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第38話:遠足〈その6〉
 俺達は屋根のある場所へと駆けこむ。そこへウェスタとヒュプも駆け込んできた、手にはボールを持っている。どのようにして手に入れたのか、後でシバルを尋問しなければいけない。原っぱで遊んでいた人々が次々に屋根下へと入り込んでいく、それを見ながら大杉が言う。

「いきなり大雨なんてついてないわね」
「せっかくの遠足が台無しだぜ、つまんねーの」と春日井。
「どうしましょう? これってバスに戻った方がいいんでしょうか?」青木が言葉する。
「そうね、こんな所にいても仕方ないし」

 大杉がため息交じりに口を開く。すると今度は雲がなくなり晴々とした晴天が広がる。俺達が呆然とする中に困り顔のシバルが転がり込んできた。

「少々厄介な事が起こりました。というのもですね、晴れの神様と雨の神様が喧嘩しているんですよ。ちょっと助けてくれませんか?」

 俺は嫌な顔をする、先ほどの二人の子どもが関係ありそうだ。絶対に係わりたくない俺に対して、シバルが口を出す。

「こんな中途半端な天気じゃあ、皆が困るでしょ? ほら、人助けだと思って」

 先ほどの人助けと今回の人助けとでは訳が違う。今回は財布の落し物ではなく、天候という大きな範囲の話だ、そんなものに俺を巻き込まないでほしい。嫌がる俺にシバルが言葉する。

「ほら、行きますよ!」

 シバルに促され俺は足を進めた。

 春日井達には「青春の一人散歩をしてくる」とわけのわからない言い訳を残してきた。春日井は「俺も付き合うぜ!」と言っていたがもちろん断る。
 俺が神様達に囲まれて会話をする姿は、傍目から見て、相当ヤバく見えるだろう。何せ神様は人目には見えないのだ、独り言にもほどがある。

 ウェスタ達は置いていくことにした、急な雨で風邪を引かれたら困るからだ。シバルが二人を説得し、俺達は例の二人に会いに行く。

 俺達が向かった先で、例の二人が睨み合っていた。凶悪オーラを放っているこの二人はなんなのか、俺はシバルに目を向ける。シバルの解説が開始される。

「青い服を着た男の子が雨の守護神で名前をチャクと言います、赤い服を着た女の子が晴れの守護神で名前をアテンと言います。この二人は凄く仲が悪いことで有名なんです。僕が前に来た時はもう一人いたので実質的な喧嘩はなかったのですが、それでもいがみ合ってましたね」
「そのもう一人って誰だよ?」
「あぁ、二人のお師匠様みたいな人です、今はいませんね。出かけているのでしょうか?」
「じゃあ、この二人の喧嘩を止める方法は他にないのか?」
「それを考えてほしいのです。僕もいろいろと考えたのですがどうにも方法が思いつかなくて」

 俺達が話をしていると、チャクが怒鳴りながらアテンに指さす。

「せっかく雨にしたのに、何て事するんだよ!」
「皆が原っぱで遊んでいるのに雨にするなんて酷いわ!」
「ずっと晴れじゃあ、緑が可哀そうじゃないか!」
「じゃあ、夜中に雨を降らせばいいじゃない! 何で今なのよ!」
「うるさいな、今は雨の時期なんだからいいだろ!」
「意味わかんない! 自分勝手のわからずや!」
「お前こそ、頭悪いだろ!」
「あんたに言われたくないわよ!」
「何だと!」

 まるで子どもの喧嘩だ、神様だとは到底思えない。俺は二人の喧嘩に割り込んでいく。

「おい、お前ら、喧嘩はよくないぞ」
「誰よ、あんた?」

 アテンが俺を睨む、思わず謝罪して引きたくなるがそうするわけにもいかない。俺が二人に答える。

「俺は正義のヒーロー、タックンだ。お前らを仲直りさせるためにやってきた」
「馬鹿に用はないよ。邪魔だからあっちに行ってくれないか」

 チャクが俺の存在を投げ捨てる。そこでシバルが言葉する。

「お二人共、喧嘩をしていても拉致があきませんよ。この際、多数決とかどうでしょう?」
「それいいね、やってやるよ」
「いいわよ、もちろん結果は見えてるけど」

 二人が顔を鬼にしてシバルの意見を呑み込む。この四人で多数決をすれば、確かに結果は見えている。俺とシバルは遠足に来ているので晴れの方がいいに決まってる。ならばアテンを含み三対一でアテンの勝利になるだろう。状況を理解した上で、シバルが声を出す。

「晴れがいい人、手を挙げて下さい」

 予想通り、俺とシバルとアテンが手をあげる。続けてシバルが言葉する。

「雨がいい人、手を挙げてください」
「はーい!」

 俺は驚きながら下を見る、ウェスタとヒュプが笑顔で手を挙げている。突然の乱入者により、結果が予想と外れる。三対三で同点だ、一番厄介なパターンである。チャクがアテンに悪言を吐く。

「僕の一票はお前と違って価値が二倍になるから、僕の勝ちだね」
「何よそれ! じゃあ、私は三倍よ! だから私の勝ちよ!」
「じゃあ、僕は五倍だ!」
「私は十倍!」

 すでに喧嘩の趣旨が異なっている。こいつらは単に相手が気に入らないから喧嘩をしているようだ。空を見上げると今度は曇り空になっている、微妙な天気だ。俺は途中乱入者のウェスタとヒュプに目を向ける。

「お前ら何で来たんだ? お留守番じゃなかったのか?」
「お留守番はつまらないの」
「暇」

 二人の言葉でため息が出る。シバルが腕を組みながら口を開く。

「困りましたね。どうしましょう?」
「どうしようか?」

 俺達が頭を抱える中、チャクが手を上げて言う。

「雨だよ、雨!」

 すると、またもや大雨が降りだした。すぐにアテンが両手を上げる。

「晴れよ、晴れのほうがいいの!」

 すると、大雨が止んだ。そして、またチャクが雨を降らし、アテンが雨を止ます。雨が降ったり止んだりする中でシバルが何かを取り出した、パッと広げて俺とちび共に手渡していく。

「折り畳み傘です、これって結構便利ですよね。雨なら水を防いでくれますし、晴れなら直射日光を防いでくれますし、臨機応変に使えますから、いろいろな意味で持っていると役に立ちます」

 成る程、俺は思わず納得して、シバルに礼を言い傘を受け取る。

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