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第67話:海〈その2〉
 数時間が経過し、ヒュプが声を上げた。

「海、まだ?」
「もうじき到着するよ。後十分くらいかね」

 姉貴が答える。俺が姉貴に目を向ける。

「そういえば、姉貴は海に何の用があるんだ?」
「知りたいかい?」

 姉貴が不敵な笑みを浮かべる、俺は首を横に振って質問を取り消す。姉貴のことだ、良からぬことを考えているに違いない。そんなことに巻き込まれるのは絶対にご免だ。突然にヒュプが車窓の外を指差した。

「海!」
「やっと見えてきたね。そろそろ降りる準備をしておきなよ」

 姉貴が車のスピードを上げる。少しずつ近づいてくる海が待ち遠しい。俺達は浮かれながら海を眺める。夏の海は太陽の光を反射させながら輝きを放つ、まるで芸術作品だ。海を見ながら俺は思う、今日は夏休み最高の思い出になりそうだ。

 俺達はホテルに荷物を置いてから海へと向かう。ホテルから海は近く、歩いて行ける距離である。海に到着すると、更衣室で着替えを済ませて、海辺に向かう。

 海辺では沢山の人々がたむろっている。泳ぐ者やビーチバレーをする者、日光浴をする者などいろいろだ。賑やかな海辺で春日井が口を開く。

「タックン、海だぜ! 海って言えば、ナンパだよな」
「勝手にしろ。俺は見物してるから」
「何でだよ。俺と一緒に可愛い女の子を探して、ナンパしようぜ!」
「俺は他に見るべき者が多すぎる」

 神様組の事である。あいつらから目を離すのは恐怖だ、放っておいたら何をやらかすのかわからない。子供から目を離せない親の心境がよくわかる。何を勘違いしたのか、大杉が口を出す。

「あら、見るべき者って、もしかして私達のことかしら?」

 大杉が決めポーズを取る。それを見て春日井が鼻の下を伸ばしている。俺は大杉を無視して、桜井に目を向ける。海なのでメガネを外してコンタクトにしているようだ、メガネを取った姿がこれまた可愛らしい。俺も春日井と同じく鼻の下を伸ばしている所に青木が口を出す。

「二人とも鼻の下が伸びてますよ」

 俺は顔を赤くして桜井から目を離す。春日井は青木の言葉を無視して大杉を見続けている、こいつには羞恥心がないようだ。おもむろに青木が俺に質問を投げかけてきた。

「そういえば、柊さんのお姉さん達はどこへ行ったんですか?」
「さぁ?」

 俺は首を傾げる。姉貴達がどこへ行ったのかはわからない。常人じゃあ計り知れない動きをするのが姉貴だ、弟の俺ですら理解不能である。俺が考えていると、突然にシバルが現れた。

「あなたのお姉さんならお友達と一緒に出かけましたよ。何やら大物を捕ってくるとか言っていましたが、釣りにでも行ったんでしょうか?」

 姉貴が釣り? 何やら得体のしれない行動である。これ以上の深追いは止めておいた方がよさそうだ。

 俺はウェスタとヒュプに目を向ける。二人は必死になりながら浮き輪を膨らませていた。こいつらの水着は桜井が用意してくれたのだ、桜井には頭が上がらない。何か起きる度に礼を言っている気がするが、たぶん気のせいではなかろう。
 ヒュプに限ってはネコ耳帽子を付けたままだ。どうしても外したがらないので無理しいは止めた、こいつのネコ耳帽子は身体の一部であるらしい。

 俺は唯一水着姿でないシバルに小声で問いかける。

「お前は泳がないのか?」
「僕はいいです、海の家でカキ氷でも食べてますよ。皆さんで楽しんでください」

 まぁ、これだけ長生きしていれば海も珍しくないのだろう。俺はシバルの言葉に頷く。しかしながら、シバルの恰好を見ていると非常に暑そうだ。いつもと同じ黒フードを被っている。せめてもう少し涼しげな恰好をしてほしい、じゃないとこっちまで暑くなる。

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