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ですぷり! −DESTINY OF PRINCESS−
作:天使美羽



TALE26:ピクシーにお願い☆


 次の日。
 ランディとレーシアの部屋。
 ソファーでランディはため息ばかりつき元気がない。
「ランディさん、昨夜お姉さまと何かありました?」
 向かいのソファーで読書をしていたレーシアがランディの様子を見かねて尋ねた。
「うん……。ルヴィアを泣かせちゃったんだ……」
「エッ!? お姉さまが泣いたんですか!? どうしてですか!?」
「そ、それはちょっと言えないんだけど……。また大ッ嫌いって言われちゃったんだ。せめてさ、嫌われたくはないよなぁ」
「そうですよね。でも諦めないでがんばってくださいね!」
「……うん、ありがとう」
 元気なく微笑むランディ。
 ランディと同室にしてもらったのにレーシアは結局応援してしまっている。
 でも、それでいいのだ。ランディにはルヴィアと幸せになってもらいたい。
 ランディが幸せなら自分も嬉しい。
 健気けなげに思うレーシアだった。
「どうしたらルヴィアに嫌われなくなるかなぁ……」
「そうですね……。あっ! そうだわ!」
 レーシアが何かをひらめいたように本を探し始める。
「どうしたの? レーシアちゃん」
「これだわ。以前にも使ったことのある妖精術書。これに縁結びの術があったんです」
「え、縁結びっ?」
 レーシアは術書をペラペラとめくる。
「ありました、これです」
「どっ、どれっ!?」
 開かれた術書をランディはドキドキしながら見入った。
「読めないや」
「この魔法陣を描いて呪文を詠唱すればいいみたいですよ。以前の魂入れ替えの術と同じですね」
「てことは、ルヴィアと魔法陣に立たなきゃいけないのか? そんなこと、ルヴィアが引き受けてくれるかなぁ」
 不安そうに言うランディ。
「その必要はありません。魔法陣は小さい物で充分みたいなので。さっそく試してみますか?」
「うんっ」


 レーシアは紙に羽ペンで魔法陣を描いた。
「これでいいわ」
「こんな小さいんだ」
「ええ、それじゃ呪文を詠唱しますね」
 美しい旋律の不思議な言葉を詠唱する。
 紙に描いた魔法陣が光り輝き、まばゆい光が立ち上る。
 光の中に小さな人影が現れた。
「な、なんだっ!?」
 ランディが注目する。
 光が消えると、その姿が明らかになる。
 背に薄い透明感のある綺麗な羽根の生えたワンピース姿の可愛い少女。以前(TALE6)にも登場したピクシーだが別人で手には弓、矢の入った筒を背負っている。

