第36話:遠足〈その4〉
公園の中はかなり広いようで、場所によっていろいろとメインが異なるらしい。俺はお友達三人組と神様三人組、俺を含めて計七人で行動することになった。
と言っても、神様組にはあまり構ってやることはできない。こちらはなるべくシバルに任せることにして、俺はお友達三人組と話をしながら公園内を歩いていた。青木がおもむろに話し出す。
「空気がいいですね、何だか眠くなりそうです」
「ここにベッドでもあったらなぁ〜」と春日井。
「春日井君がこんな所で寝ていたら、いびきがうるさくて他の人に迷惑よ」
大杉が春日井に言う、それに対して春日井が俺に問う。
「俺はいびきなんてかかないよな、タックン」
「お隣の騒音で俺の耳はパンク寸前です」
「嘘だぁ〜、それは大袈裟だぜ」
実のところ大袈裟ではない、春日井のいびきは非常にうるさかった。周りから苦情が出ていたのだが、何をしても春日井が起きる気配はなく、カラオケ並の騒音を立たせて爆睡していたのだ、バス内でのことである。
俺達はアスレチック広場に到着した。こんな年になってこんな所で遊ぶ気にもなれない俺に対し、春日井がアスレチックへと特攻していく、大杉も続いて走り込む。もちろん、ウェスタとヒュプも後に続く。俺が唖然とする中で、青木が口にする。
「二人とも元気ですね」
「お前は行かないのか?」
「僕はこういうの小さい頃から苦手なんです」
まぁ、わからなくもない。青木は運動音痴なのだ。体育の授業でいつも失態を犯して皆の足を引っ張っている。それでも皆が青木に対して怒りを表さないのは、青木が必死に頑張っているからだ。努力しても手に負えないほどに青木は運動が苦手だということだ。青木が俺に向いて言う。
「柊さんは遊ばないんですか?」
「腰痛がひどくてな」
「あなたの年で腰痛がひどいのなら、老後は全身痛になりますね」
シバルが乱入してくる、もちろん俺は無視をする。青木が心配そうに俺を見る。
「大丈夫ですか? 病院には通ってますか?」
「冗談だ、冗談。俺はこういう遊びに興味がないだけだ」
「なんだ、そうだったのですか」
青木がホッとしたような顔で胸を撫で下ろす。俺は青木に言葉する。
「ちょっとトイレに行ってくる。お前らはしばらくここにいるか?」
「はい、まだあの二人が遊んでますから、ここで待ってますよ」
「僕らもここで遊んでます」
シバルも口にする。俺は手を上げて歩き出す。
「おう、よろしく頼んだ」
俺がトイレを済まし、皆の所へ戻る道を歩いていると、ベンチの周りに怪しい人物を発見した。まるで神父のような風貌だが、そわそわしており何かを探しているようである。俺は神父に近づいて口を開く。
「どうかしましたか?」
「いえ、財布を落としましてね。その中に大切なお守りが入っているのですよ。それを諦めるのは心痛いので、どうしても見つけたくて一時間ほど探しているのですが、どこを探しても落ちていなくて。たぶんこの辺りだと思われるのですが………」
「あぁ、じゃあ、俺も探すのを手伝いますよ」
「ご親切にありがとうございます!」
そういうわけで、俺と神父は二人で落とし物を探し始めた。しばらくして、俺がベンチの横にある茂みから黒い財布を拾い上げた。俺はそれを神父に見せる。
「もしかして、これですか?」
「そうそう、それです! ありがとうございます! このご恩は決して忘れません、こんな寂れた世界でもあなたのような心やさしい人がいるのならきっと立ち直ることでしょう。本当にどうもありがとうございます!」
神父は財布を受け取ると丁寧にお辞儀をして去って行った。ここまで礼を言われたら俺の気も悪くない。人助けって素晴らしいなと感慨しているところに春日井が駆けてくる。
「誰だよ、今のおっさん」
「落とし物をして探していたんだ。それを俺も手伝っていたというわけだ」
「で、お礼は何を貰えたの?」
現金主義の大杉が口を出す、俺は胸を張って言葉する。
「心やさしい言葉を貰った」
「言葉じゃ物は買えないわよ〜。せめて所持金の一割くらいは貰わないと」
大杉が手の平を上に向けて吐き捨てるように言う、それにより俺の感動が薄れる。丁度そこへ青木と神様組が駆けてきた。青木が息を切らしながら呼吸する。
「ちょ…ちょっと……待って下さいよ………二人とも速すぎ……ですよ」
「青木君、運動不足よ。もっと動かなきゃ。そうだ、この先の花の丘広場まで駆けっこしましょうよ」
皆の意見も聞かずに大杉が走りだした、同調するように春日井も後へ続く。ヒュプやウェスタも走りだし、残された俺達は立ちすくんでいた。シバルが口を開く。
「あんなに遊んだ後なのにまだまだ元気ですね。どれほど体力があるのか気になりますよね」
「凄いです、あの二人」と青木。
「そのエネルギーを分けてほしい」
俺の言葉に青木とシバルが同時に頷く、俺達は駆けて行った大杉達に目を向けるが、既に見えないほど遠くに行ってしまったようだ。
俺は心地よい空気の中で大人と子どもの差を理解した。走って行った奴らが子ども派で、ここにいる俺らは大人派なのだろう、本当はそうでなくともそんな気がする。俺達の背中を爽やかな風が後押しした。
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