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番外編〈その52〉
 とある日のことだ。アパートに、タテとケルノが遊びに来る。ケルノはちび共とスゴロクをし、タテはシバルと駄弁っている。シバルは大人バージョンだ。俺は子ども組の様子を窺いながら、シバル達の話に耳を傾ける。不意にタテが言葉する。

「そういえば、未来様のお姉……じゃなくて、江川先生から貰った神力制御装置……。レベル十にしたらどうなるのか、シバル様は知ってる?」
「え? 神力制御装置? どのような物のことですか?」

 タテがブレスレットを取り出して、シバルに手渡す。シバルがそれをマジマジと見ながら、感嘆だ。

「へ~、これは驚きました。えらく軽いですね。最新型ですか?」
「ううん、未来様達のお父さんが作ったんだって。江川先生が言っていたよ」
「あの人はこんな物を作って……。一体何をたくらんでいるのでしょうか?」

 眉をしかめるシバル。不審そうにブレスレットに目を向ける。タテが笑顔で口を開く。

「だけど、重宝しているよ。これのおかげでネプトさんの死亡率が格段に下がったらしいから」

 あいつはそんなにも毎日タテに殺されかけていたのか……。想像すると哀れだ。俺がタテに口を開く。

「レベル九でお前が倒れたんだから、レベル十にしたら死ぬんじゃないのか?」
「まさかそんな危険な物を江川先生が人にあげるとは思えません。多分、気絶するくらいじゃないでしょうか?」
「へ~」

 シバルが言って、タテが感心している。シバルからブレスレットを受け取り、タテが恐ろしい発言をする。

「じゃあ、試してみようか。後はよろしくね」
「え?」

 言葉をなくす俺とシバル。止める間もなく、タテがブレスレットを腕に付けて、レベル十にする。むろん、ぶっ倒れる。お前はバカか!? 
 騒ぐ俺達に、子ども組まで目を向ける。シバルがタテに駆けより、ブレスレットのレベルを下げる。そして、タテに声を掛ける。

「タテさん! しっかりして下さい! タテさん!」
「まさか死んだなんて落ちは止めてくれよ……」
「大丈夫です。息はしています。それにしても、何を考えているのでしょう? こんな無茶な事をして……」

 興味本位だろう。若い頃は無茶をするもんだ……。何て俺は語れる立場ではない。ケルノが俺達の所に来て、騒ぎ立てる。

「タテ兄!? どうしたの!?」
「このバカは神力制御装置のレベルを自ら十にして、勝手にぶっ倒れたんだ」
「…………」

 ケルノの心配顔が一瞬にして、呆れ顔に変わる。何も見なかった振りをして、子ども組の元へと帰っていく。不意にタテが動き、上半身を起こす。ボーっとした目で辺りを見回す。

「あれ~? ここはどこ?」
「大丈夫ですか? タテさん?」
「シバル様? どうしたの? 顔色悪いよ」
「お前の事が心配なんだよ!」

 俺がタテの頭を叩く。タテが頭を押さえながら、俺に向く。

「何が、どうして、どうなったの? あ、そうだ。今日はケーキの半額日だよ。買いに行かなくちゃ」

 お前、頭は大丈夫か? 俺が殴って変になったのか? それとも、神力制御装置のおかげか? シバルと共に、不安顔だ。タテがブレスレットを取り外しながら、口を開く。

「それにしてもビックリだよね。いくらなんでも本当に気を失うとは思わなかったよ。これ気を付けないと、寝ている最中にレベル十になったら危険だね。まぁ、ストッパーはあるけど……」
「ビックリしたのはこっちだ。神力制御装置のおかげで、お前がバカになったのかと思ったぞ」
「え? どうして?」

 駄目だ、こいつ。天然だー。タテに説明するのを諦め、ため息をつく。不意にタテがシバルにブレスレットを手渡す。

「シバル様も試してみる? ビックリだよ」
「いえ、結構ですよ……」

 そう言いながら、ブレスレットを受け取るシバル。しばしの沈黙。そして、シバルがバカな発言だ。

「いや、もしかしたら、耐えられるかも……。あれだけ猛特訓した僕なんだから、これくらい……」

 独り言を言いながら、ブレスレットを腕に付ける。止めろー! バカ二号機が、ブレスレットのレベルを十にする。そして、バカ二号機が蒼白しながら口を開く。

「大したこと……ありません……ね」
「凄いよ! シバル様!」
「超顔色悪いけどな……」

 突然に、シバルの姿が子どもに戻る。そのまま地面にへたり込む。耐えきれなかったらしい。泣きそうな顔になりながら、ゆっくりとブレスレットに手を伸ばす。カチャカチャとブレスレットをいじくり回し、最後に俺を見上げだす。

「助けて下さい……。身体に力が入りません。メーターが回せません。辛いです、しんどいです、気持ち悪いです……」
「お前が悪い。少しは反省しろ」

 俺の言葉でシバルが震えだす。泣きそうな顔をしながら、震えるシバル。見ていられなくなったのか、タテがブレスレットのレベルを落とす。シバルが安堵した顔だ。タテに神力制御装置を返し、口を開く。

「死ぬかと思いました。これは効きますね……」
「そんなに辛いのか?」
「柊君も試してみる?」

 タテがブレスレットを俺に手渡す。やってやろうじゃないか。俺はブレスレットを腕にはめて、レベルを一気に最上級だ。まったくもって、苦しさ一つ感じない。平然とする俺を見て、タテとシバルが口を開く。

「凄いね。柊君……」
「流石です。まったく顔色一つ変わっていませんね」
「だろ?」

 胸を張って言ってやる。所詮、お前人間だろ? そう言われたら言い返せないが……。

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