第40話:遠足〈その8〉
俺達は春日井達のいる場所へと足を向けた。俺達が遠足に来ていることを知ったスカンは天気を晴れにするようにアテンに言い、それを見てチャクがふくれっ面をしている。しかし反抗はしないようだ、どうやらスカンには逆らえないらしい。
俺達は春日井達と合流すると、昼食をとることにした。俺は背負っていたバックから弁当を取り出し、周りの視線をかいくぐりながら、ウェスタとヒュプに手渡す。飲み物は俺の水筒を勝手に飲むように言っておいた。これだけ人が多ければバレやしないだろう。
シバルにも弁当をわたそうと思ったが、スカンと話し込んでいるため後にすることにした。スカンの両脇にはアテンとチャクが控えている、二人は目を合わそうとしない、未だに冷戦が繰り広げられているらしい。春日井がスカンに指差し口を開く。
「なぁ、あれってさっきのおっさんだよな」
「あぁ、そうだな」と俺。
現在、スカンはオープンらしい。皆の視線がスカンに集まっているのに本人は何も気にせずにシバルとお喋りしている。せめて姿くらいは消しておけよと言いたいが今さらなので黙っておく。青木がスカンに目を向ける。
「神父さんですか? 誰と話してるんでしょう?」
「神様とでも話しているんだろう」
「すげー! 神父さんって神様が見えるのか!」と春日井。
確かに神様は見えている、死神だけどな。その上、本人も神様だけどな。俺は口が出そうになるのを抑えながら、弁当を食べる。今日はいつもよりさらに豪華な弁当だ、遠足用にシバルが作ってくれたのだろう、大いに感謝する。
大杉はスカンには興味がないようで、俺の弁当に目を向ける。
「柊君、それ自分で作ったの?」
「え〜、まぁ………」
何とも答えづらい質問だ。はいと言えば俺が料理人になるし、いいえと言えば俺に彼女がいると誤解される。これじゃあ答えようがない。青木が続いて俺に言う。
「凄く豪華ですね。柊さんって料理得意なんですね」
『俺が料理人説』が通ってしまった。今度から俺は料理ができないといけない。帰ったらシバルに料理を習おうか。俺が思考していると春日井が口を開く。
「タックン、ひもじい俺におかずを一つわけてほしいな」
「一つだけな」
心やさしい俺は野菜を一つ春日井の弁当に放り込んだ。春日井がすね口で言う。
「から揚げが欲しかったのに」
俺は仕方なく、から揚げを春日井の弁当に放りこんでやった。それを見て大杉が俺の弁当からおかずを盗む。俺は弁当をかくまい大杉に言う。
「おい、何をするんだ。俺のエネルギーを奪い取るな!」
「春日井君だけ貰えるなんて許せないわ」
「せめて俺から許可をもらえよ、許可を」
俺が大杉と言い合いをしていると、死角から盗人が現れた、ヒュプである。卵焼きを盗んで逃亡した。俺は叱るタイミングを逃し、してやられる。
俺が悔しがっているとウェスタが俺の服を引っ張り、俺を見つめる、お強請り光線だ。仕方なしに、俺は皆にばれないようにウェスタにおかずを一つやる。
今度からはおいしい弁当を作るなとシバルに言っておこうか、そうすれば盗まれることもないだろう。
俺達が弁当を食べ終わりお喋りを始めたくらいにシバルがスカンから解放された。シバルが俺の隣に来て口を開く。
「ただいまです………」
顔色が悪い。大丈夫かと聞いてやりたいが、そうすることもできないため、代わりに俺は弁当を取り出す。しかし、シバルは首を振って弁当を拒否る。
「ありがとうございます。でも、今はいいです」
元気がない、スカンとの会話で疲れたのだろうか。俺がシバルを心配している所にスカンが駆け込んできた。
「そうそう、先ほどの話で是非とも見ていただきたい物がありまして。これです、これ。我が愛犬ピエールちゃんの写真です!」
スカンが財布を取り出しシバルに写真を見せつける。先ほど言っていたお守りとはこの写真のことだったのか。スカンの行動に対し、もちろん春日井達は仰天だ。怪しい神父が自分達の元へと駆けこんでくるのだから、ビビったって不思議じゃない。
写真を見せつけられたシバルの顔色は真っ青だ、微妙ながら身体が震えている。そんなに恐ろしい犬なのかと思い俺も写真に目を向けるが、なんら普通の可愛らしいホットドックではなくてダックスフントだ。それを見て大杉が口を開く。
「へ〜、可愛いわね、この犬」
「そうでしょう! このピエールちゃんは本当にいい子でして、私の言うことをよく聞き、お風呂も嫌がらず、夜は一緒にベッドで眠り、いつもいつも可愛い瞳で私のことを見つめてくるのです。本当に可愛らしい、どこをとっても完璧です」
異常なまでのペット好きだ、自分の子どもですら普通はそんなに可愛がらないぞ。俺は呆気にとられながら写真を見る。
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