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ですぷり! −DESTINY OF PRINCESS−
作:天使美羽



TALE28:ニックのプライド


 ルヴィア達とナウロス、ニックの乗ったオズフェウス・ジェットはオズフェウス・キャッスルの上空に差しかかる。

 屋上のサーチライトと周囲のライトで闇に浮かぶ巨大なキャッスル。上空からでもその大きさはアイルーン・キャッスルを上回ると解る。
 
「おーきなキャッスルねー。あたし達のキャッスルよりおーきいわ」
「それはそうでしょう。我々のキングダムはそちらより文明が進んでおりますからね」
 窓からキャッスルを眺めて圧倒されているルヴィアにニックが言った。


 キャッスルの屋上に着陸したオズフェウス・ジェットの扉が上向きに開く。
 次の瞬間もの凄い風が吹き込んできた。
「キャッ!」
 驚くルヴィア達。
 その強風にナウロスとニックは表情ひとつ変えずオズフェウス・ジェットから降りた。
 
 高くそびえるキャッスルの屋上は強風が吹き荒れている。油断するとあおられそうだ。
 風は冷たくルヴィア達は凍える。薄着のルヴィアとレーシアには耐えられない寒さだ。

 世界の北方に位置するオズフェウス・キングダムは夜になると冷え込む。南方のアイルーン・キングダムの温暖な気候で育ったルヴィア達にはこたえられないようだ。


 ナウロスとニックに続きルヴィア達は城内を進む。
 城内は暖かくルヴィア達はホッとする。

 広い廊下は絨毯じゅうたんが敷かれているが壁や高い天井は金属で冷たい印象だ。アイルーン・キャッスルとはまるで雰囲気が違う。

 キョロキョロするルヴィア。
「兵士いないの?」
「彼らがそのようなものです」
 ニックが答えた。
 サングラスにスーツ姿の男が壁際で次々に敬礼していく。
「アーマー着てないのね」
「あれで充分なのです」


 ルヴィア達はダイニングルームへ通された。

 長テーブルにはズラリと並ぶ王宮料理。

 それを見たルヴィアは瞳を輝かせる。
「おいしそーっ♪」
「こちらへおかけください」
 メイドに誘導されルヴィア達はテーブルに着く。
「それでは、アイルーン・キングダムのプリンセス一行が我がオズフェウス・キングダムへ参られたことを祝して、乾杯」
「カンパーイっ♪」
 ナウロスの音頭でワイングラスを手にしたルヴィア達とニックは乾杯した。
 ルヴィアはワインを一気に飲み干しナウロスとニックを驚かせる。
「もー1杯おねがいねっ♪」
 笑顔でメイドに言った。
 そしていつものごとく料理に夢中だ。
 ルヴィアの食べっぷりにナウロスとニックはやはり圧倒された。
「ちょっとお姉さま、品がないわよ」
 恥ずかしそうに小声でルヴィアを注意するレーシアだった。


 ダイニングルームを出てルヴィア達とニックは廊下を歩く。
「皆さん、しばらくはこちらに滞在していけるのでしょう?」
「ええ、シティに行ってみたいし」
 ルヴィアがニックに答えた。
「このキャッスルでゆっくりしていってください。シティにはエアカーでご案内しますよ」
「えあかー?」
 初めて耳にする言葉にルヴィアがポカンとした。
「ドライブもかねてね」
「どらいぶ?」
「それはルヴィアだけに言ってるのか?」
 不愉快になったランディがニックを睨んだ。
「そう取られてもかまいませんけど?」
 それを聞いたランディはムカッとする。
「なんだとォッ!!? 僕のルヴィアに手を出したら許さないからなッ!!」
「君の? それは君1人の勝手な思い込みでしょう? ルヴィア王女にご結婚する気がないかぎり、君はフィアンセでもなんでもないのですよ。ねぇ?」
 ニックがルヴィアを見た。
「なッ!」
 言い返せないランディ。
 ニックは勝ち誇ったようにフッと笑った。


 入浴を済ませたガウン姿のルヴィアとレーシアはバスルームを出た。
 廊下にサングラスにスーツの男が2人居た。
「失礼しますルヴィア王女様。プリンスがぜひあなた様とワインを…」
「えっ! ワインっ♪」
 素早く反応してルヴィアの瞳が輝いた。
「プリンスのお部屋へご案内いたします」
「ええっ♪」
「申し訳ありませんが、レーシア王女様はお部屋のほうへお戻りくださいますか?」
「あ、はい」
「じゃーねレーシア」
 ルヴィアとレーシアは別れて男にそれぞれ誘導された。


 ニックの部屋。
 ドアを開けたニックは同じくガウン姿だった。
「これはルヴィア王女、よくいらしてくれました」
「ワイン飲みにねっ♪」
 笑顔で言うルヴィア。
「どうぞお入りください」


 オズフェウス・キングダムは文明が進んでいる為、近代的だ。
 広い部屋でまず目に入るのが壁の大画面のスクリーン。いわゆるテレビだ。その前に長方形のテーブルと横長のフカフカなソファーがある。ソファーの後ろには大きなベッド。その奥にはルヴィアの見た事もない機械製品が色々ある。

