中編
あるところにおじいさんとおばあさんがいました
おじいさんは山へ柴刈りに おばあさんは川へ洗濯にいきました
おばあさんが川で洗濯をしていると 上流から大きな桃が流れてきました
その桃を家に持ち帰ってあけてみると 中から元気な男の子が出てきました
二人はこの男の子を育てることにしました
男の子は桃から産まれたので ももたろうと名づけることにしました
残った桃を庭に埋めるとみるみる育ち なんと立派な桃の木が生えました
この桃の木は毎年花を咲かせるものの実がならず なんとも不思議な木でした
そしてももたろうは二人の愛情を受けてすくすくと育っていきました
ももたろうが12歳になったある日 おじいさんがいつものように柴刈りから帰ってくると 村の人が庄屋の屋敷の周りに集まっています
―もし 皆さんで集まってどうしましたか
―太郎さん まだ何もご存じないのですか とうとうでたのですよ 鬼が
―なに 鬼が出たと
いま都の人々の間では 鬼が洛中に現れたことで持ちきりでした
しかしそれも都だけのこと
まさかこんなところまで鬼が来るとは誰も予想していなかったのです
―それで 一体どこに出たのですか
―それが浜辺の方だと なんでも権作が鬼に食われてしまったらしい
―なんて恐ろしい
―太郎さんも気をつけなさい
おじいさんは家に帰ると おばあさんと桃太郎にこの話をしました
するとももたろうがすっくと立ち上がると こう言いました
―おじいさん おばあさん いままで私を育ててくれてありがとうございました
―いま都には鬼が現れ そしてこの村にも被害が及んでいます
―私が鬼を退治しにいきましょう
それを聞いた二人は驚きました
確かにももたろうは生まれから不思議な子供でしたが まさか鬼退治に行くなどと言い出すとは思ってもみなかったからです
―待ちなさいももたろうや 鬼は凄い力と強靭な牙を持つという そんなものに敵うわけはない
二人は必死に説得を続けましたがももたろうの気持ちは変わりません
とうとう二人も折れ せめてももたろうを立派に送り出そうと決めました
―おじいさん 私が誰だか道行く人にもわかるように立派なのぼりを作ってください
―おばあさん 誰もが頬を落とすような美味しい黍団子を作ってください
言われた通りにおじいさんはのぼりと服を おばあさんは美味しい黍団子を作りました
ももたろうは庭の桃の木から枝を一本取って来ると それを削って木刀を一振り作りました
そしてついに出発の日がやってきました
おじいさんの作ってくれたのぼりを背に
おばあさんの作ってくれた黍団子を腰にくくり
木刀を腰に携えてももたろうは言いました
―それではおじいさん おばあさん 行ってきます
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