第33話:遠足〈その1〉
六月中旬のとある日のことだ。今日の天気は雲のない晴天で気持ちの良い風が吹いている。それは要するに今日の行事がためらうことなく行われるということを表している。行事の名、その名も遠足だ。
俺が目覚めてキッチンへ向かうと、テンションの高いシバルに出くわす。朝から張り切っているようで、俺に気が付くと大きな声で話しかけてきた。
「おはようございます! 今日は楽しい遠足ですよ。天気もよくて遠足日和な一日になるそうです、よかったですよね〜。雨になったら中止ですもんね、せっかくの行事が中止になるなんてそんな悲しいことは絶対に嫌ですものね。やっぱり遠足は晴々としたよい天気の時に限ります。でも少しは雲もほしいですけどね、あまり天気が良すぎると熱射病になりますし……」
一人喋り続けるシバルを無視して俺は机の上を見る。机の上には朝食とは別に手作り弁当が並んでいる、弁当の数は四つ。俺はシバルに目を向ける。
「おい、これってまさか………お前らも来るつもりか?」
「もちろん! せっかくの遠足ですし、皆で出かけたほうが楽しいに決まってますよ。無論、戸締りはしていかないといけませんけどね。貴重品はなるべく持って出たほうがいいでしょう。最近は危ない人達が多いと聞きますので、大切な物を盗まれたらとても困りますし……」
「俺は学校の行事で出かけるんだ。お前らがいたら話がややこしくなるだろう」
「大丈夫ですよ、僕らは他の人には見えませんし」
「お前らが前に学校に来た時に俺は変人扱いされたんだぞ、その時のことを覚えてないのか?」
「今でも変人ですから問題ありませんよ」
「お前なぁ〜」
俺がシバルの胸ぐらを掴んでいると、ウェスタ達が目を覚ましてキッチンへと入ってきた。ウェスタが虚ろな目をしながら口を開く。
「おはようなの」
「………」
ヒュプは今にも眠ってしまいそうだ。朝の挨拶も出来ないらしい、目を瞑りながら襖にもたれている。俺が二人に向いて口を開く。
「おはよう、今日は早いな」
こういう時に限ってこいつらは早起きだ、いつもとは違う空気を読みとっているのだろうか。シバルが微笑みながらウェスタを見る。
「おはようございます。今日は楽しい遠足ですよ」
俺はシバルを睨みつけるが既に遅く、ウェスタが質問を投げかける。
「遠足って?」
「遠くにお出かけすること」
完璧にヒュプの目が覚めた。何やら楽しい気配を感じたようで、パッチリ目を開けて俺に言う。
「遠足行く?」
「あぁ、でも学校の行事だから、お前らは家でお留守番だ」
「遠足! ウェスタも遠足なの!」
「遠足行く!」
ウェスタとヒュプが飛び跳ねながら、遠足についてくること前提で喜んでいる。お前らは俺の話を聞いていたのか、そんなことを問うても無駄であろう。既に行く気満タンだ。俺は神様のお留守番を諦めて朝食に手を付ける、隣ではシバルが笑顔で俺に尋ねる。
「ところでどこに行くんですか?」
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