 ソファーでニックはテーブルの2つのワイングラスにワインを注ぐ。
「それでは改めて僕達の運命の出会いに乾杯しましょう」
 ワイングラスを手にしたニックがルヴィアと乾杯しようとした。
 だがルヴィアは既にグイっと飲み干していた。
「…………」
 冷や汗を垂らすニック。
「あーおいしーっ♪♪ もー1杯おねがいっ」
「ルヴィア王女、せめて乾杯をしてからに」
「いーじゃない。そんなのメンドイわよ」
「本当にワインがお好きなのですね」
「だーい好きよっ♪♪」
「ですけど僕のことはワインよりもお好きですよね」
「はッ!?」
 ルヴィアがニックを見た。
 ニックはワイングラスをテーブルに置きルヴィアの頭を押さえて唇を重ねる。
「!!」
 突然の事にルヴィアが目を見開いた。
「イヤァッッ!!!」
 ニックをドンッと突き飛ばしてルヴィアはソファーから立ち上がる。
 唇を拭って睨みつける。
「いきなりナニすんのよヘンタイッッ!!!」
「変態ッ!?」
 ルヴィアの発言にニックがピクッと反応した。
「何が変態なのですかッ!? この僕とベーゼを交わせて嬉しいでしょうッ!?」
「はあッ!!? ナニ言ってんのよッ!! そんなワケないでしょッ!! このあたしに手ェ出そーなんて100億万年ハヤイわよッ!!」
「あなたは僕のことを愛していないのですか?」
 驚き気味に尋ねるニック。
「イミわかんないッ!! なにカンチガイしてんのよッ!!」
「なぜですッ!? この僕の完璧なルックスにどこか問題でもッ!?」
「ゼンッゼンあたしのタイプじゃないわよ」
 ルヴィアがキッパリ言うとニックはガビーンとショックを受けた。
「そッ、そんなッ! この僕のどこがいけないというのですッ!?」
「ゼンブよ。あたしはね、カッコいくて男らしー人がタイプなの」
 それを聞いたニックはムカッとする。
「この僕が格好悪くて男らしくないとでもおっしゃるのですか?」
「そーよ。ちっともカッコいくないし男らしくないじゃない。弱そーだし」
「なんだとッ!!?」
 カッとなり立ち上がる。
「この僕をよくも侮辱してくれたなッ!!」
「ホントのコト言っただけじゃない」
 ニックはルヴィアを睨みつけていたが気の抜けたように肩をすくめる。
「フッ、どうやら僕はあなたのことを誤解していたようだ。あなたはとてもレディーとは言いがたいお方のようですね」
 ニックに発言にルヴィアはカチンッとする。
「どーゆーイミよッ!」
「とても強気ですし、言葉遣いや振る舞いにまったく品が感じられません」
「なんですってェッ!!?」
 ムッカーと腹が立った。
「まあ、ある意味あの男とはお似あいかもしれませんが」
「ちょームカツクゥ〜〜」
 嫌みを言われルヴィアは体をワナワナと震わせた。
「もう少しプリンセスらしく上品に振る舞われたらいかがです?」
「ほっといてよッ!!」
 ルヴィアの態度にニックはため息をつく。
「今夜はあなたと過ごすつもりでしたが、気が変わりました。帰してさしあげます」
「えっ!?」
「さぁ、早く出てください」
 ニックがドアに向かい開けるとルヴィアは不機嫌そうに出ようとした。
 だがニックは何かを取り出しルヴィアの首筋に押し当てる。
 次の瞬間ルヴィアの全身に電流がバチッと走った。それはスタンガンだ。
 意識を失い倒れそうになったルヴィアをニックは片腕で受け止める。


 部屋のドアが開き、ランディが出てきた。
 廊下に居た男が声をかける。
「ランディ殿、どうなされましたか」
「え、あのルヴィアの部屋に行こうと」
「いけません。お部屋へお戻りください」
「どうしてですかッ!?」
「夜這いは禁止なのです」
 男が冷静に言うとランディの顔が赤くなる。
「そっ! そんなのじゃありませんっ!! ちょっと話をするだけですからっ!」
「関係なく禁止なものは禁止なのです。どうかお戻りを」
 それを聞いたランディはムッとする。
「い、いいじゃないですかッ! 僕はルヴィアのフィアンセなんですよッ!」
「わからないお方ですね。ですがルヴィア王女様のお部屋へ行かれましてもいらっしゃいませんよ」
 男の発言にランディは驚く。
「エッ!? どうしてですかッ!?」
「それはお答えできません」
 男がそう言うとランディはカッとなる。
「教えろよッ!! ルヴィアはどこだッ!!」
 男の胸ぐらを掴み問い詰めたがランディは突き飛ばされる。
「ウワッ!!」
 廊下の壁に激突した。
「ランディ殿、2度とこんな真似をなさらないように」


