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ですぷり! −DESTINY OF PRINCESS−
作:天使美羽



TALE5:ルヴィア&マーメイド


 蒼碧あおみどり色の美しい海は透明感があり、色鮮やかな珊瑚や綺麗な魚の群れが泳いでいるのが見え、幻想的なもう1つの世界が広がっている。

 ビーチから離れた沖で海水浴をしているのはルヴィアだ。
 颯爽さっそうと泳ぐ姿はマーメイドに見まがう程美しい。
 海から顔を出したルヴィアは海面に仰向けに浮く。
「あー、イイキモチ〜〜」


 1人の女が必死で海中を泳ぐ。
 誰か、誰か助けて……!
 緊迫したその表情。
 海面を見上げると何かに気づいた。


「……ん?」
 気配に気づいたルヴィアは胸まで海に浸かる。
「なんか近づいてくる。ジャアクなものじゃないわ。なにかしら?」
 海中を見つめる。
 女の顔が見えた。と思ったら顔をザバッと出した。
「キャ――ッッ!!!」
 驚き悲鳴を上げるルヴィア。
「……た、助けて……」
 かすれるような声で言った女はルヴィアに助けを求めて気絶してしまった。
「エエッ!!? ちょッ、チョットあんた、しっかりしてッ!!」
 ルヴィアが女を抱き揺すったが青い顔でグッタリしていた。
「ど、どーしよォ……。とりあえず海から上がんなきゃ」
 女の腰を抱えてビーチへ向かって泳ごうとした。
 何気なく女の下半身を見たルヴィアは目が点になる。
「ウソ……」


(レーシアッ!)
 カキ氷を手にビーチを歩くレーシアにルヴィアからテレパシーが届いて立ち止まる。
 気づいたランディも立ち止まった。
「レーシアちゃん?」
(どうしたの? お姉さま)
(さっきのトコまで来てっ!!)
(何かあったの!?)
(いーからはやくっ!!)
(……わかったわ)
 レーシアはランディに伝える。
「ランディさん、お姉さまがさっきの場所まで今すぐ来てほしいそうです」
「えっ、どうかしたのかな?」
「よくわからないんですが、行ってみましょう?」


 ホテルの一室。
「さっきはどーなるかと思っちゃった」
 ベッドに寝かされた女を見つめて一息つくルヴィア。
「一体どういうことか説明してもらおうか?」
「そうよ、お姉さま」
 ソファーに座っているランディとレーシアが尋ねた。
「あたしもわかんないのよ。いきなり海からあらわれて、あたしに助けてって言って、すぐキゼツしちゃったんだから」
「えッ、そうだったのか」
「でも、助けを求めてくるなんて何があったのかしらね」
 レーシアがそう言うとルヴィアは女の顔を見つめる。
「あたしも知りたいわよ。まさかマーメイドなんて……」
「僕も驚いたよ。ルヴィアがマーメイドを連れてるんだからさぁ。でも本当にいたんだな、マーメイドって。話は聞いたことあったけど」
「マーメイドは妖精族ですから、普段私達の前に姿を見せることはありませんしね。会えるなんて感激です」
 ウットリするレーシア。


 マーメイドの見ている夢。

『カナリヤッ!! 早く逃げるんだよッ!!』
『でも、みんなが!』
 マーメイドの仲間が悲鳴を上げながら謎の巨大な怪物に次々と飲み込まれていく。
『このままじゃアタシ達もあの怪物にッ!!』
 怪物が2人に向かってくる。
『ほら早くッ』
 マーメイドに背中を押される。
『だ、だけど……』
 カナリヤはためらっていた。
 仲間を見捨てて自分達だけ逃げてしまうのには抵抗がある。
 怪物は2人に向かって大きな口を開けた。
『ああ……』
『キャリィ!?』
 キャリィの体が怪物の吸引力で引っ張られた。
『早く、早く逃げなきゃッ!!』
 キャリィがカナリヤの腕を引き急いで泳ぎ始めた。
 必死に逃げるが怪物はすぐ近くに迫ってきている。
『くゥッ!!』
 掴んでいたカナリヤの腕を力いっぱい前に振り回した。
『きゃッ!!……キャリィ!?』
『来ちゃダメッ!! 早く行ってッ!!!』
 戻ろうとしたカナリヤを止める。
『キャァァ――ッ!!! カナリヤッ!! 早く逃げてェ――』
 怪物に飲み込まれていくキャリィ。


