けないわねぇ、先ほどまでの元気はどうしたの?」
情けない顔、と言うか半泣きの青年(功)は
「痛い、痛いぃ」
もう完全に半泣きと甘え、もう麗奈に甘え、目が訴えている。
麗奈の雰囲気が、もう看護の体制になっているのだろう、
それを、すかさず感じ取ってしまう、巧の感受性 もしかするとホスト・・・

麗奈、すらりと伸びた脚を折り曲げ、彼の患部を触る。
「やっぱ、折れてる!」
「もう、腫れて、熱くなっている!」
 触れた瞬間「痛いよう!」と、功
「うるさいわね?」
「ついて来なさい!」少しきつめの声で、
怯える功、この後どうなる! が、何故かついて来る。
「今時の男、こんなだから・・・」
もう少し何か言いたそう、が、そこでやめる。
麗奈、ノアールカラーのロンシャンのホーボーバッグから、
携帯を取り出し短縮1をプッシュ。

「はい、**病院です。」
「**看護師の西川です、第二外来お願いします!」
「はい、少しお待ちください!」
「あっ、西川です、事情があって少し遅れてしまうの!」
「ごめんなさい! あ、それと患者を一人連れて行きます!」
 「え、患者って?」
「麗奈先輩、葵です。」
「葵さん、ご苦労様!」
「トウコツ骨折よ!」
 「トウコツ?」
「そう、橈骨」「今時の若い人たち骨が弱いのねぇ・・?」
「とにかく、先生に一人患者連れて行きますと伝えて!」
「あ、それとギプスの用意もね!」
 「はい、わかりました、麗奈先輩!」
 「先輩、またやっちゃったんですか?」
「どう言う意味よ!」
 「あっ、ごめんなさい!」

 実は麗奈以前も柔術が過ぎて、やはりナンパしてきた男をキック一発、
辛うじて過剰防衛になる所だった。
その男の肋骨2本、折ってしまったいきさつがある。
病院でも有名な話、あのミス日本、見かけで判断するととんでもない事に・・・

電話の話を聞いて、内容が少し理解できた様子の功、心の中で“しまった”と叫び、
「あんた、看護師さんなんだ。」
「それに、強い!」
「何言ってるの!」「あなたが、ヘナチョコ、なだけよ!」
「いいから、早くついて来なさい!」

それから15分後、第二外来の診察室
「先生、どうも橈骨とうこつ骨折のようです!」
 「その様だな!」「右手関節XP2方向」
「葵チャン、患者さんレントゲン室に連れて行って!」
「私、着替えてきます。」そう言って、麗奈診察室を出る。
タムラ先生、麗奈の私服に見惚れる。
「先生、何見惚れて見ているの!」
「麗奈先輩いつも、かっこいいわ、センスも。」
「先生! たまに見る麗奈先輩の私服、ステキでしょう?」
「それは、そうだろ、昔ミス・・・」
 「先生、知っているの、さすがー!」
「あのー、痛いんですがー」功、右手を押さえて・・・
「そうだ、そう、早く連れて行きなさい!」
少しうろたえるタムラ先生、患者をレントゲン室に連れて行くように促す。

「橈骨骨折だ。」
「見事に折れてるな!」
 「えっ、折れてる。本当に!」
「ほら、見てごらん?」
そう言って、モニターに映る画像の白い部分、段差の所を指す。
 「あ、本当!」「痛い!」画像を見て余計に傷みが増した様子。
「はい、ギプス固定」
「4週間そのまま!」
タムラ先生、功の前腕から手関節までを、素早くギプスを巻いていく。
と言うか、始め巻いていたが途中で交代、麗奈と・・・・、
タムラ先生ギプス、自分であまり巻かないので下手、その事良く知る麗奈、
さりげなくタムラ先生から奪い取るように水に濡れたギプスを、
そして何も無かったように巻き終える。

「はい、後はよろしく!」
「先生、痛み止め!」
「なに、痛み止め、そんなの要らねえ ヨ」
 「え、痛いよ」功 訴える。
しかし、固定されたお陰で傷みかなり弱まっている。
  甘えが入っている!

 エレベーターに向かいかけた時タムラ先生は、麗奈に声をかけた。
カルテを持って麗奈、タムラ先生のところへ

タムラ先生カルテに何か書き込み、麗奈の耳元で
「そろそろ、飯でも・・・?」
 「先生も、右腕、骨折する?」
「えっ、あの彼の骨折・・・、君が・・・・!」
「いえ、いえ・・・彼が勝手に転んだんです!」
「ほんとうに・・・!?」
「じゃー、さっきの話取り消し!」
 「先生、わたし、“六本木の**京懐石”食べたくなったんですけど?」
「えっ、うそ!」
 「本当に・・・、そのうち連れて行って下さい!?」
「ねぇ、タムラ先生!」
「葵チャンと一緒に!」
「あー、そうだな!?」
少し複雑なタムラ先生、エレベーターに乗り込む。

 「ねえ、麗奈先輩?」
「うん・・!」
「何!」

しばらく、麗奈 心の中の本心、少し歪みが発生

「麗奈先輩、お誘い?」
「なに、言ってるの! あの患者の処方よ!」
 「あ、本当だ!」
カルテに、記載
処方 ボルタレンSR 1Cp 3回分 頓

葵、少し納得、でもそれにしては、長いと・・・
「麗奈先輩、それだけ・・・?」
「そうよ、それだけよ!」
「あ、葵ちゃん、今度先生 京懐石 ご馳走してくれるって!」
 「本当ですか?」
「本当よ、3人でね!!」

なんとなく、ぼやかされたと言うか、煙に巻かれた葵、麗奈の後姿を見つめ
「麗奈先輩、かっこいい!」
「麗奈先輩と、タムラ先生、お似合いかな!」呟く葵。

――――タムラ先生の夜間外来 16――――
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