 ニックの部屋。
「う……」
 大きなベッドで意識の戻ったルヴィアは目を開けた。
 ……ん? ここは? 
 目だけ動かして部屋を見回す。
 あ、ニック王子の部屋だ。
 あれ? あたしどうしたんだっけ。
 思い出そうとして起き上がる。
「お目覚めですか」
 隣に横たわるニックが声をかけた。
「ニック王子」
 次の瞬間ルヴィアの目が点になる。
「キャアア――ッッッ!!!!!」
 絶叫した。フルヌードだったからだ。
「驚かせないでくださいよ」
 両耳を塞いだニックが言う。おまえのせいだろ。
「なッ!! なんでェーッ!!?」
 真っ赤な顔のルヴィアが両腕で胸を覆った。
 そんなルヴィアにニックはフッと笑う。
「今さら隠しても遅いですよ。あなたのお美しいボディーは隅々まで拝見させていただきましたから」
「エエッ!!? どーしてこんなッ! どーなってんのよッ!」
 完全パニック状態のルヴィア。
 何故こんな事になったのか。
 思い出そうとしたのに思考が回らない。
 ニックは冷たい視線をルヴィアに向ける。
「あなたがこの僕に反抗するからですよ」
「なんですってェッ!!? だからこんなコトしたってのッ!!? ふざけないでよッ!!」
 ルヴィアがキッとニックを睨みつけた。
「今夜あなたを僕のものにすると決めたからには、成しとげないとプライドが許しませんからね」
 怪しく微笑むニックにルヴィアは怒りが込み上がり体をワナワナと震わせる。
 なんて奴だ、許せない。人の体を勝手に見るなんて最低だ。
 怒りが頂点に達しブチッとキレた。


 次の日。
 廊下でルヴィア達は顔を合わせた。
「ルヴィア、昨夜はどこに行ってたんだよ」
 それがずっと気がかりでランディは寝付けなかった。
「部屋にいたわよ」
「エッ!? だってルヴィアは部屋にいないって言われたぞッ!?」
「……ちょっとニック王子の部屋行ってたの」
 元気なく答えるルヴィア。
「何ィッ!!?」
 ランディが目を見開いた。
「どうしてだよッ!!」
「ワイン飲みに行ったのよ」
「それだけかッ!!? 何もされなかったよなッ!!」
「…………」
 キスはされた。
 だがそれよりも意識のなかった間、何もなかったと信じたい。
 でも裸だったし、ニックは全部見たと言っていた。
 しかも自分のものにしないとプライドが許さないとかなんとか。
 ……ニックに抱かれてしまったのか。
 答えず表情を曇らせたルヴィアにランディは不安になる。
「ルヴィア? なんで黙ってるんだよ。まさか、何かあったのか? そんなわけないよなっ!」
 何かあったなんてランディも信じたくない。
 そこへ男が歩み寄ってきた。
「プリンセス方、ご朝食の準備が整いましたのでご案内いたします」


 ダイニングルーム。
 ルヴィア達に気づいたニックが駆け寄ってきた。
「ルヴィア王女、昨夜はこの僕をよくも……」
 怒りの表情でルヴィアを睨みつけた。
 頬には湿布シップ。恐らくルヴィア・パンチをお見舞いされたのだろう。
 ニックを一目見るなり不愉快になったルヴィアはツンッと顔を背ける。
「おまえッ!! 昨夜ルヴィアに手を出さなかっただろうなッ!!」
 ランディが詰め寄るとニックはフッと笑う。
「出しましたけど?」
「なんだとォッ!!?」
 憤慨するランディにニックは肩をすくめる。
「それがどうしたのです? 大体あなたは言動が目に余ります。この僕のようにもう少しジェントルマンらしくなさったらどうですか? ああ、あなたにこのようなことを申しても無理な相談でしょうか」
 馬鹿にしたようにあざ笑われランディはムッカーと腹が立った。


 食事を済ませたルヴィア達はナウロスに向かった。
「キング、あたし達もー行きます。おセワになりました」
「何を申す、まだ来たばかりではないか」
「でもシティに行きたいし」
「シティならニックに案内してもらいなさい。だからもう少しゆっくりしていきたまえ」
「アンナイなんていーです。あたし達カッテに行きますから」
「ルヴィア王女、シティにはこの僕がご案内すると申したでしょう」
 口を挟んだニックにルヴィアとランディは虫酸むしずが走りキッと睨みつける。
「けっこーよッ!!」
「そんなことをおっしゃってよろしいのですか? シティはそちらのキャッスルタウンと違いとてつもなく広いのですよ。迷子にでもなったらどうするのです?」
「マイゴですってッ!!? バカにしないでよッ!!」
「それにエアカーがないと移動も大変ですよ」
 ニックがそう言うとナウロスはうなずく。
「そのとおりだ。シティに行くならニックに案内してもらったほうがよいぞ」
「お姉さま、お願いしましょうよ」
「エエー」
 レーシアに言われイヤーな顔をするルヴィアだった。


【TALE28:END】







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