「キャリィ――!!!」
 涙を流しながらカナリヤが目を覚ました。
「キャアッ!!」「ウワッ!!」
 ソファーやベッドでくつろいでいたルヴィア達が驚く。
 立ち上がりカナリヤの側に行った。
「気づいたのっ!?」
「……あ……」
 カナリヤが頭を動かし涙の溢れた目で3人を見つめた。
「ダイジョーブッ!?」
 ルヴィアが尋ねるとカナリヤはゆっくり起き上がる。
「は、はい。あの……ここは?」
「ホテルよ。あんた海でキゼツしちゃったもんだから、ほっとくワケにもいかないしつれてきちゃったの。ココまで来るのタイヘンだったわよー。なんせ、あんたマーメイドなんですもんねー。そのままだったらパニックになるわ。だからランディのマントで巻いて隠しながら、目立たないよーにして来たのよ」
「それでも充分目立っていたぞ、あれは……」
 冷や汗を垂らしたランディが呟く。
「そ、そうだったんですか。それはご迷惑をおかけしました」
 カナリヤが申し訳なさそうに頭を下げた。
「まーいーわ。それよりなんかワケありみたいね。話してくんないかしら?」
「聞いてくださるんですか!?」
「聞かせてください」
 レーシアもお願いした。
「はい……」
 カナリヤはベッドに座った。美しい尾ヒレが露わになる。
 ルヴィア達も隣のベッドに向かい合って座った。
「私はカナリヤと申します。フェアリーランドの遥か海底で仲間と暮らしていました。ですが今日、突然巨大な怪物が私達を襲いみんなを飲み込んでいったんです。そして、親友のキャリィまでも私をかばって……」
 カナリヤが両手で顔を覆い泣きだした。
「そんなコトが……」
「酷い……。お姉さま、なんとか助けてあげられないかしら」
 レーシアがそう言うとルヴィアは腕組みして考え込む。
「んー、そりゃ助けてあげたいけど、いくらあたしでもずっと海に潜ってらんないわよ」
「無理に決まってるよな」
「私達を助けてくださいませんか?」
「だけどね、あたし人間なのよ」
「それなら大丈夫です」
 突然カナリヤが片手を胸の谷間に突っ込んだ。
「エッ!?」
 ルヴィア達が何を始める気だ、と目を丸くする。
「これを見てください」
 小さなケースを取り出し開けてみせた。そこに貝殻の付いた美しいリングがある。
「マーメイド・リングです。もし私達だけではどうすることもできなくなり、人間の助けが必要になった時に渡しなさい、と言われ続けてきました。これを指にはめれば人間でもマーメイドになることができるんです。マーメイドになれば海中でも呼吸や会話をすることが可能です。視界もよくなりますし、高速で泳ぐこともできます」
「へー、スゴイモノがあんのね」
 ルヴィアが感心した。
「これを使えば、きっと助けてあげられるわね」
「ルヴィアがマーメイドになるのかっ!?」
 1人妄想するランディ。
「よーしっ!! そーとわかれば、あたしがあんたのナカマ助けてあげるわっ!!」
 ルヴィアがウィンクしながらガッツポーズを取った。
 カナリヤは嬉しさで涙ぐむ。
「本当ですか!? ありがとうございます!」


 人気ひとけのない海。
 ビキニ姿のルヴィアは膝まで海に入りレーシアは精霊術『レビテイト』で宙に浮いている。
 マントで体を隠したカナリヤを抱えたランディは海に降ろす。
「ありがとうございました」
 カナリヤがランディにお礼を言った。
「それじゃランディ、レーシア。行ってくるわね」
「がんばってこいよ」
「いってらっしゃい。私達はビーチで待っているわ」
 ルヴィアはランディとレーシアに手を振りカナリヤと海の奧まで入っていった。


「それじゃサッソク」
 ルヴィアは胸まで海に浸かる所でマーメイド・リングを指にはめた。
 下半身が淡く輝き魚の尾に変わる。
「あっ!! ホントにマーメイドになったわっ!!」
 海面から尾ヒレを出して動かした。

「ルヴィアがマーメイドになったぞっ!!」
「すごいですねー」
 その様子を遠目に見ていたランディとレーシアも驚きの声を上げた。
 もっと近くで見たかった、と残念がるランディだった。


 海面から差し込む太陽の光で揺らめく蒼碧色の海中は、まさに幻想的なもう1つの世界だ。魚の群れがゆったり泳ぐ姿は美しく、時が止まっているかのような感覚におちいる。

「どうですか? ルヴィアさん」
「スゴイわぁ。遠くまでちょー見えるし、スイスイ泳げる。こんなに泳ぐコトがたのしーなんて」
 本当にスイスイなのだ。人間だったら手足を大きく動かさなければ進みもしないが、尾ヒレを少し動かすくらいで驚く程進む。それにこんな美しい海の世界を見てしまったらマーメイドも悪くないなんて思ってしまう。
「マーメイド姿とてもお似あいですよ」
 カナリヤが笑顔で言うとルヴィアは得意顔になる。
「まーねー」
 突然カナリヤが目を見開く。
「どーしたのっ!?」
「みんなの意識を感じます。みんなは無事だわ!」
「ドコにいるかわかるっ!?」
「こっちです!!」
 急いで泳ぎだすカナリヤにルヴィアも続いた。