「はっじめましてぇー☆ あたしはぁ、愛のキューピッドォ、ラブリーピクシーのぉ、クミちゃんでぇーす☆ ヨロシクねぇ☆」
 クミが可愛くウィンクした。やはり間の抜けた話し方だ。
「ピクシーッ!?」
 驚くランディ。初めてピクシーを目にしたからだろう。
 クミはレーシアを見る。
「あなたがぁ、あたしをぉ、召喚してくれたのねぇ? どうもありがとぉ☆ それではぁ、あなたのぉ、好きな人とぉ、ラブラブにぃ、してあげるぅ☆」
 ウィンクして背から先端にハートの付いた矢を1本取り弓につがえる。
 それを見たレーシアは慌てる。
「まっ! 待ってください! 協力してほしいのはこちらのランディさんです!」
 ランディに手を差し伸べた。
「こっちのぉ、お兄さんなのぉ?」
 クミがランディを見つめた。
「ふんふん。好きなとぉ、なかなかラブラブにぃ、なれないのねぇ?」
「えッ!? わかるのかッ!?」
 クミの発言にランディが驚いた。
「もちろんよぉ☆ あたしはぁ、愛のキューピッドォ、なんだからぁ☆ このクミちゃんにぃ、任せといてぇ☆ ばっちりラブラブにぃ、してあげるぅ☆」
 クミがウィンクして言うとランディは感激して瞳を輝かせる。
「本当にっ!?」
「それじゃあ、愛しの彼女のぉ、ところにぃ、行きましょうかぁ☆」
「うんっ」
(レーシアッ!)
 ルヴィアからテレパシーが届いた。
「あっ」
「ん? どうしたレーシアちゃん」
「お姉さまからテレパシーです」
 ランディに答えた。
(なあに? お姉さま)
(もーこのタウンいてもタイクツでしかたないわ。次のモクテキ地決めるから、あんただけ部屋来て)
(え……。わかったわ)
 シブシブ返事をするレーシア。
「ランディさん、ちょっとお姉さまの部屋に行ってきます」
「えッ!? 1人でッ!?」
「お姉さまがそう言っているので、すいません」
 申し訳なさそうに部屋を出ていった。
 部屋にはランディとクミが残った。
「あのぉ、エルフの血をぉ、引いてるわねぇ☆」
「えッ!?」
 唐突なクミの発言にランディが驚いた。
「わかるのかっ?」
「そりゃあねぇ☆ あたしはぁ、ピクシーなのよぉ? これでもぉ、妖精族なんだからぁ。あのにぃ、魔法力をぉ、感じるものぉ。あのとぉ、それともう1人ぃ、感じるわぁ☆」
「ルヴィアのことか」
「その2人ってぇ、過去にエルフとぉ、人間がぁ、共に魔族とぉ、戦った時にぃ、産まれたぁ、ハーフエルフの子孫?」
「そうだよ。それは知ってた」
「へぇ、驚いたわぁ☆ あなたからはぁ、すごい法力をぉ、感じるわよぉ☆」
「ああ、アイルーン・ソードとアーマーのせいか」
 ランディは腰からアイルーン・ソードを引き抜きクミに見せた。
「すごーい法力をぉ、感じるわぁ☆ これがぁ、竜族から授かりぃ、魔族を倒したぁ、聖剣……」
 アイルーン・ソードを熱心に見つめた。
「その伝説って本当なのか? アイルーン・キングダムにも伝わってるんだけど」
「おそらく本当よぉ☆ その時はぁ、さすがにあたしもぉ、生まれてなかったけどねぇ☆」
「ふーん。あっ、それともう1つ聞きたいんだけど、どうして妖精族は人間を恐れてるんだ?」
「魔法力を持つぅ、エルフの血がぁ、人間の血にぃ、混ざるのをぉ、恐れてるのよぉ」
「なんで?」
「人間はぁ、力が強いでしょぉ? あたし達ぃ、妖精族はぁ、力が弱いのよぉ。人間とエルフからぁ、産まれてくる子はぁ、力強さとぉ、魔法力をぉ、持つんだからぁ、何よりぃ、妖精族のぉ、恐れるぅ、存在になるわぁ。その力をぉ、悪用してぇ、世界をぉ、破滅させるとかねぇ」
「ルヴィアとレーシアちゃんはそんなことしないッ!!」
 ランディがキッパリと断言した。
「だといいけどねぇ☆ それなのにぃ、エルフの掟をぉ、破ってぇ、過去に人間とぉ、一緒になってしまったぁ、エルフがいたのよぉ。そのエルフはぁ、死んだらしいけどぉ」
「ふーん」
 部屋のドアが開きレーシアが戻ってきた。
「ランディさん、次の目的地が決まりましたよ」
「へぇ、どこ?」
「オズフェウス・シティです」
「オズフェウス・シティッ!? あの機械文明のすごいシティか」
「ええ。世界の2大王国と言われる機械王国オズフェウス・キングダムのシティです。お姉さまはあくまでもシティのほうへ行ってみたいと」

 2大王国のもう1つは勿論アイルーン・キングダムだ。

 それを聞いたクミは慌てる。
「ちょっと待ってぇ! あたしはぁ、どうなんのぉ!? お仕事しにぃ、来たのにぃ!」
「大丈夫。僕の好きな人は一緒に旅をしてるんだ。僕と一緒に来て」
「そうなのぉ?」


