俺達はとりあえず場を和ませるためにお茶会をすることにした、場所は和室である。ネコ耳帽子の子どもは牛乳を飲み、アホ毛の子どもはお菓子を食べ、俺はブラックのコーヒーを飲む。雰囲気が落ち付いたところで俺が二人に話しかけた。
「お前らは何で成仏しないんだ? この世に未練でもあるのか?」
「成仏って何?」
アホ毛が質問する。
「天国に行くこと」
ネコ耳帽子が答えを出す。
「そういうことだ」
「何でウェスタが成仏するの?」
アホ毛が言った。こいつの名前はウェスタと言うらしい、少々変わった名前である。しかし、そんなことはどうでもいい。今後はアホ毛をウェスタと呼ぶことにする。
「強盗に殺されて怖かったことはよくわかるが、こんなところにいるよりもさっさと成仏したほうが楽しいぞ」
「強盗に殺された? ボクらが?」とネコ耳帽子。
「ヒュプは強盗に殺されたの?」
ウェスタが驚くように言う。ネコ耳帽子の名前をヒュプと言うらしい、こちらも今後そう呼ぶことにする。
「ううん、初耳」
ヒュプが首を振りながら言う、それに対して俺が質問を投げかける。
「お前らは強盗に殺された幽霊なんじゃなかったのか?」
「違うよ。ウェスタは幽霊じゃないよ」とウェスタ。
「じゃあ、お前らは何なんだ?」
「神様」
ヒュプの言葉に俺の頭が停止する。自分のことを神であるという奴を見たのは初めてだ。
「悪い冗談は止めてくれ。大人をからかうもんじゃない」
俺はまだ高校生であるが、こいつらよりは年上だろう、大人と言っても間違いではない。すると、ウェスタが膨れながら反論する。
「本当だもん。ウェスタ達は神様だもん」
「じゃあ、証拠を見せてみろよ」
「証拠?」
「そうだ、証拠だ」
ウェスタは首を傾げて悩んでいる。この時点で神様であるはずがない。俺はコーヒーを一口飲んでヒュプに言う。
「神様って証拠を見せられないのなら、すぐにこの部屋から出て行ってもらうぞ」
俺の言葉を聞いてヒュプが間を置かずに答えた。
「わかった。証拠見せる」
そういうと、ヒュプが俺の前に来て俺の額に手を触れた。瞬時に恐ろしいほどの眠気が俺を襲う。俺は耐えきれずに床に突っ伏し意識が飛んだ。
子どもの笑い声で俺の意識は舞い戻った。俺は頭を押さえて起きあがり、周りを見る。今までのことが夢であるのならよかったのだが、和室で楽しげに遊んでいる子ども二人を見つけた時にはため息が出た。
俺は二人の様子を覗き込む、二人の子どもの手元にはシャープペンシルとボールペンだ。そして、それらの犠牲になっているのは俺の授業用のノートである。俺は大急ぎで二人からそれらを奪い取る。ノート一面には落書きの嵐だ。
使われていないページに落書きされるのならまだマシなのだが、俺が必死になって書き写したページに落書きされるとなると怒鳴りそうになる。しかも、ボールペンを使われては消しようがない、修整液の類で無理やり消すしか方法がないのだ。
俺は怒鳴り散らしそうな気持ちを押さえつけ、二人を睨みつける。純粋無垢な二人の子どもはキレそうになる俺に対し何かを期待するような目で見つめてくる。俺は理性を取り戻して二人に言った。
「これはな、俺が必死になって書き写した勉強の証なんだ。こんな落書きをしたら、提出の際に先生に怒られるんだが、どうしてくれる?」
「え〜、そうだったの? じゃあ、ウェスタが元に戻すの」
「元に戻せるものなら戻してみろ」
俺はウェスタにノートを手渡す。本当のことを言うと、目の前に投げ捨ててやりたいものなのだが、流石に大人げないので自重した。我ながら冷静な判断だ。ウェスタは落書きされたノートに楽しげに手をかざしていく。その行動に一体何の意味があるのか俺にはわからない。
「できたよ」
ウェスタが笑顔で俺にノートを返す。俺はノートを開いて愕然とした。落書きはすべて消えていてボールペンの後もない。どうやって消したのか、何かのマジックなのか。混乱する俺に向いてヒュプが後押しする。
「ボクらは神様」