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第6話:神札の力
 帰宅すると、和室へ向かい、早速に木箱の蓋を開けてみる。木箱の中には布に包まれた風変りな神札が入っており、神々しい力を放っていた。これなら効果がありそうだ、俺は直感でそう思う。

 木箱から神札を拾い上げて、部屋を見回す。押し入れの右側に丁度よさげな場所を見つけ、その前に行き立ち止まる。さて、どのようにして貼り付ければよいのか? 借り部屋であるため、画鋲や糊の使用は控えたい。

 思考した末に、棚からセロハンテープを持ってきて神札を柱にくっつけた。こんなので良かったのだろうか。セロハンテープで固着された神札は神々しさを失い、えらく安いオーラを放っている。

 一通りやるべきことはやってみた。これで無理なら引っ越しだ。伸びをして身体をほぐすと、キッチンへ行き冷蔵庫を開ける。牛乳を手に取ると、中身が減っていることに気が付く。しかし、これも今日限りである。明日にはあいつらも成仏するであろう。

 軽くなる気分を楽しみながら夕食を取り、風呂に入る。その後もごく普通に過ごして、寝床に着く。足音もしなければ、声も聞こえない。既に神札の効果が現れているのだろうか。寝ころんでいるうちに俺はまどろみ、夢の中へと吸い込まれていった。

「これ何だろう?」
「お札」
「お札って何?」
「え〜っと、悪い奴をやっつける道具」
「へ〜、どうやって使うんだろう?」
「こうやって使う」
「これで使ってるの?」
「そう」
「へ〜、そうなんだ〜」

 瞬時に目が覚めた。またあの声である。俺が飛び起きた時には部屋には誰も居ず、声も聞こえなくなっていた。神札の効果がなかったのだろうか、それともまだ効果を発揮していないだけか。

 俺がため息を付いていると、どこからか小さな物音が聞こえてきた。音のする方へ目を向ける、そこはいつもの押入れだ。

 心を無にして押し入れの前に立ち、深呼吸をしながら襖に手を掛けた。一気に力を入れて、襖をスライドさせる。大きな音が部屋に響き渡り襖は開いた。少々、近所迷惑だったかもしれない。苦情がきたら謝罪しよう。

 外から見た感じでは誰かがいるようには思えない。押入れの中に顔を入れてみる。上段には何もいない、普段は布団を入れている場所である。下段を確認する、大したものは何もない、子どもが二人いるだけだ。

 俺の心拍数が最高まで上昇する。二人の子どもは目をパチクリさせてこちらを見ている。俺はあまりの驚きで叫ぶことはおろか声も出ない。

 一時停止した俺の前で、一人の子どもがもう一人に向かって人差し指を立てた。喋るなということであろう。しかし、見えている俺にとっては喋ろうが黙ろうが同じである。

 俺は押入れから顔を出して心拍数が下がるのを待ち、もう一度、押し入れの中に顔を入れてみた。やはりいる。白いネコ耳の帽子をかぶった子どもと、頭からでかいアホ毛が飛び出している子どもだ。
 
 二人は首を傾げて俺を見ている。自分達の存在に俺が気づいているということを理解できていないらしい。

 幻覚ではないかと疑い始め、アホ毛の子どもに手を伸ばし、アホ毛を掴んで引っ張ってみる。すると、アホ毛の子どもが声を出した。

「あにゃ〜!」

 声に驚き俺はアホ毛から手を離す。その間を狙って子ども二人が押入れから飛び出した。すぐさま俺も後を追う。まさか幽霊が見えるようになるとは予想外な展開にもほどがある。

 二人の子どもは和室の端に行き、小さく座って壁に向いている。二人はボソボソと相談しているようだ。アホ毛の子どもは頭を押さえている。まだ先ほどの痛みが残っているのであろう。俺は二人に近づき声を掛ける。

「お前ら何なんだ?」

 ネコ耳帽子の子どもがこちらに振り向き辺りを見回す。他に誰もいないことを悟ると言葉を返してきた。

「見える?」
「バッチリだ」

 俺はグッドポーズをしてみせる。幽霊に対してこんなことができる奴はそうそういない。自分でも満足だ。俺らの会話にアホ毛の子どもが振り返る。

「何で見えるの〜?」
「俺が聞きたい」

 三人の間に妙な空気が漂っていた。時間が刻々と過ぎていく。突然にネコ耳帽子の子どもが言った。

「牛乳ほしい」

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