 ランディとレーシアが部屋から出ると、そこにルヴィアが居た。
「ランディ、聞いたと思うけどオズフェウス・シティに行くわよ。とりあえず近くのポートタウンからそこまでフネ出てるかたしかめるからサッサと行くわよ」
 ルヴィアが冷たい視線で言った。
「あ、ああ」
 歩きだしたルヴィアにレーシアも続く。
 ルヴィアを見たクミはランディの耳元で囁く。
「さっきぃ、魔法力を感じたぁ、もう1人だわぁ☆ あなたのぉ、愛しの彼女ねぇ☆」
「そうだよ」
 顔を赤らめたランディが照れながら言った。
「意外よねぇ。ああいうがぁ、タイプなんだぁ」
「早いところ両想いにしてくれないかな?」
「オッケェー☆ まずはぁ、あなたの胸にぃ、アローを放つぅ☆」
 クミがランディから離れると背から矢を1本取り弓につがえた。
「ラブラブアロォー☆」
 矢を放った。
 小さな矢は輝きながら大きくなりランディに迫る。
「うわッ!!」
 驚いたランディの胸に矢が刺さり消えた。
「ど、どうなったんだっ!?」
「うふふぅ☆ これであのにもぉ、アローを放てばぁ、2人はもぉ、ラブラブよぉ☆」
「ラブラブ……」
 ルヴィアとイチャイチャベタベタしている姿を妄想した。
 まいったなぁ。
 1人照れまくりデレデレするランディだった。


 街道を歩くレーシアは、ふと振り返る。
「あっ、お姉さま。ランディさんが来ていないわよ」
「ほっといて行くわよ。待ってらんないわよ」
「お――いっ!! 待ってくれ――っ!!」
 そこへランディが駆け寄ってきた。
「ナニやってんのよ、置いてかれたいの?」
「ごめんごめん」
 笑顔で謝るランディにルヴィアは呆れてため息をつき再び歩きだした。
「さっ、ルヴィアにも頼むよ」
 ランディがクミに小声で言った。だがクミは困り顔だ。
「そうしたいんだけどぉ……」
「何か問題でも?」
「アローはぁ、胸に刺さないとぉ、いけないのぉ」
「さ、刺してくれれば」
「刺すにはぁ、あのの前にぃ、出ないといけないわぁ。あのにはぁ、魔法力があるからぁ、あたしの姿がぁ、見えちゃうのぉ」
「エッ!?……じゃ、じゃあなんとかごまかして、そのスキに……」
 懸命に考え提案するランディ。
「あたしぃ、嘘はつけないわぁ。それにねぇ……」
「そ、それに?」
「あのはぁ、あなたのことぉ、相当嫌ってるぅ、みたいよぉ。両想いにぃ、するのはぁ、難しいわねぇ」
 クミの発言にランディはグワ――ンと大ショックを受けた。
「ど、どうしようもないのか?」
 涙をだーっと流す。
「でも嫌いじゃなくすぅ、くらいならぁ、できるかもぉ、しれないわぁ」
「えっ!? それでもいいっ! 頼むっ!」
 ランディのさも誰かと話しているような様子に行き交う町人は気味悪がりヒソヒソと話していた。


