第9話:悪夢
奇妙な感覚だ、ここはどこで俺は何をしていたのか。確か、変な二人の子ども神様に出会い、話を聞いた後に眠りについたはずだ。
俺は今、ベッドで眠っている。ここは俺の実家の部屋だと感覚的に理解できる。俺は上体を起こそうと試みるが、身体がまったく動かない。それにより強度の不安が生じる。
さらにそこで、何かが俺の上に乗っていることに気がつく。しかも、こいつは間違いなく俺を殺そうとしている。どうしてそんなことがわかるのかはわからない。しかし、俺は俺の上に居座る生物から、多大な殺意を感じ取っていた。
俺の視線が胸部へと移る。曖昧だがリアルで異常な生き物が俺を凝視している。怖い、早く逃げなければ殺される、躊躇も同情もなく殺されてしまう。俺はパニックになりながら、とにかく身体を動かそうとする、この生き物から逃げるために。
俺の抵抗が実ったのか、俺は悪夢から解放される。現実に戻ってきたのだ。俺は寝ころんだまま額の冷や汗を右手で拭い、激しく鼓動する心臓を抑えようとした。しかし、それを何かに阻害される。
俺は瞬時に目線を下におろした、そこには幸せそうに熟睡するヒュプがいる。俺の手はヒュプの頭に触れていた。こいつが悪夢の根本だったらしい。状況を理解でき、俺の身体に安心感が広がる。
ヒュプを下ろして、ウェスタの隣に放置する。携帯電話を開き、時間を確認だ。そして俺は悪夢の続きを見ることになる、要するに寝坊した。
猛ダッシュで着替えると、トイレに入り、鞄を拾い上げて、部屋を出る。食事なんてしていられない、そんな余裕もないほどに時間が迫っていた。部屋の鍵を掛けて、全速力で駅へと向かう。間に合ってくれ。
扉が閉まる寸前に電車に飛び乗ることができた、そこでひとまず安心だ。後は忘れ物をしていなければいいのだが、昨日のうちに用意を済ませておいたので大丈夫であろう。
あの二人は家で大人しくしているのだろうか。まだ眠っていると思われるが、火事にだけは気を付けてほしい。窓の外では日常の風景が流れ、いつもと変わりない景色が広がっていた。
学校へつき、席に座ると、力が抜ける。朝からいいこと一つもなしだ。最近の俺はついていないと、ことごとく思い知らされる。放心状態の俺の所に大杉がやってくる。
「今日はどうしたの? 凄く息が荒いけど、危ないことでも考えてた?」
こいつは本当に女子なのか、他の女子はそんな下ネタ言わないぞ。俺は大杉に向かって朝の出来事を告げる。
「ちょっと寝坊してな。朝からハイスピードで動いてたから、モーターがヒートしてるんだ」
「あら、残念。頭のモーターじゃないんだ」
「頭のモーターのことなら春日井に聞いてくれ」
噂をしていると春日井がやってきた。
「二人でいい話してるのか? それなら、俺も混ぜてほしいな〜」
「今日の授業の話だけど、混ざりたい?」
大杉が嘘をつく、それを聞いて春日井が数歩下がった。
「おおっと、高度な話はなしだぜ! 足し算までが俺の領域だ」
「そうだったの? 残念ね、私は頭の悪い人好きじゃないの」
「引き算も掛け算も割り算も得意です!」
春日井が必死に得意分野を主張するのを無視して大杉が去っていく。こいつらの会話は毎回決まってこういう結果だ。大杉が春日井の告白を了承することはないであろう、今後もないと思われる。
チャイムの音が教室に響きわたる、授業開始だ。春日井が席に着き、他の生徒も席へと戻る。そして、俺は鞄を開き、言葉を失う。鞄の中にはヒュプがいた、シャーペンで遊んでいる。俺に気が付くとシャーペンを見せびらかしながら口を開いた。
「カチカチしたら伸びる」
俺は苦笑いをしながら小さく頷く。一体これからどうしろと言うのか? 俺が混乱する中で先生が言葉する。
「授業を始めます、教科書を用意して」
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