「近いわ。……あっ!! ルヴィアさん、あそこです!!」
「ドコっ!?」
 カナリヤの指差すほうを見つめるルヴィア。そこに巨大な怪物がうごめいていた。
 怪物は2人に気づき向かってくる。
「キャァァ――ッッ!!!」
 慌てて逃げると怪物の姿が明らかになる。
 体は全体的に丸く黒光りしていて尾が生えている。目はパッチリと大きく、その上にある眉毛は異様に濃かった。唇は真っ赤で分厚くなんとも気色の悪い怪物だ。そして太くて短い毛むくじゃらの人間じみた脚が生えている……。

「ナニアレェェ――ッッッ!!!!!」
 あまりにも強烈な怪物を目の当たりにしたルヴィアがムンクの叫びのように両頬を押さえて絶叫した。
「あの怪物が、みんなを……」
 下唇を噛みしめ悔しがるカナリヤ。
「ルヴィアさん、どうやってみんなを助けてくださるんですか!?」
 尋ねたが青い顔のルヴィアは片手で口を押さえていた。
「ルヴィアさん!?」
「ご、ゴメン。キモくなったのよ……。そーねェ、どっちみちこのままじゃムリだわ。ちょーヤダけど、あたし達もアイツん中入んなきゃなんないわね」
 青ざめた顔のまま言うとカナリヤは目を見開く。
「エ〜〜!!? 入るんですか!!?」
「しかたないでしょッ!! そーしなきゃ助けらんないのよッ!! ほら、グズグズしないで行くわよッ!!」
「キャァァ――!!!」
 カナリヤの腕を引き怪物に向かって突進する。
 怪物はいらっしゃいと言わんばかりに大きな口を開け2人を飲み込んだ。


 ヌメヌメした怪物の体内には数十人のマーメイドが衰弱してグッタリしていた。その中にキャリィの姿もある。
 そこへ転がり込んできたルヴィアとカナリヤにマーメイドが驚く。
「カナリヤ!?」
 マーメイドが2人の周囲に集まった。
 2人は目を開ける。
「きゃッ!! マーメイドがタクサンッ!!」
 周囲のマーメイドに驚いたルヴィアが飛び起きた。
「カナリヤッ! あんたどうしてッ!」
 キャリィが声をかけた。
「キャリィ、みんな。よかった無事で」
 再会できてホッとするカナリヤ。
「どうして逃げなかったのさッ!」
「逃げたわ。でも、みんなを助けなきゃって思って人間に助けを求めに行ったの」
「人間にッ!?」
「見て!! マーメイド・リングをはめているわ!!」
 マーメイドがルヴィアの右手のマーメイド・リングを指差した。
「あっ!! ホントだっ!!」
「じゃあ、この人は人間!?」
「あんた一体何者なんだいッ!? なんでマーメイド・リングをはめてるのさッ! カナリヤとどういう関係だよッ!」
 キャリィがルヴィアを指差し問い詰めた。
 あまりにもでかい態度にルヴィアはムカッとして額に青筋が立つ。
「ナニよアンタッ!! いきなりえらそーにッ!! ムカツクわッ!!」
「なんだってッ!!?」
「ちょっとキャリィ、やめて!!」
 カナリヤが止めに入る。
「みんな、こちらはルヴィアさん。私達をここから助けてくださるんですって」
「どーも」
 カナリヤに紹介されルヴィアが笑顔でVサインをした。
「この人が助けてくれるだってッ!!?」
「本当なの!?」
「カナリヤ、コイツはいったいナニサマのつもりなのよ。さっきからえらそーに」
 ルヴィアが不愉快そうに言う。
「あっ、ルヴィアさん。私の親友のキャリィです」
「コイツがカナリヤの親友ッ!? カナリヤとちがってちょータチのわるそーな人ねェ。あっ! マーメイドか」
 嫌みを言われキャリィは激怒する。
「こッ、このォ。あんたケンカ売ってるのかッ!!?」
「ケンカなら受けて立つわよ」
 ルヴィアとキャリィが睨み合い火花を散らす。
「ケンカはやめてください!!」
 2人の間に割って入るカナリヤ。
「あっ、あのぉ、私達を助けてくださるって本当なんですか?」
 マーメイドがルヴィアに尋ねた。
「そーよ」
「フンッ! 助けるったって、あんたに何ができるっていうんだろうねェ」
 キャリィが鼻であしらうとルヴィアの額に青筋がピキッと立つ。
「アンタ助かりたくないの」
「助かるも何も、ここから出ることすらムリなんだよッ!」
「だったらムリかどーか見せてあげるわよッ!!」
 そう言い両手をバッと開いた。
「ルヴィアさん?」
 カナリヤが不安そうにルヴィアを見つめる。
『この世に宿りし大いなる精霊よ…我に力を授けたまえ』
 ルヴィアの体が淡く輝き瞳は淡く輝きながら様々な色に変わる。マーメイドがキャーキャーと騒ぎだす。
 ルヴィアの両手の間に小さな何色もの光球が現れた。
「せッ! 精霊術ッ!?」
 キャリィが目を見開きカナリヤは声も出ずにただルヴィアを見つめる。
『その力…合わさりして我願う…我が意の全てを破壊せよ!!』
 光球は合体すると一回り大きくなり色を変化させながら点滅する。
「目の穴かっぽじってよく見なさいッ!! 『エクスプロード』ッ!!」
 光球がカッと発光した。

