第39話:遠足〈その7〉
二人の喧嘩は止まることを知らないようだ、何をしても効果がない。俺とシバルは疲れ果て、ウェスタとヒュプは異常気象に喜びながら傘を振り回し、例の二人が暴言を吐きあう中で刻々と時間が過ぎていった。おもむろに俺が口を開く。
「もう帰らないか?」
「僕も同じことを考えてました」
シバルが賛同する。例の二人は俺らのことなど蚊帳の外であるようだ、睨み合いが続いている。俺達が諦め寸前になっていると、突然に怒りの声が飛んできた。
「二人とも喧嘩はお止めなさい!」
チャクとアテンの口論が止まる。俺が声の主を振り返ると、そこには先ほどの神父がいた。神父が二人の頭に拳を入れる、神父なのにえらく攻撃型だ。神父は言葉で注意するのではないのか、世間とは広いものである。
二人の喧嘩が収まり、空では雲がはびこる中で神父が俺に口を開いた。
「これはこれは先ほどの親切な方ではありませんか。もしやこの二人がお見えになるのですか?」
「はい、いろいろとありまして、そういうのが見えるようになりました」
俺は素直に返事する、神父は驚きながら言う。
「おや、それは驚きですね。人間で神が見える者はそうそういませんから、何やら運命を感じますね」
「でも、あなたも見えてますよね?」
「あぁ、それはもちろん。私は空の守護神をしております、名をスカンと申します」
「え? あなたも神様なんですか? でも、さっき俺の友達があなたのこと見えてましたけど……」
「あぁ、それは私が大人だからですよ。大人になると、人に見えるよう姿を現せることができるのです。まぁ、子どもでもその能力を持ち得る方もいらっしゃいますがね、並大抵の努力じゃあ取得できないのですよ」
「へ〜、そうなんですか」
それは初耳だ。俺が新たな真実を知りちょっと満足していると、ウェスタが俺に話しかけてきた。
「タックン、シバ君が行っちゃうよ」
「え?」
俺は後ろを振り返る、目に留まるのはシバルの後ろ姿だ。シバルが肩をビクつかせる。シバルの背中にスカンが声を投げかける。
「もしや、もしや………シバル先生ですか?」
シバルが青い顔をこちらに向ける、死神なのに死にそうだ。一体どうしたのだろうか? スカンがシバルの方に駆けて行き、喜びいっぱいの笑顔をシバルに向ける。
「本当にシバル先生ではないですか! お久しぶりです! またもやこの場所で出会えるなんて、もしやわざわざ私に会いにきて下さったのですか?」
「お、お久しぶりです、スカンさん。あの………できれば、その……先生って言うのを止めていただけないでしょうか? 僕などに先生なんて言葉は過大評価しすぎだと思うので……」
「そんなに謙虚にならないで下さいよ。シバル先生を先生と言わず、一体誰を先生と言うのか! 私の偉大なる先輩じゃないですか!」
シバルとスカンが話をしている様子を見て、ヒュプが俺に口を開く。
「あれ誰?」
「シバルのファンらしい」
俺に言えることはここまでだ、それ以上は本人に聞いてくれ。喧嘩をしていた二人は未だに睨み合っているが、口論は終わったらしい、今はにらめっこ対決だ。俺は折り畳み傘を仕舞い込み、ウェスタとヒュプに言葉する。
「とりあえず、戻ろうか」
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