第41話:遠足〈その9〉
その後は大体うまく事が進み、俺達は帰路につく。帰りのバスでは全員が熟睡だ。ウェスタも酔うことなく眠っているようだ。隣の春日井が爆睡しているので、俺は小声でシバルに話しかける。
「おい、大丈夫か?」
俺の声でシバルが荷物置き場から降りてくる、今は顔色もマシになっている。シバルがいつもの口調で話し出す。
「すいませんね、心配をかけさせてしまったようで。実は僕…犬がとても苦手でして、スカンさんは犬が大好きなので、どうも苦手だということを口にできず。愛犬のことを沢山自慢されるんですけど、それを聞いていると気分が悪くなってきてしまい。その上、写真なんて見せられたら、たまらないほど恐ろしくて……」
俺は大人しく話を聞いていた。これで納得できた。シバルがスカンに会った時にみせた妙な行動や落ち着きのなさはこのためか、食欲がなかったのは犬の話を永遠に聞き続けていたからであろう。すると、突然に犬の声が聞こえてきた。
「ワン、ワン!」
「うわぁー!」
シバルが大声を上げながら、バスの先頭へと吹っ飛んでいく。思わず俺は耳をふさぎ縮こまる。しばらくして、俺は立ち上がりバスの先頭に目を向ける。遠くに見えるのは顔だけ出してこちらの様子を窺うシバルと、上半身を乗り出してシバルの様子を窺う桜井だ。
俺と桜井の目が合う、向こうには何が起きたのかわからないらしい。
犬の声はどこから聞こえたのだろうか。俺が膝上を見ると犬のキーホルダーを持ったヒュプがいた。ヒュプがキーホルダーを俺に向けて言う。
「変な人がくれた」
変な人とはスカンのことだろう、想像がつく。俺はヒュプからキーホルダーを奪い取り、調べてみる、見事にスイッチ発見だ。先ほどの犬の声はどうもこいつが原因らしい。俺はヒュプが手を伸ばすのを無視して、キーホルダーをシバルに見せる。向こうも状況を理解し安心する。
しかし、桜井には何のことかわからないようだ、目を丸くして俺の方を見ている。せっかくだから後で教えてやろう、死神を追い払うには犬を飼えばいいということを。
こうして俺達の遠足は終幕を迎えた。この遠足ではいろいろと新たなる発見ができて俺的には満足だ。ウェスタやヒュプも大いに遊ぶことができて楽しかったであろう。シバルに関してはどうだろうか、本人に聞かないとわからない。
今度の日曜日に四人で遠足に行ってみようか、もちろん行き先は今日と異なる。
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