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チューブ式アイスの悲劇 〜変態の形〜
作:カエオルーン


 寒くて、冷たくて、凍えているのに目覚めることの叶わない、ながいながい冬眠期間。
 地獄のようなそれを、僕はただひたすらに耐え続けている。
 ときおり襲ってくる暖かな風に身を任せれば、意識を保つことを放棄できた。
 意識さえなければ、僕はこんな苦痛を感じずにいられるのだろう。
 それでも僕は、自分が誰かに幸せを運んでいるところを見たくて、ずっと耐えている。
 僕が誰かに幸せを運ぶ。
 それはとっても嬉しくて、誇らしいことだから。
 僕は、そのとき待ち望んでいる―― 


 暖かな風に耐えていたあるとき、それよりももっと暖かな手が僕を拾い上げた。
「これくださーい」
「はい、チューブアイスですね、二百円になります」
 僕は買われたのだ。
 その事実に、緊張して、でもそれ以上に嬉しくて、僕は胸がいっぱいになった。
 そして幸せを運ぶときが迫ってきていることを感じて、僕は袋の中で精一杯おいしく見えるように準備した。
「おーい、アイス買って来たぞー」
「待ってました!」
「俺の息子がもう我慢ならないぜ」
 そしてどこかの部屋に入ってから、
 声からして何人かの人に囲まれながら、ついに僕は袋から取り出された。
 そのときに触れた手が、火傷するんじゃないかって思うぐらい熱くて、暖かくて。
 それが嬉しくて、泣きたくて、でもそれよりもずっと幸せを届けたくて、僕は手の持ち主を見上げた。
 十代後半ぐらいの若者で、優しそうな目をしている端正な顔立ちの人。
 僕はこの人に幸せを届けるのだろう。
 めいいっぱい体に霜を振りたくって、おいしさをアピールする。
 ――――だけどその人は、僕をもう一人の人に手渡した。
 そちらも十代後半ぐらいの若者、でもなんか馬鹿っぽい顔立ち、しかもなぜか裸になっている、暑いからかな?
「うっほほー」
 その人は奇声を上げながら、中のものを押し出すように僕をしごき始めた。
「あっ、あっ、ああ、出るうぅ〜」
 視点を変えて中のものが向かう先に見えたのは、……棒だった。
「くっ、おっお前、そりゃないって」
「ほ、ほんとマジない、ありえんわ」
 周りの人が大声で笑ってる。
 そ、そんな……助けて!
 僕が必死の思いでさっきの優しい目の人を見ても、その人はただ苦笑いしているだけだった。
「うっひゃ〜、出てきたぜ。白いのが出てきましたぜ」
 僕の中のすべてが、その棒にかかっていく。
 本当であれば、誰かに幸せを届けるはずのもの。
 それが、訳の分からないおふざけに使われている。
 ああ、もし僕がこんなに無力でなければ、抵抗するのに。
「冷たい、めちゃくちゃ冷たいよーん」
 そして僕はすべてを奪い取られて、床に放り捨てられた。
「ヤ、ヤバ……それ……」
「も、も……やめ……」 
 笑い声が、なんだか遠くに聞こえる。
 先ほどまでの中にあった充実感がさっぱり消えて、僕はふにゃふにゃと、力なく床に這いつくばるしかなかった。
 ……こんなことのために作られたんじゃないのに……ひどいよ……。
 悲しみに暮れる中、僕は最後の夢を見る。
 名前も知らない誰かを、幸せにする夢を――――
 

 ――後に残ったのは、変態に変態させられたチューブの残骸――














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