 怪物は異変に気づく。
 次の瞬間こっぱみじんに炸裂した。


「助けていただいて、本当にありがとうございました」
 カナリヤとマーメイドがルヴィアにお礼を言った。
「いーのよこれくらい。たいしたコトないわ」
「あんたが、まさかエルフの血を引く人間だったなんて驚いたよ。昔おきてを破って人間と一緒になったエルフがいるって話はアタシ達も聞いたことあるんだ」
「そぉ」
「あんた、その精霊術の力は、なんのために使うんだい?」
「なにって、ジブンと人を助けるためよ」
 真っ直ぐキャリィを見てルヴィアが言う。
「……そうか。あんたは嘘ついてないね。目を見ればわかるよ。下手なことに使ってたら張っ倒してやろうと思ったけどさ」
「なんですって、アンタなんかにやられないわよ」
 ルヴィアがそう言うとキャリィはフッと微笑んだ。
「あの、ルヴィアさん。今日は私達の家に泊まっていっていただけませんか? お礼がしたいんです」
 カナリヤが言った。
「お礼なんていーって」
「そうですか……。残念ですけど、もうお帰りになられますか?」
「そーね、もー帰んなきゃ」
「わかりました。では、先ほどの場所までお見送りいたします」
「アタシも一緒に行くよ」
 ルヴィアはマーメイドと別れカナリヤ、キャリィと泳ぎ始めた。


 傾いた太陽がオレンジ色に染めるビーチでルヴィアを待つランディとレーシア。
「あっ」
 声を出したレーシアにランディは振り向く。
「どうした? レーシアちゃん」
「……お姉さまがもうすぐ戻ってくるそうです」
 ルヴィアからテレパシーが届いたらしい。
「そうか、無事に戻ってくるか」


「ここを上がれば、先ほどの場所に出るはずです」
 海面近くでカナリヤが片手を上に差し伸べた。
「わかったわ」
「それと、そのマーメイド・リングはさしあげますので」
「えっ、いーの?」
「いつでもいいから遊びにおいでよ。今度はもてなすからさ」
「そのリングをはめれば、私がすぐお迎えにまいりますので」
「ふたりとも……」
 カナリヤとキャリィに言われルヴィアは嬉しくなった。


「ルヴィアまだかなぁ」
 退屈そうに呟くランディ。
「ランディさん! お姉さまが!」
「えっ」
 レーシアに言われ海を見る。


 ルヴィアは海面から肩が出る辺りでマーメイド・リングを外した。
 尾ヒレから足に変わる。
「ただいまーっ!!」
 手を振りながらランディとレーシアに駆け寄った。
「お帰りルヴィアっ!」
「マーメイドの皆さんは助けられたの!?」
「モチロンよ」
「そうか、よかったな」
 片手に握っていたマーメイド・リングを2人に見せる。
「このリング、あたしにくれたの。いつでもいーからあそびに来てって言われたわ」
「よかったじゃない」
 マーメイド・リングを見つめてルヴィアは思う。
 カナリヤ、キャリィ。いつになるかわかんないけど、必ずまた会いに行くから。
「見ろよルヴィア、綺麗な夕日だな」

 夕日が水平線に沈みかけ、空と海はオレンジ一色に美しく輝く。

「そーね……って、ナニちゃっかり腰に手ェまわしてんのよッッ!!!」
 額に青筋を立てたルヴィアの強烈なルヴィア・パンチがランディに炸裂したのだった。チャンチャン♪


【TALE5:END】







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