 冷や汗をかいたクミは緊張しながらルヴィアの背後に近づき前に出た。
 ルヴィアはすぐ何かの気配に気づく。
「ん?」
 周囲をキョロキョロと見回すルヴィアにレーシアは声をかける。
「どうしたの? お姉さま」
「なんかいるよーなケハイが……。あーッ!!」
 クミに気づいたルヴィアが指差した。クミは既に弓に矢をつがえている。
「あんたどっかで見たコトがッ!」
 弦を引き弓を構えるクミ。それを見たルヴィアはうろたえる。
「な、ナニッ!?」
「ラブラブアロォー☆」
 クミが矢を放った。
 矢は輝きながら大きくなりルヴィアに迫る。
 やった! これでルヴィアは。
 ランディが喜んだのも束の間ルヴィアはとっさに矢を避けた。
「ああー!! 避けたわねぇー!!?」
 クミが怒った。
 ルヴィアの額に青筋が立ちクミを捕まえ握りしめる。
「やぁ――!!」
「ナニすんのよォ〜〜。アブナイじゃないのォ〜〜」
「お姉さまやめて!! ピクシーなのよ!!」
 止めたレーシアをルヴィアはキッと睨む。
「だってコイツあたしに矢うったのよッ!!?」
「それがぁ、お仕事ぉ、なんだものぉ!」
「いったいどーゆーコトッ!!?」
 クミに問い詰める。
「その前にぃ、離してぇー」
 クミが苦しそうに言うとルヴィアは離してあげた。
 フラフラと羽ばたくクミ。
「あなたがぁ、あのお兄さんをぉ、嫌ってるからぁ…んぐっ」
 正直に言うクミを今度はスッ飛んできたランディが握った。
「い、言うなよッ!」
「…………」
 そんなランディをルヴィアは冷たい視線で見つめた。
「アンタのシワザね……」
 ランディはギクッとして顔が青ざめる。
「またなんかヘンなコトたくらんでるわねェ〜〜!!? どーしてアンタいつもそーなのよッ!!」
 ルヴィアがランディの背後から首を絞めた。
「うッ!……グェ……」
 ランディに離されたクミは更にフラフラ状態だ。
「お姉さま!! ランディさんは悪くないの!! やめて!!」
「エッ!?」
 レーシアの声にルヴィアはランディの首を離した。
「ピクシーは私が召喚したの」
「あんたがッ!!? どーしてそんなコトッ!!」
「お姉さまがランディさんのことを嫌うから……。仲良くしてほしいの」
「そんなコトするヒツヨーないじゃないっ! だってあんたは…」
 途端にルヴィアはハッとする。
 クミが再び弓に矢をつがえてルヴィアの前に現れたのだ。
 レーシアはホッと胸を撫で下ろす。
「チョットやめてよッ!!」
「でもあたしはぁ、お仕事をぉ、終わらせなきゃぁ、フェアリーランドにぃ、帰れないのぉ! ラブラブアロォー☆」
「キャッ!!」
 ルヴィアが素早く矢を避けた。
「ああー!! また避けたわねぇー!!」
「このォ、2度と帰れないよーにしてあげるわッ」
 額に青筋を立てたルヴィアが右手をクミに向けて突き出した。それを見たクミは驚愕する。
「精霊術をぉ、使う気ぃ!? とんでもないだわぁ! こんなか弱いクミちゃんにぃ、手をあげるしぃ、悪人よぉ! このぉ!」
「なんですってェッ!!?」
 ルヴィアがカッとなった。
「お姉さまダメ!!」
「ガッ……」
 レーシアがアイルーン・ロッドでルヴィアの頭を殴った。
「イッターッ!!」
 座り込んだルヴィアが両手で頭をさする。
「今よクミさん!!」
「は、はい!」
 レーシアに言われクミが素早く弓に矢をつがえる。
「ラブラブアロォー☆」
 矢を放った。
 ルヴィアがハッと顔を上げると輝いた矢はすぐ近くに迫っていた。
 避ける事も出来ず矢はルヴィアの胸に刺さりカッと発光して消えた。
「やったーっ!」
 ランディ、レーシア、クミが喜ぶ。
「…………」
 座り込んだまま顔を伏せているルヴィア。
 ランディはドキドキしながらルヴィアに歩み寄り声をかける。
「ルヴィア、大丈夫か?」
 手を差し出すとルヴィアは顔を上げる。
「ランディ……」
 ランディの手を握り立ち上がった。
 嫌われていたら決してしない行動だ。ルヴィアが自分の手を握るなんて悲しいがあり得ない。それはすなわち矢が効いているという事。
 感激したランディはクミに駆け寄る。
「ありがとうっ!」
「よかったわねぇ☆ これからはぁ、あなたがぁ、なんとかしてぇ、愛を芽ばえさせるのよぉ☆」
「わかった」
「それじゃあ、あたしはぁ、フェアリーランドにぃ、帰るわぁ☆ さようならぁ☆」
「さようなら」
 ランディとレーシアが言うとクミは手を振りながら消え去った。
「レ〜シア〜〜」
 突然、背後から聞こえたルヴィアの低い声にレーシアは肩をビクッと震わせる。
 冷や汗をかき恐る恐る振り返るとルヴィアが恐ろしい形相をしていた。
「な、なあに? お姉さま」
「なーに? じゃないわよッ!! あたしのアタマよくもなぐってくれたわねェーッ!! 妹だからってゆるされると思ってんのッ!!?」
 ルヴィアがレーシアの首にヘッドロックをかけた。
「ご、ごめ…なさ……」
 それを見たランディは慌てる。
「ルヴィアッ!! それくらいで」
 止めるとルヴィアはヘッドロックを解除し悲しそうな表情でランディを見つめる。
「ランディっ! ヒドイわよねっ!? ちょーイタかったのよっ!?」
「え、うん……」
 ああ、こんな事を言ったらレーシアに悪い。
 ルヴィアがこうなったのはレーシアのおかげで、悪いと思いつつも嬉しいランディなのだった。チャンチャン♪


【TALE26:END】


【すれ違う想い編】終了です。

お読みくださった皆様、ありがとうございました♪






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