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第77話:海〈その12〉
 姉貴と青木達の戦いが終わりを告げる。結局は大杉の凡ミスにより、姉貴が勝利した。大杉が残念そうに青木に言う。

「今回は私の非を認めるわ。ごめんなさい、青木君」
「別にいいですよ、気にしてませんから。大杉さんが怪我をしなかっただけで十分に満足です。それに、大杉さんを怖い目にあわせてしまったのは僕の責任ですし、謝らなければいけないのはこちらの方です」
「そ、そんなことないわよ。私は結構楽しかったし」

 大杉が慌てふためきながら言葉する。やっぱり惚れたな、傍目から見てもよくわかる。案外に大杉も乙女チックなところがあるらしい。俺の中で、大杉の女性レベルが数段上がる。

 春日井は大杉の異変に気づいていないようだ、戦いの感動を皆に語っている。そんな中、青木が俺の所に来て口を開く。

「では、後は任せましたよ」

 青木は口にするや否やぶっ倒れた、同時にシバルが抜け出してくる。俺はため息を付きながらシバルに言う。

「もうちょっと穏便に物事を済ませられないのか?」
「こればかりはどうしようもありません。この人の体力不足が問題です」

 シバルが倒れた青木に目を向ける。青木の周りには春日井と大杉だ。姉貴が青木に目を向けて口を開く。

「あらら、大丈夫かい? お姫様を守るのに頑張りすぎたかね?」

 その後、俺は青木を背負い、春日井と神様組を連れて部屋へと戻った。大杉や桜井は青木を心配していたが、姉貴はまったく気にしていないようだ。しばらく寝たら起きるだろうと笑いながら言っていた。

 俺は青木をベッドに寝かせて、春日井と駄弁りながらテレビを見る。途中でヒュプが勝手にテレビのチャンネルを変えるというアクシデントが起きたが、電波が悪いという理由で誤魔化すことができた。

 しばらく経って、青木が目覚めたので、皆で大浴場に行く。姉貴達と途中で出会い、桜井にウェスタを預ける。

 シバルはテレビに夢中だったので放ってきた、見ていたチャンネルは料理番組だ。また新たなる料理ネタを仕入れるつもりだろう。俺はそれを阻止しない、後で俺も教えてもらうつもりだ。

 風呂に入ると、部屋に戻り、男組で駄弁っていた。そこへ大杉と桜井がやってくる。話を聞くと、姉貴は爆睡しているそうだ。
 死神とバトルした後では、いくら姉貴といえども疲れが溜まっていたのだろう。寝相の悪さでベッドから落ちないでくれよと弟なりに心配する。

 一方、死神はどうしているのかと言えば、大浴場へ行くと言って出て行った。こいつは風呂が好きなのだ。風呂に入らなかった日を見たことがない。年寄りが風呂好きだというのは、あながち間違いではないらしい。

 俺達は皆で出来るカードゲームをしながら時間を潰す。俺はヒュプと手を組み、桜井はウェスタと手を組む。春日井達にはウェスタ達が見えないため、こうするしか手がなかったのだ。

 途中でヒュプがせこいことを考える。春日井達の手元を覗きに行ったのだ。偵察から帰ってきたヒュプは俺に告げ口をする。それを見て、ウェスタまでマネをする。そうなると、俺と桜井が非常に強い状況となる。春日井が驚きながら口にする。

「何でそんなに強いんだよ、お二人さん」
「まるで私達の手札を知ってるみたいね」と大杉。
「実は俺は透視ができるんだ」

 俺が胸を張って言葉する。そこに青木が口を出す。

「透視が出来るなんて凄いですね。そんなに強い相手には、僕もそれなりに本気を出さないといけませんね」

 おや? 俺は青木に目を向ける、瞳が赤色だ。いつの間にかシバルが入り込んだらしい。ヤバい、こいつがいると勝ち目ゼロだ。

 ヒュプとウェスタが青木の手元を覗きに行こうとする。しかし、青木はカードを伏せているため覗く事が出来ない。こいつは一瞬にして自分の手札を覚えたのだ、まさに神業である。

 シバル入り青木が乱入した事で俺達の生態系が見事に崩れる。青木は俺ばかりを狙ってくるのだ。いじめである。しかし、せこいことをしているのはこちらなので文句は言えない。何だかんだ言っても青木はズルをしていないのだ。正当な戦である。

 桜井が一位をキープし、青木が後に続く。青木は俺を狙うが桜井には手を出さない、女性には優しい紳士のつもりなのだろうか。春日井が三位につき、大杉が四番目だ。

 大杉に関しては青木ばかりに目を向け、ゲームに集中できていない。これは重症だ。先ほどのラケット卓球で、姫君扱いされたことによりハートを掴まれたのか。既にシバル入り青木のとりこである。

 しかし、そんな大杉にも勝てないのが俺だ。青木に集中攻撃されるため、手の出しようがない。俺はため息をついて謝罪する。

「俺はもうエスパーは止めた。正々堂々と戦うことにする」
「それなら安心です。僕も普通に勝負しましょう」

 青木がそう言った直後に目の色が変わる。シバルがゲームから離脱したのだ。シバルの抜けた青木は辺りを見回し言葉する。

「あれ? 僕は何をしていたんですか?」
「やった! ハルトンが元に戻ったぜ! これなら俺にも勝ち目があるかも」

 春日井がガッツポーズをする。隣では大杉がため息を付いている。大杉が好きなのはあくまでシバル入りの青木らしい。青木ファンと同様だ。大杉の気持ちを知ってか知らずか、シバルが口を開く。

「それにしても、あなたの手札は恐ろしいほどに悪いですね。まるで、あなたの運の悪さを表しているようです」

 俺はシバルを睨みつける。そう思うのなら俺を援護してくれよ。俺の心境など気にもせず、シバルがテレビの前に行く。深夜番組でも見るつもりだろうか。

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