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第49話:球技大会〈その1〉
 学校の行事、最大イベントの一つが球技大会である。俺の学校では、女子がバレーボール、男子がバスケットボールという組み合わせで行われ、クラス対抗で競い合う。
 優勝すれば食堂のお食事券一週間分がただで贈呈される。もちろん一人につき一週間分の券だ。金欠の俺には口から手が出るほどに欲しい物である。

 勝負の際に、女子の優勝クラスと男子の優勝クラスが異なる場合はジャンケンというシンプルなゲームで勝敗を決める。これがまた盛り上がるのだ。たかがジャンケンなのだが賞品が掛ると皆の目の色が変わり、周りの空気も熱くなる。

 明日はいよいよ球技大会だという雰囲気の中、運動音痴な生徒が憂鬱そうにしていた。それはそうだろう、自分が皆の足を引っ張ってしまうのではないかと不安なのだ。青木もその内の一人である。青木が滅入った顔で言葉を漏らす。

「僕、明日休んでもいいですか?」
「駄目だって、ハルトンが休むと人数が足らなくなるじゃん」

 春日井が青木に向く。ちなみにハルトンとは青木のことだ、青木あおき陽斗はるとなのでハルトンらしい。春日井のネーミングセンスは子ども並みである。青木が億劫そうに口を開く。

「無理ですよ。僕なんて皆の足を引っ張るだけですし、出ない方が良い勝負になるに決まってます。きっと僕が出たらボロボロですよ………」
「青木君、勝負前に弱音を吐いてちゃ駄目よ。強気で行かなくちゃ勝てる勝負も勝てないわよ」

 大杉が青木の気持ちを押す。しかし、これが却って青木の勢いを止めてしまう。崖っぷちの人間を突き飛ばそうとしたら誰だって地面にしがみ付きたくなるものだ。青木が心を決して口を開く。

「やっぱり僕は明日休みます」
「負けたっていいじゃないですか。皆で楽しく競技をするだけで良い思い出になりますよ」

 桜井が青木に優しい言葉を投げかける、そして俺が追加する。

「よし、負ける気で行こう。どうせ勝ったところで貰えるのは食事券と賞状くらいだ」

 言ってはみたが、やっぱり食券は欲しい。賞状などに興味はないが現実的に金に困ってる俺には食券が必要だ。しかし、今は青木のプレッシャーを下げてやるのがいいと思い、そう口にしてみた。青木が少々ためらいながら俺を見る。

「いいんですか? 僕が足を引っ張っても」
「あぁ、俺の両足を引っ張ってくれていいぞ、俺はそのまま春日井の両足を引っ張るから」
「タックン、酷いぜ〜」

 春日井が泣きわけきながら俺に抗議する。青木は少し安心したのか先ほどの言葉を訂正した。

「わかりました。足手まといになると思いますが、できる限り頑張ってみます」
「負けたらタダじゃ済まないからね」

 最後の最後に大杉が青木に多大なプレッシャーをぶっ掛ける。それを聞いて青木がうろたえ出す。俺はため息をつきながら心の中で思う、俺の努力を水の泡にするなよ大杉………。

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