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第274話:スキー〈今井編〉
 リフトに乗って、山の峰へと向かう。そこから、順序よく滑り降りて、またリフトへと飛び乗る。雪質が良いためか、滑り心地は最高。だけど、気分は晴々しない。浮かない気分。

 どうして振られちゃったのかな? 理由がわからないから、余計に気分が滅入る。しかも、よりによって神上君。他の人に振られても、多分そんなに落ち込まない。どうしてあの神上君が……。私の見ていた神上君は、本当の神上君じゃなかった。そういうことなの?

 リフトに乗って、山の峰。空を見ると、雲行きが怪しい。それにしても、さっきから気になることがある。自分の背中に手を触れる。何もない。だけど、どうしてか背中が気になる。

 何だろう? 何かがいる気配。別に私には霊感とかはないけれど……。首を傾げていたら、不意に何かが落ちる音。急に身体が軽くなる。あれ? 憑き物が落ちたのかな? 後ろを向いてみる。

 奇妙なへこみを発見。誰かが座った後みたい。じっと眺めていたら、雪の上に足跡がつく。何もいないのに、足跡が……。サクサクと雪の上を歩いて、遠くの方へ歩いていく。雪の妖精? それとも噂の雪男?

 何だか気になる。こういうのにはついて行かない方がいいって言うけど……。私は後を付けてみる。近づくと、遠ざかる足跡。何かがいるのは確か。見えない何かが私の前を歩いている。

 よく見ると、子どもの足跡みたい。たまに足跡と違って、倒れたような跡も見かける。雪の上で転んでいるのかな? 私が近づき、足跡が遠ざかる。それをずっと繰り返す。

 ここはどこ? コースから外れている気がするけど……。まぁ、いいや。気になることは解決しておかないと、後であの時……って後悔するのは嫌だから。不思議な足跡は途絶えることなく前を歩く。

 このまま童話の世界にでも行けそうな。そんな神秘的な気配。夢のようにぼんやりした感覚で、足を進める。一体、どこに行く気なのかな?



 雪の妖精を追いかけながら、懐かしい過去を思い出す。最後に神上君に会ったのはいつだろう。確か、十一月の初め頃。その後、電話やメールでしか連絡出来なくなって。年末頃から、連絡すらつかなくなった。

 直接に合わなくなって二カ月、連絡が取れなくなって二週間くらい。どう考えても、見込みなし。諦めるべきだろうな。わかってはいるけど、自分の中で納得がいかない。

 あ~あ、せめて振られるのなら直接に言って欲しかったな。こういう遠回しの振られ方は嫌だよ。だって、期待してしまうもの。もしかしたら、もしかたらって……。期待を持って、次の恋愛は難しいよね。

 不意に空を見上げると、黒い雲が掛っている。何だか荒れそうだな……。引き返した方がいいかも。すぐに雪がちらつき始める。私は不思議な妖精に向いて口を開く。

「じゃあね。私は帰らないといけないから」

 帰ろう。ここにいて不思議な世界に行けるのなら、それもいいかなと思っていたけど。私にはまだ友達がいるし一人じゃないから。神上君がいなくなっても大丈夫。大丈夫だよ。まだ耐えられる。

 自分に言い聞かせて、振り返る。足を進めていたら、不意に何かに引っ張られる。え? と思った直後、私は頭から斜面を転がり落ちていた。意識がスッと消えていく。このまま死んでしまうのなら、それはそれでいいと思う……。

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