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第8話:二人の生活
 その後、俺は二人からさらに詳しい話を聞いた。ウェスタは清掃の守護神であり、ヒュプは眠りの守護神であるらしい。神様と言っても、まだ二人は未熟な存在で本格的な力はないそうだ。学生の俺も人のことは言えない、どちらも似たようなものだ。

 ウェスタ達はかなり昔からこの部屋に住んでいるようで、このアパートで殺人は起きていないという。きっとウェスタ達による奇怪な出来事が元で、噂が噂を呼び、一人暴走してしまったのだろう。

 二人がこのアパートに住んでいることに特に深い意味はなく、この部屋に居ついたのも居心地の良さが原因であるそうだ。
 立派な神様になると神社などに住むことができるが、見習いのうちはそれができないらしい。他の見習いはどうしているのかというと、神様専用の家やホテルで過ごすことが多く、ウェスタ達は特殊であると聞いた。

 普通の神様は人間の家などに住みはしない。幽霊と誤解されたり、悪霊と誤解されたり、碌な事がなく、行動も制限されており、自由がきかないので住んだとしてもすぐに嫌気が差してしまうのだ。俺も神様になるとしたら、そんな家に住むことはないだろう。

 大まかな話を聞き終えた俺は今後の事に頭を悩ます。悪霊ではない分扱いづらく、神様を家から追い出すのは少々罰当たりな気がする。この部屋の生活に慣れてしまったこいつらにとって他へ行くことは苦痛極まりないようだ、まったく出ていく気配がない。

 頭を抱える俺の隣で二人がふざけ合っている。どこからどう見ても神様に見えないのは、二人が子どもであるからというわけではなく、この態度と呑気さからであろう。不意にウェスタが口を開いた。

「あなたのお名前は?」
「タックンと呼んでくれ」

 こいつらには丁度いい呼び名だ。ひいらぎ拓海たくみという実名を述べたところで、ヒー君だの、ター君だの、変なあだ名をつけられることに変わりない。それならば春日井がつけた『タックン』というあだ名の方が聞き慣れている。二人が顔を輝かせて俺を見る。

「タックンだ」
「タックン、タックン」
「タック〜ン」
「タクタク」

 非常に耳障りだ、どうしてこうも連呼するのか。意味もないのにあだ名を連呼するのは止めてほしい。

 二人との出会いにより、いろいろと疲れた俺は、とりあえずこいつらの行方を決めるのは後回しにすることにした。今日はもう寝よう。今日寝て、明日起きてみれば、またこいつらが見えなくなっているかもしれない。そう期待しながら布団に入る、それを見てヒュプが言う。

「寝るの?」
「あぁ、明日は早いんでな。後で電気を消しておいてくれ」
「え〜、もっと遊ぼうよ〜」とウェスタ。
「二人で遊べばいいだろ」
「ん〜」

 ヒュプが残念そうな声を出す。俺は目を瞑り、頭の中を白くした。これ以上、頭を使うのはまっぴらごめんだ。それでなくとも明日の授業は俺の苦手分野でエネルギー消費が激しいのだ。今の内にエネルギーを充電しなくていつ充電しろというのか?

 俺が寝ていると電気の消える気配がした。あいつらも諦めがついたらしい、押入れにでも入って寝るのだろう。そう思っていたら、俺の布団に乱入者が現れる。見えずとも誰だかわかる、ウェスタとヒュプだ。もちろん、俺は抗議する。

「おい、何なんだ? お前らは押入れで寝るんじゃないのか?」
「引っ越し」

 ヒュプが俺の左脇にへばりついて言う。それに続けて、俺の右腕に抱きつきながらウェスタが同意する。

「そうなの、お引っ越しなの」

 俺は二人を追い払う気力もなく、そのまま眠ることにした。

 数分も経たぬうちに、左側から寝息が聞こえてきた、ヒュプである。眠りの守護神であるだけに寝るのが早いのか。俺がそんなことを考えていると、右側からも寝息が聞こえてきた、ウェスタだ。こちらも先ほどまで大いにはしゃいでいたので疲れが溜まっていたのだろう、気持よさそうに眠っている。

 心地よく眠る神様二人に囲まれながら俺が思うことは一つ、新たに布団が二つほしい。

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